BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――雨の朝

 雨、である。しかも、午前中はけっこうな強さで水面を叩きつけていた。そんななかでも、選手たちは続々と水面に出ていく。1R発売中に岡崎恭裕が水面際で係留所を覗き込むと、満艇状態! 岡崎もボートを下ろしたかったようなのだが、これでは下ろしたところで係留できないわけだ。すると岡崎は、今垣光太郎のボートが係留されている場所に降りていき、その後ろのほうに工具袋を置いた。なるほど、今垣は3R出走なので、1Rが終われば展示ピットにボートを移すはず。その場所が空くので、早い者勝ちでキープしておこうということなのだろう。実際、2Rの展示航走が終わるや否や、今垣はボートを展示ピットへ。岡崎はそのころボートリフトに乗って待機中で、着水するとそのまま今垣のボートがあった場所にボートを向けたのであった。うーん、岡崎くん、頭いい!

 気候が変わればモーターの気配も変わるので、こういう日は選手たちは大忙し! と簡単に考えたりするわけだが、実はそうでもない。というか、天候が変わろうが変わるまいが、選手たちは調整に忙しく動き回っているのである。特に初日や2日目の序盤戦は仕上げに集中するわけで、だからパッと見ではピットの様子に変化がないように見えるわけである……と思いきや! えっ、守田俊介がペラ叩いてる! いや、もちろん守田もペラは叩くわけだが、どちらかといえばレースの合間はゆったりと過ごすのが守田流なのである。だから、朝の早い段階に調整所にいるとちょっと驚いてしまうという次第。で、守田の隣では馬場貴也が心配そうに見守っているのでありました。なんか時々、この二人はどちらが先輩でどちらが後輩なのかわからなくなります(笑)。

 ペラ調整のシーンで個人的にグッと来たのは、桐生順平と宮地元輝が並んでペラを叩いていたこと。100期コンビで、登番も1番違い。桐生はもうSGに定着して10年以上、一方の宮地はなかなかチャンスに恵まれず、昨年のグランプリシリーズ制覇でここに駒を進めてきた。出世ロードの歩み方はそれぞれだが、こうしてグラチャンのピットで顔を合わせ、時に笑いを交わしながらペラを叩いている様子は、個人的になかなかエモいものなわけであります。

 一方で、やはり何度見ても痺れてしまうのは、篠崎元志&篠崎仁志の兄弟コンビ。今さらではあるが、本当にカッコいい二人であります。彼らがこうしてSGに揃い踏みするのは何十節目か数えてはいないけれども、ともに最高峰の舞台で奮闘しているのだからある種のミラクルではある。今日は整備室でテーブルを挟んで元志が仁志にペラのアドバイスを送っている様子だった。お互いが陸の上では協力しながら、切磋琢磨して高みを目指す。ほんと、そろそろSG優勝戦での直接対決が見たいよなあ。

 雨の中で懸命に試運転をしていた西山貴浩が、「もうお手上げだーっ!」と唸りながらボートを陸に上げた。出迎えたのは片岡雅裕で、そんな西山に苦笑いを返す。その声が聞こえたのか、岡崎恭裕が心配そうに歩み寄って、西山に言葉をかけているのであった。昨日は大整備をしてレースに臨んでシンガリ負け。今日は巻き返したいところなわけだが、どうにもモーターは言うことを聞いてくれないようだ。で、その後は池田浩二の手を借りてモーターを外した。もう一丁、本体整備に手を付けようというわけだ。そう、西山はまったくお手上げなどとは思っておらず、まだまだしぶとく粘る心づもりなのである。登場する7Rまでにどこまで立て直せるか。

 1R、椎名豊が2コースからジカまくり。魚谷智之に差されて2着ではあったが、椎名らしいレースぶりであった。今日の椎名はこの1回乗りなのだが、陸に上がってくると、さっそく2番の艇番が外されて「試」の艇番が装着された。そう、椎名はこのあとも試運転に出ていくつもりなのだ。雨なのに! けっこうな本降りなのに! いやはや頭が下がります。今日は悪くない足と見えたわけだが、さらにさらに研ぎ澄ますべく、一日かけて試運転と調整に励むのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)