BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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鳴門オーシャン優勝戦 私的回顧

Wエースの薫陶

 

12R優勝戦

①丸岡正典(大阪)11

②新田雄史(三重)05

③石野貴之(大阪)03

④池田浩二(愛知)12

⑤毒島 誠(群馬)13

⑥岡崎恭裕(福岡)11

 

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 おめでとう、石野。つか、石野73号機!! ほんの1週間の付き合いだったけど、なんだか父親のように嬉しいな(石野美好さん、すいませんっ><)。

「初日のアレで、優勝できるとはまったく思ってなかった」

 レース後、爽やかな笑顔でMr.オーシャンはこう言った。初日、いきなりのゴンロク。レースっぷりも冴えないもので、道中の追い上げがまったく利かなかった。おそらく、前節のラストランでの転覆が出足系統に悪しき影響を与えたのだろう。

 鳴門に入る前から「73号機73号機」と呪文のように唱えていた私も、正直、こりゃ今節の“出世”は無理か、と諦めかけた。が、人生、何が幸いするかわからない。ゴンロクで開き直った石野は相棒の本体を割り、ペラをガツンと叩いた。それで一変した、というか、エースの底力を復元させた。自慢の伸び足が落ちることなく、サイドの掛かりや引き波を超えるパワーが急上昇した。もしも中間着あたりを拾っていたら、「エース機やし、も少し様子を見よう」ってな感じで手遅れになっていたかも知れないな。

 

 

 

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「勉強になりました」

 こうも言った。去年の三国オーシャン(予選111131)は怪物エンジン33号機を大事に大事に乗りこなし、日々の微調整で自分の理想とする形にじっくり近づけていった。「焦らず騒がず動き過ぎず」的な“帝王学”を学ぶようなシリーズだった。

 が、今年はゴンロクからのスタート。いきなり崖っぷちの挑戦者となった石野は、集中力を切らさないことを心掛け、攻めの姿勢を貫いた。去年が守、今年が攻。2年がかりで攻守の神髄を極めた、と言ったらカッコよすぎるだろうか。7日間、石野73号機を穴が開くほど見てきたので、石野と73号機が日々逞しく成長するさまがそこはかとなくわかった、気がする。

 

 

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 レースを振り返ろう。それは、「石野がまくる」と決め込んでいた私にとって、かなり意外な展開だった。3コース石野のスタートはコンマ03!! しかも全速だったから、伸びる伸びる。一気に突き抜けそうな勢いだったが、それを2コースの新田が舳先半分でブロックした。そして、力任せにイン丸岡に襲い掛かった。おお、その気合やよしっ! と感心しつつ、石野アタマ決め撃ちの私は肝を冷やす。新田がまくり、丸岡がギリギリ残し、石野が差す。意外すぎる1マーク……バックは3艇の伸び比べで、最内の石野だけが半艇身ほど分が悪い。

 

 

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 が、その段階で私は「石野が勝つ」と確信した。石野が育てきった73号機がスーッと動き出す。3艇の舳先が並んだ、と思った瞬間、さらにググッと伸びる。2マークまでに石野だけが2艇身ほど突き抜けていた。今日の73号機が、まさに私が理想とする73号機だった。2マークを先取りして、石野のオーシャンカップ連覇がほぼ約束された。節間成績は5622121①。シリーズも優勝戦も、見事な追い上げ逆転劇だった。

 

 

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「エース機での優勝は、メンタル面の機微も含めて難しい」

 みたいなことを去年の当欄で書いたが、石野はまったく違うスタンスで今年も頂点まで上り詰めた。攻守の神髄。暮れのグランプリの楽しみが、またひとつ増えた。ふたつのエース機を成長させ、自らも成長した石野は、より逞しい攻防を魅せてくれるだろう。たとえ、相棒が住之江のエース機ではなかったとしても。

 もいっかい書く。石野73号機、おめでとさん! でもってハラハラドキドキ、楽しい1週間をありがとさんっ!!(photos/シギー中尾、text/畠山)