トライアルというのは全戦勝負駆けのようなもので、第2戦は特に初戦で大きな着を獲った選手にとっては負けられない戦いとなる。たとえば、初戦6着の山川美由紀は、今日4着だったりすると得点は2走10点。グランプリでもそうだが、トライアル3走の場合のボーダーはおおむね21点となるので、3戦で1着を獲ったとしてもボーダーに届かないことになる。今日は絶対に舟券圏内に入らなければならないのだ。1号艇が巡ってきたことは追い風だが、しかし初戦の海野ゆかりのようにまくりを浴びれば大敗もありうる。上位機が揃うトライアル、パワー機のまくりに対抗するには機力を整える必要もある。簡単な1号艇ではないのである。
ということで、3R発売中、すれ違った谷川里江と少し話し込んでいた山川は、谷川と別れると整備室へ。モーターをバラバラにして整備を始めている。池上カメラマン情報だと、キャリアボデーも交換する方針だとか。実際の交換状況は直前情報を確認してもらうとして、山川が大手術に踏み切ったことをお伝えしておきたい。繰り返すが落とせない1号艇。やれることは徹底的にやり尽くす。
初戦5着の日高逸子も、状況的には山川と大差ない。日高の姿も整備室にあって、奥のテーブルでリードバルブ調整をしている様子だった。レース後にはエンジン吊りに加わるのだが、多くの選手がボートリフトに集まったあとに、日高は遅れてやってきている。ギリギリまで調整をして、急いで駆けつけるというわけだ。大整備をしているというわけではないが、かなり高い集中度で機力アップに励んでいるのは間違いない。
リードバルブ調整は、樋口由加里も行なっていた。トライアル組のなかではやや機力劣勢の模様、このあとの試運転次第ではさらに大きな整備に手をつける可能性もある。6号艇だからといって諦めてはいられないし、テンションを下げてもいられない。全力でパワーアップをはかる一日となるだろう。
そうしたなかで余裕がうかがえるのは、なんといってもテラッチだ。寺田千恵は昨日、モーターの仕上がり良好を感じ取った後、「ペラを叩くのを我慢」したそうだ。放っておくと叩きたくなるので、他の選手に絡んで時間を過ごしていたという。ノーハンマーで行くべきと判断するほど、出ているのである。今朝、テラッチが整備室へと向かったので、何か異変があって整備でもするのかと訝ったが、すぐに整備室を出てきて、手には2枚ほどの布を持っていた。ボート拭きだ。丁寧に丁寧に、細かいところまで時間をかけて、ボートを磨くテラッチ。これもまた、ペラを叩きたくならないための“時間潰し”だろう。その行動自体が、気配絶好の証しである。
ほかでは、遠藤エミ、松本晶恵あたりに余裕がうかがえた。いずれもトライアル初戦で上位着順をマークした選手である。初戦1着、2着なら、たとえ今日6着でも明日の勝負駆けにつながる。だから緩んでいるというのではなく、精神的に切羽詰まる必要がないという意味で、大きなアドバンテージになるのである。
とはいえ、初戦1着の小野生奈は余裕がないとは思わないが、表情が少し硬めに見えた。機力的な不安による焦燥感ではなく、むしろ緊張感が強めに作用しているように思われる。気持ち的に自分を追い込んでいるというか。それだけこの一戦に懸ける思いが強いということだ。本気でティアラを獲りに来ている、と見たぞ。
<シリーズ組>
藤崎小百合と今井美亜が本体整備。藤崎は9Rで勝負駆けに挑むわけだが、きっちり準優に駒を進めるために、パワーアップをはかっている。一方、今井は予選突破は絶望的。1月にバトルトーナメント制した平和島で、今回は苦戦を強いられている。それでも、このままでは終われないと整備に励む。少しでも機力を引き上げるべく、頑張っているのだ。成果が出るかどうか、8Rに注目しよう(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)