BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――大激戦!

f:id:boatrace-g-report:20190419182403j:plain

 いやはや激戦だった。18位ボーダーも、予選トップも、最後の最後まではっきりしなかった。詳しくは畠山が書いているだろうが、ピットでも報道陣が資料を突き合わせて状況を確認し合っている。JLCの展望インタビューでは、太田和美が11R終了後に収録を行なっていたが、12R前に太田がふたたびあらわれて「録り直したほうがいいんじゃない?」とスタッフに提案している。収録では「インから行きます」的なことを話したらしいのだが、「俺、まだ1号艇確定ちゃうでしょ?」。その通り、12Rの結果次第では予選3位以内から落ちる可能性があったのだった。結果的に録り直しはせずに済んでいるのだが、それほどまでに状況は混沌としていたのだ。

f:id:boatrace-g-report:20190419182459j:plain

 予選トップ界隈を盛り上げたのは、市川哲也だ。10Rは6号艇でバナレ飛び、3カド! そして1着。今日は3カドで2勝! 6号艇ということもあって、勝機は薄いと見ていた人も多かっただろう。それまでは太田か今垣か英児か、というところに突如割って入ったのだから、連勝以外の部分でも今日の主役であった。
 いや、結果的に市川が予選トップ! ここに来て、完全に主役の座に上り詰めたのだ。ピットでの市川は実に淡々としたものだったが、明日からはさらに気合が入ることだろう。市川は98年にここ宮島で新鋭王座決定戦を優勝。もし今節で優勝すれば、地元でヤング戦とシニア戦のビッグ両方を制することになる。凄いなー。もちろん、そんなことをやってのけた選手は他にはいない。市川はまさしく快挙に挑むことになるのだ。

f:id:boatrace-g-report:20190419182528j:plain

 11Rは、予選トップ争いの今垣光太郎と太田和美が直接対決。1号艇の今垣が圧倒的有利にも思えたのだが、スタ展、本番ともに今村暢孝の前付けに2コースを選択したことでまずピットをざわつかせていた。結果、2着となって得点率は市川と並ぶことに。しかし1着の回数が市川のほうが多く、予選トップはこの時点でなくなった。インを譲って、2着でトップ消失。今垣はかなり悔しそうな様子を見せている。もちろん、今村とはノーサイドで、レース後はふたりでレースを振り返り合っている。進入のこと、攻めようとしていた1マークのこと、感想戦のネタには事欠かなかっただろう。

f:id:boatrace-g-report:20190419182552j:plain

 この11Rでは、18位以内にいた木村光宏が6着に敗れ、圏外に転げ落ちてしまっている。エンジン吊りを終え、控室に戻る途上で、木村は天を仰いだ。さすがに悔しさは隠せない様子だった。

f:id:boatrace-g-report:20190419182640j:plain

 1着は前本泰和だ。市川に続いて地元の勝負駆けで3カド! 自力でまくる展開にはならなかったが、今垣の動向を見て冷静に差しを選択し、突き抜けている。前本の条件は1着のみ。見事な勝負駆け成功だ! といっても、表情をほとんど変えず、淡々としているのが前本だ。高揚感をまるで表に出さないまま、公開勝利者インタビューに向かうのを見て、前本らしいなと思った。

f:id:boatrace-g-report:20190419182735j:plain

 12R、予選トップ界隈では、渡邉英児が6号艇で登場。得点率的にはこの時点でトップに立っており、トップキープの条件は1位のみ。渡邉は果敢に前付けに出たものの、4着に敗れてしまっている。悔しさを露骨に表に出すタイプではなく、渡邉らしい爽やかさも残されてはいたが、しかし胸の内には落胆もあったはずだ。3連勝発進で連覇に近づいたと思えていただけに、準優1号艇も手放さなければならなくなったのは痛い。まあ、明日からはかえって気楽に戦えるという部分はあるかもしれない。

f:id:boatrace-g-report:20190419182844j:plain

 この12R前には、「宮島の神様、お願いします」と言っていた男がいた。その時点で19位だった男。濱野谷憲吾だ。その願いは、通じた! 12Rの結果を受けて、18位滑り込みとなったのだ。報道陣に声をかけられて、濱野谷の目元が緩む。結果的に自力ではなかったとはいえ、準優に乗れるとなればテンションは上がって当然だ。

f:id:boatrace-g-report:20190419182909j:plain

 その濱野谷の滑り込みを許してしまったのは、服部幸男だ。顔面蒼白とまではいかないが、陸に上がってヘルメットを持ち上げると、やっちまった感が溢れ出る表情が見えている。控室に戻る際は、野添貴裕と肩を並べた服部。服部は野添に対して、悪態をつきまくるのであった(笑)。もちろんこれは軽口で、野添も軽妙に返していたが、その様子がとびきりの“悔し紛れ”で、むしろ勝負駆けを失敗した自分への不満にも聞こえたのだった。ベテランになったからといって、勝負駆け失敗の悔しさに慣れることなどありえないだろう。彼らはいつまでたっても枯れることなどない、とことん負けず嫌いの勝負師なのだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)