今朝のピットはめちゃめちゃ静か。1R発売中に入ったら、装着場に選手は皆無で、整備室も誰もいなかった。プロペラ調整室はもちろん満員御礼だが、ピットの奥のほうにあるためか、トンカントンカンが聞こえてこない。試運転係留所にボートはやまほど係留されているが、そのときには試運転をしている選手は三井所尊春だけだった。その三井所も、その後にボートを陸に上げている。
象徴的かも、と思ったのが、この写真。寺田祥はまだモーターを装着していなかった。整備室を覗くともうひとつ、モーターがただ置かれていて、プレートの数字は44。白井英治だ。グランプリでも、寺田と白井の山口コンビのモーターが1R時にはまだ装着されてなかった日があったなあ、と思い出す。すでに4日目。ある程度仕上がっているのなら、あとは微調整のみ。SG選手の仕事はさすがに早い。
ふと係留所を覗き込むと、仲谷颯仁と湯川浩司が話し合っていた。おそらくその前に足合わせをしていたのだろう。お互いの足色を確認し合う会話だと思われる。その仲谷は、その後も瓜生正義と話し込んだり、岡崎恭裕に何かを問いかけたりと、先輩たちと会話を交わしていた。短時間で何回か、そういう場面を見かけたのだ。仲谷のキャリアを考えれば、SGで吸収することは多いだろう。レース自体もそうだし、陸での強い先輩との会話も仲谷にとってはすべて血肉となるもののはずだ。
1Rのレース後には、羽野直也も岡崎と話し込んだ。ジカまくりでの1着が見えていた展開だったが、差されて2着。ヘルメットの奥では時折悔しそうな表情も見えていたが、岡崎の言葉に何度もうなずいて、先輩の言葉を噛み締めてもいた。羽野も仲谷と同様、先輩の言葉を胸に刻んで、さらにさらに強くなる。
1Rで勝った坪井康晴は、菊地孝平と会話を交わしていた。こちらはアドバイス……のわけがなくて、盟友とのレース回顧であろう。坪井はこの1着で後半に望みをつないだ。それもあってか、坪井らしい柔らかい笑みもこぼれていた。
2Rは石野貴之が差し切って、こちらも後半につながった。ピット離れで2コースに入ったのだが、2号艇は同支部の先輩である野添貴裕。エンジン吊りを終えた石野は野添のもとに歩み寄ったのだが、先に「ごめん」と言ったのは野添のほう。苦笑いをこぼしながら、石野を気遣った。石野は直立不動でお辞儀を返す。勝負の世界だから後腐れなどないが、勝ったほうはやはり礼を尽くす。いい光景であった。
というわけで、本日は勝負駆け! ここからピットは一気にざわついていくことだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)