BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――1号艇で敗れるということ

 

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 9Rから11Rまで、立て続けに1号艇が敗れた。まずは9Rの長嶋万記。先マイしたが流れ、最後は6着にまで沈んでしまった。ピットに戻った長嶋は、ちょっと見たことがないような顔の歪め方をした。女子レースでも1号艇で敗れたのを見かけているが、ここまであからさまに渋い顔になった記憶はない。SG1号艇での、しかもここまで悪くない成績で来ての敗退は、やはり沸き上がる思いの質が違うということか。あまりに納得できなかったのだろう、長嶋はすぐにピットにふたたび現われ、ボートを着水している。試運転だ。許された時間はほとんど残されていないが、しかし長嶋は走ることを欲した。敗れた原因を追求せずにはいられなかったのだ。にわかに厳しい勝負駆けになってしまった明日、そのためにもわずかな時間を惜しんで長嶋は走る。
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 それにしても、こうしたときに畏敬すべき先輩が近くにいるのは大きいはずだ。菊地孝平や井口佳典といった艇界トップの選手たちが、入れ代わり立ち代わり長嶋に声をかけていた。井口などは、ちょっとからかうような言葉をかけたようで、長嶋に一瞬、笑顔を浮かべさせたりもしていた。彼らから受ける言葉や彼らが漂わせる空気感が必ず長嶋をさらに強くさせる。SGにもっと出たいという長嶋の思いは、こうした薫陶をもっと受けたいという意味も含まれているだろう。

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 10Rでは岡崎恭裕が敗れた。こちらは2着だが、しかしその落胆ぶりは大きかった。黙々とエンジン吊りを終わらせると、岡崎はガックリと首を折った。シールド越しにうっすらと見える表情は、どこか悲しげにも見えた。1号艇インコースだから必勝、などということはありえない。SGクラスでも1コース1着率100%という選手は一人もいない。しかし、スタートを決めてミスなく先に回れば勝利の計算が立つ、というのもインコースではある。それを逃した憤懣を、岡崎の様子は鮮明に表現していたと思う。

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 岡崎を破ったのは、馬場貴也だ。JLC解説者の青山登さんと話していたら、モーター格納を終えた馬場にバッタリ。青山さんが思わず、「ウマイ!」と馬場を指さしながら叫んだ。大先輩の絶賛に、馬場はニッコリ。さらに青山さんがウマイを連発するものだから、馬場は思い切り恐縮してしまった(笑)。ともかく、会心のまくり差しに馬場もテンションを上げているようだった。

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 11Rは田中信一郎が3着。リフトから降りるや、悔しそうに天を仰いだ。51233という着順は決して悪いわけではないが、田中はもちろん51231とするつもりだったはずだ。慟哭の叫びが聞こえてくるようにすら思えてしまったその姿。1号艇での敗戦は他の艇番でのそれよりもずっと大きい。そんな真理のようなものが、田中からは見て取れたように思えた。

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 11Rを勝ったのは飯山泰。おっ、“勝手にチーム長野”の2連勝ではないか。公開勝利者インタビューに向かう飯山に、グータッチで祝福。「SGで久しぶりの1着ですよ~」と顔をほころばせた。あら、そうだっけ?「2014年のグランプリシリーズも勝てなかったし」。ということはいつ以来なんだ? 調べたら、16年メモリアルで1勝してます! ただそれは一般戦での逃げ切りで、今回は予選での2号艇からの勝利。こうした会心を味わうのは、飯山の感覚では本当に久しぶりだったのだ。モーターの手応えもかなり良さそうで、明日の勝負駆けも期待大! 11年グラチャン以来のSG予選突破を!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)