BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――気分の浮き沈み

 

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 原田幸哉が“ギリペラ”状態だった。いや、実際は辻栄蔵ほどギリギリまで叩いたわけではないが、それでも相当に粘っていたのは確かだった。ただし、原田はどこか不満げである。

「ぜんっぜん、仕上がらない!」

 今日は12R1回乗りで、原田は朝(昼)からペラを叩き続けた。それこそ、納得のいくまで調整できる時間があった。しかし、モーターは思うようにペラに反応してくれない。

「俺、一日何やってたんだろう、って」

 苦笑いは浮かんでいるが、吐き捨てるように言った。自分の考えているようにモーターが動いてくれたら世話はない。全員が超抜で戦えるだろう。だからこんな日もある。こんなこともある。それは原田の力不足ということにはならないだろう。

 しかし、原田は己の至らなさを嘆く。勝つための調整がうまくいかなかったことを悔やむ。ボートレーサーの戦いの日々というのはそういうものだ。彼らは常に苦闘とともにあり、だからこそ好感触を得られたり好結果が出たりするときには、大きな喜びを手にするのである。

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 終盤のピットで報道陣と話す寺田祥が、微笑を浮かべる程度であっても、はっきりと明るい表情であることは見て取れた。間違いなく超抜。勝利者インタビューでは、やや言わされた感はあったものの、現時点での節イチ宣言も出している。あれだけのパワーの舟に乗れて、しかも6号艇から1着という結果を出せた。ゴキゲンになって当たり前である。

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 時に結果を伴わなくても、気分が上向くときがある。下條雄太郎は9R3着。しかし4カドから伸びて攻めていくさまは迫力があったし、結果的に「寺田さんの発射台になってしまいました(笑)」としても、「今日がいちばん良かったんですよ」と先々への展望も開けてきた足色に、気分上々となる。ちなみに、昨日も似たような展開で、下條が4カドからまくって寺田が差して1着、というものだった。下條が3着であるところも一緒だ。さすがに同様の組み合わせは予選中はないだろうが、次の対戦では一矢報いるべく、下條は策を練ることだろう。

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 ここで唐突に本日の公開勝利者インタビューのブース話となる。これが最後です。12R、勝ったのは峰竜太。1マークでは平本真之に差し込まれたが、2マークで豪快なツケマイを決めて平本を抜き去った。これは気持ちがいい。いや、1マークで差されたことは悔やまれても、それを帳消しにする豪快なターンでの勝利は、痛快ではあろう。ということで、峰の顔には満面の笑みが浮かぶ。「平本くん、ずるいなー。あれは足、キてますよ~」と平本を称えはしたものの、それも勝ったことで生まれた余裕なのだと思う。とにかく、ブース控室での峰竜太は明るかったです。昨日は「負けても楽しい」なんて言ってはいたが、やはり結果が出れば心は弾むのである。

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 その前の11Rは、篠崎元志が4カドまくりで快勝した。スタートでのぞくと一気に内を攻め込む男っぽい締めまくりで、スロー勢の抵抗もすべて降り切って、豪快に勝ち切った。公開予想会で僕は、篠崎元志を完全に蹴飛ばしていた。「勝つならまくりしかない」とも言ってはいたが、機力的に内を叩き切れるとは思えない、ならば消しだ、と宣言したのだ。すみません、元志には気合のスタート攻勢からの締めまくりがあったのだった。というわけで、もちろん冗談半分にだが、控室にあらわれた元志に「蹴飛ばしてごめんなさい」と謝罪。元志は「そんなのどっちでもいいっす」と言って、スタッフたちを笑わせていた。そして言ったのだ。「ここで勝たなきゃもうない、ってわかってるでしょ!」。ドリームは3着も、前半は5着。11Rで大敗すれば予選道中は一気に苦しくなる。それを承知で、元志は勝ちに行った、ということである。ハナからあのカドまくりを狙っていたのだ。そしてそれを遂行した。僕がそういう選手だってわかってるでしょ、と言われて、改めて僕は不明を恥じた。そして、この男はなんと内面までイケメンなのかと改めて唸った。やっぱりこの人、強いよなあ。涼しい顔でインタビューに向かう元志の背中を見ながら、つくづく感心した次第である。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)