BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――さあ、勝負駆け!

●19位と20位と21位が優出

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 グランプリへ優勝条件、なら明日は一発勝負だ。しかし、優出で○着以内なら、それを意識して走ったりはするのだろうか。選手によっても、あるいは枠番によっても違うのだろうが、見る側も選手の胸の内をあれこれ想像したくなる選手が、なんと3人も優出した。それも19位と20位と21位。まさにボーダー下の3人である。

 12Rでは20位の毒島誠と21位の新田雄史がワンツー。ピットでは、二人と仲の良い菊地孝平がグータッチを交わしたりして祝福していた。新田は淡々としていたが、毒島は力強い表情を保ったまま。

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 そう、毒島の表情がとにかく力強いのである。優出記者会見でも同じだった。毒島は時にジョークなども飛ばしたりして、サービス精神旺盛なトークを見せてくれるのだが、今日はそうではなかった。言葉も歯切れがよく、笑顔は一度も見せなかった。グランプリもそうだが、とにかく優勝をするのだという強い決意がすでにあらわになっている。「足は節イチと言っていいと思います」とのことだが、おそらくメンタルも節イチクラスに仕上がっている。

 一方の新田は、会見でも淡々としたものだった。「気楽にやります」という言葉も出ている。一節まるごと勝負駆けという性質のレースだからこそ、その気楽がかえって脅威に思えたりもする。ちなみに、師匠と同時優出!

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 19位は篠崎仁志である。9R、水面際のベンチでは、兄の篠崎元志が峰竜太らとともにレースを観戦していた。2マークで仁志が2番手を獲り切ったとき、そのベンチからは歓声があがった。よっしゃっ! 仁志にはもちろん聞こえているわけもないが、その声はことさらに大きく響いていた。

 レース後の仁志は、特に表情を変えたりはしていない。もちろん、安堵の思いや優出の喜びはあるだろう。ただ、仁志は年頭からこう語っている。「今年はSGを獲って、グランプリへ」。明日、優勝しなくとも着順によっては18位に届く。だが、それはそれで嬉しくとも、仁志はおそらく満足はしない。会見でもSG制覇へのこだわりを語っているし、優勝しか考えていないだろう。それが明日、どんなレースを見せてくれることになるのかは、非常に興味深い。

 

●SG初優出! そして初優勝&初グランプリへ!

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 先述した9Rのベンチでは、1マークを回った瞬間にも歓声があがっている。山田康二の師匠は峰竜太。兄弟以外にも、特別な縁でつながる者がレースを見つめていたのだ。

「オーシャンカップの後、峰さんに『俺が獲れたんだからお前も獲れるよ』って言ってもらったんです」

 ヤングダービーのピットで、山田はそんなことを話してくれた。優出会見でも同じことを言った。山田にとって、SGを獲るということがぐっと身近になった一瞬だろう。そしてついにSG初優出。「僕の身分では大きなことは言えないですけどね」と笑いながらも、さらにタイトルが近づいたことは間違いない。

 モーター格納を終えて控室に戻る山田とすれ違った。祝福の声をかけると、山田は素晴らしい笑顔を見せてくれた。明日、さらに巨大な笑顔を見ることができるだろうか。

 

●ベスト6の優出

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 11Rの結果を受けて、10R1着で優出した井口佳典は6位に浮上している。6位以内でグランプリに行くことは、大きなアドバンテージを手にすることでもある。そのための非常に有利なポジションを、井口は掴んだわけだ。

 しかし、井口は「それは意識しない」という。ただ獲りにいくだけ。2号艇であっても、1号艇の毒島と意識はまったく違いはない。愛弟子・新田との同時優出も、今頃は宿舎で盛り上がっているかもしれないが、レースになればまるで意識することなく臨むのだろう。

 レース後、その井口を祝福したのが菊地孝平。その直前に、菊地は僕とすれ違いざま「2マーク、もったいなかった。失敗した」と激しく悔しがってみせた。それでも、東海地区の盟友の優出に、素直に笑顔を投げかけた。そして井口も、嬉しそうな笑顔で返した。菊地の思いも背負って戦う優勝戦、となるのかもしれない。

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 桐生順平は賞金ランク4位。すでにベスト6でのグランプリ行きは確定している。明日はトライアル2nd初戦1号艇を賭けての戦いにもなるわけだが、桐生もそれは意識していない。夏場以降の不調は、この優出で振り切った。あとはリズムを上げて年末に向かうのみだ。

 レース後は淡々としながらも、同期の平高奈菜に言葉をかけられてニカッと笑ってもいる。明日はいいメンタルで優勝戦に向かうことだろう。

 

●レディースの戦い

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 中村桃佳が優出! ただし、優勝してもベスト12には届かなさそうだ。12位以下から逆転があるのはグレートマザー日高逸子のみ。会見では笑顔ばかりがこぼれていたが、今日も3カドを見せるなど、一級の勝負師だ。明日は全力で12番目のシートを奪いにいくだろう。

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 なんとか6号艇で優出した長嶋万記は、安堵の表情。逆に堂々1位通過で連覇に王手をかけた遠藤エミは、会見で力のこもった表情を見せていた。海野ゆかりは淡々としたもの。揺るぎない精神力を感じさせる。

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 気になったのは細川裕子だ。4号艇での優出が決まって、本体整備を始めたのだ。その隣で見守るのは三井所尊春。実は今日の午後イチに、三井所と細川が長く会話を交わしていたのを見ている。不思議な組み合わせだが「チルト3度」というピースをはめれば、ひとつの絵ができあがる。三井所はチルトの魔術師、細川もチルトを跳ねて戦っていた時期がある。明日はチルトうんぬんはともかく、4カドからのひと伸びに賭けるのだろう。いま艇界で最も伸びる男と言っても過言ではない三井所のアドバイスがハマったら……。明日の気配、直前情報は要チェックだ。(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)