整備室には、終盤の時間帯にも次から次へと選手がやって来た。本体整備に取り掛かる選手も多く見かけられ、その選手たちと整備士さんら関係者、たいがい整備室でレースを観戦する永井彪也や羽野直也ら若手選手たちが、レースが始まると揃ってモニターを眺める。その光景は、レース場のスタンドやチケットショップでモニター下に集まるファンを想像させたりして。舟券を買っていい人はそこに一人もいないんだけど。とにかく、整備室は盛況なのであった。
たとえば、８Ｒで３着の瓜生正義が９Ｒ発売中には速攻で整備を始めていた。３周２マークで抜かれての３着だから、気になるところは多々、というところか。最初はキャリアボデーを架台から外していたので、その交換程度かとも思えたのだが、やがて本体を割っての整備も開始。今日は２着３着と着順自体は悪くないのだが、それは瓜生をゆっくり過ごさせるものにはならなかったようだ。11Ｒ発売中に整備を終えて、「よし、これで明日は良くなってるはず」と池田浩二に笑いかけた。目論見通りに良化しているといいっすね。
その池田浩二はキャブレター整備中なのであった。２Ｒ２着、10Ｒ逃げ切り勝ちでも、終盤の時間帯をのんびり過ごそうということにはならなかった。好発進だから、逆にさらなる上積みで明日以降余裕をもって戦おうということなのか。まあ何しろ逃げ切り直後だったので、整備に取り組みながらも表情は明るかった。一瞬だけ曇ったのは、11Ｒで平本真之が転覆したとき。後輩の事故はやはり心配なものである（平本は無事）。それ以外は実に池田らしい朗らかさが漂っているのであった。
９Ｒでは、茅原悠紀が１号艇を活かすことができなかった。地元グラチャンで、この失点は痛い。明日以降はなんとか巻き返したいところで、そのためにもパワーアップは急務だ。というわけで、茅原も本体を割った。９Ｒはキャリアボデー交換で臨んだわけだが、さらに本体にも手を入れたのだ。見守る整備士さんも地元のヒーローの苦境に心配そうな顔つきで、さまざまなアドバイスもあったものと思われる。さらにギアケース調整も行なっている茅原。地元唯一の参戦ということもあって、選手班長も務める今節。そちらの仕事も大変そうで、今日はひたすらに多忙な一日であった。
やはり整備に忙しそうだったのが稲田浩二。６着２本と最悪のスタートになってしまっただけに、打てる手は打つといったところか。ギアケースの調整を終えたのは11Ｒ発売中。で、イナダッシュは左利きだったんですね。整備をした場合、伝票を起こして整備士さんに渡さねばならないのだが、稲田はこれを左手で書き込んでいたんです。どうもでいいことだけど、意外というか何というか。あと、僕の知る範囲では篠崎元志も左利きですね。
あとは今垣光太郎も整備を行なっていたことをお伝えしておきます。６Ｒは代名詞でもある３カドからのレースだったが、まるで伸びず。スリット手前からしゃくってたのに、ちっとも前に出ていく気配がなかった。それもあっての本体整備か。もともと今垣といえば整備の鬼。かつてはほとんどＳＧ毎節と言っていいほど、本体を割る姿を見かけたものだ。今節は登番最上位。つまりは最ベテラン。積み重ねてきたノウハウでモーターパワーを引き出し、今垣らしいレースを見せたいところだ。
さてさて、ドリーム戦は峰竜太が逃げ切り快勝。最も獲りたかったタイトルを１号艇で勝ち獲り、そのプレッシャーにも打ち克った若松オールスター。もはやドリーム１号艇は常連でもあるし気楽なものだろう……ってなことにならないのが峰竜太なのである。９Ｒ発売中にすれ違ったのだが、実にもう、ピリピリとした様子。ちゃんと１号艇の責任感を抱き、ファンの応援にも応えたいと願い、しっかり緊張してレースに臨んでいる。特にここ何年かは、どんなレースの前でもこんな感じである。これが峰らしい姿なのだ。
あと、毒島誠も実に彼らしくレースに臨んでいる。そう、ギリペラだ。11Ｒの締切５分前にはボートを展示ピットに入れなければならないのだが、たぶん７分前くらいに装着場を猛ダッシュする毒島の姿が。う～ん、毒島らしい。で、その直後に呼び出しのアナウンスがかかった。まだチルトの申告が済んでいなかったようだ。それほどまでにペラ調整に没頭していたわけである。ドリーム戦、結果は２着。“らしい”姿を直前に見せていた二人のワンツー、だったのですね。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 ＴＥＸＴ／黒須田）
