10R
注目された進入は結局枠なり3対3。こうなると塩崎桐加、田口節子の内枠勢に優位があるのは当然か。さらに土屋実沙希が1マークで転覆。外の出番はほとんどなくなったと言っていい。5コースから攻めた守屋美穂も外を回るしかなくなって、実質的に展開は消えた。土屋は幸いなことに体は無事。ピットに戻ってくると、すぐに各選手のもとに駆け寄り、申し訳なさそうに頭を下げていた。ドンマイ!
山川美由紀はヘルメット乾燥室の前で、守屋と土屋千明に「ごめんね」と謝っている。その内容はわからなかったが、女子レーサー界の超偉人の山川は、それを笠に着るようなところはひとつもない。若い二人はもちろん恐縮するわけだが、そこからは和やかな空気でレースを振り返り合った。山川が作り出した空気である。
5勝目をあげた塩崎桐加は、安堵の表情で引き上げてきている。昨年暮れはクイーンズクライマックスシリーズを制し、その約2カ月後にGⅡにファイナルに駒を進めてきた。勢いは優勝戦のメンバーでは一番だ。足も万全、スタートも行きやすく見えてるとのこと。間違いなく優勝戦は台風の目だ。
田口節子は地元での優出にやはり安堵しつつ、2着での優出ということで思案が生じている。2日目の6号艇で前付けから快勝していることから、枠番によってはやはり同様の動きがありうる、と考えるのが普通。記者会見でも、コース獲りを聞かれて「6なら動くが、4か5なら……」と言って、しばらく考え込んでいる。10R終了直後に行なわれた会見なので、他の優出メンバーはもちろんわかっていない。たとえば、次の11Rで小野生奈が2着で、結果6号艇になったなら、なんてことも考えただろうか。そして、結果的に優勝戦6号艇はグレートマザーだ。「6なら動く」は、6コースはないという決意でもある。田口はレース直前まで、進入に悩むことになるのかもしれない。
11R
ファン投票1位の大山千広は、ここで敗退となった。足はもうひとつと見えていただけに、よく健闘したと言ってもいいと思うのだが、しかし大山はそうは考えない。レース後はやはり落胆した表情。着替えを終えてもなお、うつむく場面が見られたものだった。こんな思いを今後も重ねて、大山はさらに大きな存在となっていく。
勝ったのは寺田千恵。ピットに戻るや、田口の顔を見て嬌声をあげた。さらに田口の顔にぐーっと自分の顔を近づけて、何事かをまくしたてる。ヘルメットかぶってたので、何言ってたのか聞き取れなかったのが残念! 2コースの小野生奈がやや後手を踏み、壁なしの隊形となった。それでスリットではヒヤリとしたらしいので、そのあたりの会話だったか。ただしのぞいていたセンター筋に対しては伸び返しているし、「スリットの足とグリップが特にいい」ということなら、明日のイン戦も心配はなかろう。そう、結果的に優勝戦は1号艇だ! 選手代表の立場としては(まあ、そうでなくとも、だが)、優勝戦でのフライングは許されない。それだけにスタートにやや迷いが生じるかもしれないが、よほどの後手ではない限り、先に回れる可能性が高いと思う。
2着は日高逸子。予選順位で上位の田口が6号艇になる可能性はなくなったが、しかしこの人が外枠にいるとなると話は変わってくる。そして、結果的に日高は6号艇での優出だ。さあ、進入はどうなる?
会見での日高のコメントをざっと記すとこうなる。「初日に待機行動違反をとられて、ダメだと思っていたので、優出できただけでありがたい。なので枠なり。寺田さんが地元なので、悪いことはしません(笑)」。枠なり宣言! もっとも、この時点では自身の6号艇も寺田の1号艇も決まってはいない。地元の1号艇に前付けに行っても何にも悪くはないです! とツッコミを入れたいところだが、実際のところ、グレートマザーはどうするのだろう。明日のスタート特訓やスタート展示が楽しみではある。ちなみに、スタートはダッシュのほうが見えているそうだ。
12R
まずは、細川裕子の今節の巡り合わせの悪さには同情してしまう。昨日のエンスト失格。そして今日は、2周1マークでキャビった竹井奈美と接触し、ターンマークに乗り上げるような格好になった。なんとか完走したが、さすがに途中帰郷となっている。とにもかくにも、ここはしっかりと身体を癒してほしいし、精神的にも傷ついたと思うので、ゆっくりと休んでほしい。お大事になさってください!
勝ったのは中谷朋子。お見事な2コース差し! 凛々しい表情でピットに戻ってきたその姿は、なんともカッコ良かった。まさに金色のジャンヌダルク。12Rのあとはすぐにリプレイが流れ始めるので、中谷は整備室のモニターのそれを見つけて、引き締まった表情のままで見入っていた。1周1マークで差した瞬間。さらに2マークの旋回。2周1マークでいったんは迫られているのだが、それを振り切った瞬間も見届けて、控室のほうに歩き出した。やはり表情は凛々しいままで! で、記者会見では何度か笑顔を見せている。やはり会心の差しだったのだ。足も今日は万全に仕上がっていたそうで、今日のデキを天候が変わる(雨予報)明日にもキープできれば、俄然怖い存在となるだろう。
悔しいのは遠藤エミ。2着で優出とはいえ、やはり悔しさのほうがまずは前面に出る。エンジン吊りでは松本晶恵と今井美亜が、遠藤を気遣う表情。会見での遠藤曰く「1マークは張りが甘かった。そこがすべて」と振り返っているが、その原因をレース直後は見失ってもいるようだった。「状態はよかったのに……」そんなつぶやきも聞こえてきた。遠藤も整備室モニターのリプレイを見入っているが、悔恨の理由は見つかっただろうか。
「去年(準優F)の借りを返すには優勝しかない」
会見でそうも語った遠藤。1年前、そして今日の鬱憤をまとめて晴らすべく、明日は闘志を燃やす!