午後になって強い向かい風が吹き荒れ、前検航走はスタート練習が中止され、タイム測定のみということになった。記者席に帰って確認したら、1~6班が風速12m、波高25cm。7~9班が風速14m、波高30cm。これではスタート練習が中止になるのも無理はない。その調整役は、選手班長の福来剛。初SGで選手班長とはいかにも大役だが、任じられたからにはしっかりとこなす。競技本部と各選手の間を走り回って、なんとも忙しそうなのであった。
水面を見ながら西山貴浩がぼやく。「この水面で、よくみんな文句も言わずに走りますね~」。たしかに水面はおおいに荒れていて、風にあおられた水しぶきが時折あがるほど。とか言いつつ、西山も文句ひとつ言わずに水面に出ていくわけで、このクラスはなんだかんだ言ってもやるべきことはやる。
それでも、やはり荒れ具合は気になるわけで、1班(ドリーム組)のタイム測定が始まると、井口佳典がしゃがみ込んで、係留所のひさしの隙間から走っている様子を見守っていた。井口ほどの超一流でも、もちろん静水面のほうがありがたいわけで、文句は言わずともうんざりした気分にはなるだろう。
そんななか、まさかの出来事が。桐生順平が試運転中に転覆したのだ。あの桐生が足をとられるほどの波。ケガがなかったのは何よりだったが、スタート練習中止が致し方ないと改めて思わされる。桐生は急ぎ転覆整備に取り掛かったが、本来の8班のタイム測定には間に合わなかった。というわけで、転覆整備終了後に一人だけでタイム測定。これが無事合格となり、全機合格! 大変な状況の中、選手の皆さんお疲れ様でした! 明日からの奮闘を期待します。
で、明日はどうやらこれが追い風に変わるらしい。今垣光太郎が「明日は風邪向きが変わるんですよね~」とジェスチャー付きで苦笑いしていた。もしスタート練習が行なわれていたとしても、スタート勘については明日イチからやり直しだったとも言えるわけだ。この時期の平和島は風が強くなることもある。クラシックもかなり前に本番2周で行なわれた日もあった。明日も水面が良くない可能性はあるが、ケガなく熱いバトルを繰り広げてほしいですね!
で、こんな水面だったから、試運転もあまり活発には行なわれなかった。さらにスタート練習も行なわれていないから、今日は選手もほとんど感触を掴めなかったようだ。エース機の吉川元浩にしても、そのパワーを実感できなかったようだ。プロペラの形は自分とぜんぜん違うそうで、だからそれを叩き変えるかもまだ判断がつかないとのこと。明日乗り込んでから、方針を固めることになるだろう。超抜モーターを手にしたとはいえ、明日は忙しい一日になる可能性もある。
ドリーム会見で、唯一、具体的な言及があったのは毒島誠。江口晃生、石野貴之と足合わせをしたそうで、「あまり変わらなかった」。ただ、江口にしろ、石野にしろ、数字のあるモーターではないので、そこがどうか、とも。うむ、具体的とは言うが、決定的ではないな。毒島は精一杯、誠実に話したのだが、それでもこれくらいしか言えないのだから、今日の前検はかなり異例だったと言える(そもそもSGでスタート練習中止は記憶にない)。異例づくめのクラシック、だ。明日は水面がおとなしくなってくれるといいなあ。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)