BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――まだまだ、もっともっと強い光ちゃんを!

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 光ちゃん、おめでとう! スリットでは太田和美にのぞかれた雰囲気もあったが、今垣光太郎ががっちりと押し切ってみせた。完勝と言っていいだろう。
 朝、後半に入ったばかりの時間帯に今垣と顔を合わせたが、実に落ち着いた雰囲気だった。今垣曰く「サイコー! サイコー! 楽しい!」とプレッシャーを楽しもうとしていたとのことだが、無理やりそういう状況に気持ちを持っていこうとしている様子にはとても見えなかった。SG9冠、GⅠ29回目の優勝。敗れたレースも含めれば、踏んできた修羅場はとてつもない。その経験が、今垣を自然とそうした状況に持っていったのだと思う。まあ、SG優勝戦の1号艇となれば、また違ったものがあるのかもしれないが。

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 自然体で臨めたならば、しかも進入で大きな動きがあってはなはだしく予想外の起こし位置になったりしなければ、今垣の力をもってすれば、まず負けない。もちろんエンジンの後押しもあって、今垣は堂々たる押し切りを見せたのだった。

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 終わってみれば近畿で4着まで独占。今垣が1マークで決着をつけるような勝ち方を見せたこともあってか、敗者たちはどこかサバサバした様子にも見えた。松井繁は折々で笑顔を見せていて、こんな優勝戦後の王者を見たことがあったかしらん、と思ったり。いったんは3着にあがって、再逆転されての4着が悔しくないはずはないが、進入の駆け引きを見せて5コースを獲り、スタートで無理をできない状況にありながら上位番手争いに加わって、まずは肩の荷が下りたという感覚のほうが強かったのか。ちなみに、特にニコニコしていたのは、スリット写真を見たとき。コンマ13は悪くないが、内4艇はもっと踏み込んでいる。これ以上はスタートを攻められなかったことへの苦笑いも混じっていたか。

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 2連対率28%というモーターで準Vにまでたどり着いた吉川元浩は、モーター返納を終えると駆け足で整備士さんのもとに向かった。今回は整備調整で言葉を交わす機会が多かったのだろう。世話になったという感覚も強かったはずだ。いわば仁義を切りに行った、というシーンだが、整備士さんと吉川の笑顔の交歓はじわじわ感じるものをこちらに与えたシーンであった。

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 太田和美は淡々としていたが、2号艇でスリットでやや前にいたことを思えば、チャンスを手放してしまった悔しさも残ったに違いない。再逆転で3着を獲り切ったことを喜ぶ気にはおそらくなれないはずで、それでも粛々と最後の作業をこなしている姿は、プロの仕事師であった。

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 大場敏は、GⅠ初優勝ならず。また、矢後剛も見せ場を作れないまま、シンガリに敗れてしまった。彼らもやはり淡々としてはいたが、むしろその静かな様子が不本意な結果への不満に耐えるものだったかもしれない。それも、これまで積み上げてきた経験の賜物なのかもしれない。

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 今垣はもともと、勝って大はしゃぎするタイプではない。負けたらもろ落ち込む様子を見せるのだが、勝ったときは祝福に対しても静かに頭を下げたり。ただ、そうしたなかから高揚感はハッキリと伝わってくる。真面目で控えめながら、感情を素直に発散するようなところがあると僕は思っている。
 ウィニングランから帰ってきて、写真を構えるこちらに、今垣はやはり頭を下げてきた。「おめでとうございます!」と声をかけると、さらに頭を下げる。峰竜太なら鬼のようなガッツポーズをしてくるだろうに。というわけで、「ガッツポーズ!」と催促してようやく右手を掲げてくれた。そんな光ちゃんが最高だ!

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 会見では、GⅠでは予選落ちが増えている近況に「あと1、2年で辞めることばかり考えていた」と言った。もちろん「この優勝がもっと頑張ろうというきっかけになった」と続くので、光ちゃんファンはご安心を。ただ、今垣のなかでやや追い込まれた状況にあった、というのは確かなのだろう。それはいかにも寂しすぎる話である。これがきっかけとなった、というより、今垣光太郎はまだまだ終わっていないことを証明した勝利なのだ、と僕は考えたい。奥ゆかしく喜びを表現しながら、実際には嬉しそうな感情が透けて見える。そんな今垣光太郎をもっと見たいではないか。まだまだ、もっともっと、フライングには気をつけて(会見で「僕はすぐにFを切ってしまう」と山ほど言った・笑)強い今垣光太郎を見せてくれ!(PHOTO/池上一摩 黒須田 TEXT/黒須田)