BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――ただただ静かな春の朝

 

 

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 1R展示後にピットに入ると、それはもう、静かなものだった。水面にはひとり走る富山弘幸。装着場に選手は見当たらず、整備室も閑散としている。ペラ室、ペラ調整所も選手の姿はまばらで、なんとものどかな春の朝となっていた。

 

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 準優進出組も、全体的にゆったりとした動き出しのようで、姿をすぐに見かけたのは整備室のペラ調整所にいる小畑実成のみ。今節、ここで小畑の姿を本当によく発見する。徹底的な調整で、パワーアップをはかっているのだ。

 

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 ペラ調整室のほうを覗くと、三角哲男、長岡茂一、江口晃生の3人のみ。偶然だが、準優進出戦に登場する関東勢、である。それぞれがやや間隔を空けてすわっており、特に会話を交わしている様子はなかった。静かにひとり、調整を進める。

 

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 といったところでもういちど装着場を眺めれば、小畑がペラを手に自艇に向かい、いつの間にかあらわれた熊谷直樹と言葉を交わしていた。熊谷も小畑も柔和な顔つきで、ときにアハハという笑い声もあがっていた。熊谷は掃除機で操縦席内の水分を軽く吸い取って、控室へと戻っていった。朝特訓の折りに水をもらったのだろうか。今日のびわこは快晴だから、日向にボートを出しておけば乾くのも早そうだ。

 といったあたりが1R発売中の動きのすべてと言ってもいい。一般戦組の選手が係留所から上がってくるシーンも見かけられたが、基本的には静かな時間がピットには流れていたのであった。

 

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 動きが少しだけ活発になったのは1R終了後。エンジン吊りを終えて、いきなりボートをリフトに押し入れたのは西島義則だ。予選トップの西島が、ずいぶん早く着水である。とにかく仕事が早いのが西島義則。前検から本体を割っていることもあるし、初日の朝も忙しく動いているし、そんなこんなで初日までにある程度仕上げてしまうのである。勝ち上がり戦を前にして、今日も素早い動きを見せる。やはり進出戦に登場する新良一規と2周だけ足合わせをして、一緒にボートを陸にあげていた。

 

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 装着場に柳田英明があらわれた。柳田は整備室でもペラ調整所でも自艇のもとでもなく、洗濯機のもとへとつかつか歩いていた。フタを開けて、脱水が済んだアカクミ(スポンジ)を取り出す。そして艇番のプレートと艇旗をいくつか手にして、アカクミとともにボートリフトのほうへと持って行った。リフト付近の柱の影に、丁寧に並べる。それを見た菊池峰晴が駆けつけて、それを手伝うという場面もあった。2Rのカードを見ると、東京支部が2人、埼玉支部が2人と関東勢が4名も乗っている。素早く艇番の差し替えをするべく準備をしたということだろう。柳田は登番が下から5番目、これもまたなすべき仕事には違いない。ただ、表情には余裕がうかがえたし、急ぐ作業はなさそうなのであった。

 といった具合に、2R発売中になっても、まだ静かさが残るピットである。これからじわじわと動きが盛んになっていくのだろう。百戦錬磨の匠たちは時間の使い方も熟知している。これもまたマスターズらしさかと思えば、これはこれで感動的な朝なのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)