ふたつのカドまくり
今日のベストショットは7R、佐藤翼の4カドまくりで決まり! 前検のスタート特訓で「おおっ!?」と唸らせた非凡なスリット足は、やはり幻影ではなかった。穏やかな枠なり3対3から、佐藤のスタートはカド受け深川真二とほぼ同体。正確には20mほど手前で舳先が揃って、そこからスリットラインまでに佐藤の舳先が少し覗く隊形(コンマ03差)だったのだが、直後の12号機の伸び足といったらもう! 瞬く間に半艇身ほど抜け出し、伸びなり舳先を傾けるだけでインの馬場貴也まで軽々と飛び越えてしまった。教科書に載せたいくらいの鮮やかな4カドまくり。
このシリーズの直前まで、私は「現在の大村には、枠なりのスリット同体からまくりきれるモーターはない」と値踏みしていた。直近の5節ほどをチェックしての率直な感想だし、「カドまくりの利かない大村水面」という思いもあった。しかも、私の拙い鑑定では12号機はまったくのノーマークだったし(三島敬一郎は「A」評価、さすが!)。
だから昨日のスタート特訓ではいろんな意味で驚かされたわけだが、こんなサプライズはもちろん大歓迎だ。明日からもスリットからどんだけ伸びてくれるか、伸びてインを潰してどんな配当を演出してくれるか。そんなモーターがイン天国の大村にひとつ存在するだけでも、穴党にとっては夢が膨らむ宝物と言っていいだろう(翼本人はすでにバレバレの人気だけどw)。ちなみに、12号機の三島短評は「初下ろしから部品交換も出足、回り足はキラリ」と手前の足を高く買っているので、競り合いになってもヒケを取らない超抜機かも?
2012年、新鋭王座決定戦の優勝戦1号艇でコンマ+07のフライング欠場。あの痛恨の勇み足からはや8年の歳月が流れたが、エリート街道を歩んできた20代の翼に大きな紆余曲折を与える事件だったことは間違いない(これまでに参戦したSGは2018年のGPシリーズのみ)。プライベートで土屋南という美しい伴侶を得た直後に、第50位で滑り込んだダービーアタック。12号機とともに人生の転機をどこまで強く深く突き進んでいくか、舟券とともに見届けるとしよう。
さてさて、今日は第2Rでも「4カドまくり」が炸裂したのだが、こちらはパワー云々とは無縁の展開&スタート決着だった。まずはピットアウトから⑤深川真二と⑥江口晃生がツープラトンでオラオラの前付けアタック。1号艇の湯川浩司にとっては超激辛の番組で、「3年前の大村GⅠ優勝戦1号艇でFをやらかした罰ゲームだろ」などとうそぶく記者さんもいたが(笑)、とにかく深いイン戦を強いられた。で、内3艇がコンマ20前後で舳先を揃えたところに、4カドの②深谷知博がドカーーンのコンマ09トップスタート。この瞬間にカドまくりが約束されたと言っていいだろう。
こんな過酷なレースで2着に粘った湯川には「お疲れさま、よう頑張った」と労うしかないが、今節はこんなオッサン軍団の「オラオラパターン」が絶好の穴チャンスでもある。登録番号の古い順番に10人の名字を列挙すると【西島・江口・今垣・松井・前本・深川・守田・上平・徳増・原田】……外枠に入れば一触即発、何をやらかすかわからんオッサンズがこれほど揃うSGは珍しい。
今日の1Rでも⑥守田俊介が5コースに潜り込んで万舟のヒモ穴になったし、6Rは⑤松井繁が3コースまでガメて92倍の穴配当に貢献している。佐藤翼12号機を穴党のお宝パワーとするなら、このオラオラのオッサン軍団はさらに過激な大穴トレジャーと呼んでもいいだろう。また、この大ベテランたちが我が物顔でオラオラし続ければ、菊地孝平や白井英治、湯川浩司、山口剛、新田雄史などの後輩たちのハートにも炎が点り、ほとんどのレースが仁義なき熾烈なコース争奪戦になる可能性もあるな。
「そういう進入争いは予想が難しくて好かん!」
と目を背けるビギナーもおられるだろうが、穴党の私は今日の2Rのような“紛争”が大好物だ。明日の危険な?6号艇を紹介すると、2R深川、3R原田、4R山口、5R松井、8R菊地、9R湯川、12R吉川……一筋縄ではいかない妖しい1日になりそうな予感がするのは、私だけだろうか。
最後に初日の全レースを見ての独断パワー番付を記しておこう。
独断パワー番付
S級(抜群パワー)
★★佐藤 翼(出A?・直SS)
★★前本泰和(出S・行S)
A級(上位パワー)
★井口佳典(出A・直A)
★福来 剛(出B・行S)
★江口晃生(出A・行A)
★金子龍介(出A・直A)
★桑原 悠(出B・直S)
★守田俊介(出A・行A)
★峰 竜太(出A・直A)
昨日の段階でS指名した桑原18号機は試運転でゴキゲンな伸び足に見えたものの、いざ実戦では伸びに特化しようとした方向性と自慢の出足系統が喧嘩してやや不協和音を発するようなパワーに思えた。しっかり合わせきれば、全部の足が強い抜群パワーになるはずだ。他では毒島誠(まだペラがマッチしていない?)、今垣光太郎(今日はターン回りが今ひとつ)、寺田祥(悪くないが期待したほどの行き足ではなかった)あたりが上位の予備軍。
それから、穴っぽいところでマークしておきたいのが平高奈菜14号機と秋山直之69号機。平高は峰との足合わせで外から引き波にハメるほどの力強い旋回を見せていた。5・5着に加えて待機行動違反-7点と散々な1日ではあったが、だからこそ舟券的には狙って面白い存在とお伝えしておこう。
秋山は1マークの混戦を回避する展開になってまったくレースに参加できず。大差の6着が人気に影響するかもだが、西山貴浩に完全Vをもたらした69号機がどこかで穴を演出する気がしてならない。それから、よもやのF2となってしまった石野貴之61号機のストレート足にも不気味な迫力を感じた。明日からはスタートは無理せず展開待ちのレースに終始するだろうが、あまりに人気が暴落するようならこっそりヒモ穴に絡めてみたいパワーではある。(photos/黒須田、text/畠山)