DEEP MONSTER
12R優勝戦
①徳増秀樹(静岡) 05
②上野真之介(佐賀)12
③菊地孝平(静岡) 10
④峰 竜太(佐賀) 11
⑤羽野直也(福岡) 12
⑥新田雄史(三重) 17
「今節は僕よりエンジンが濃かったです」
優勝インタビューで、徳増はいの一番にこう言った。このセリフが象徴するように、今節はまさに「パワーシリーズ」と呼ぶべき6日間だった。徳増、上野、峰、菊地の4人(鬼足軍団)が凄まじいストレート足で他を圧倒し、予選道中は昨今のSGではありえないほど一撃まくりやまくりマークのまくり差しが乱舞した。
そんな超抜の4人がまんま1~4号艇を占拠した優勝戦。穴党の私としては深川真二や前本泰和が6号艇になってくれたり、4人の枠が分断して間に伸びない選手が混じってくれたりして欲しかったのだが、鬼足軍団はアルプス山脈の如き様相で内コースに連なった。
そして、スタートは↑ご覧のとおり。昨日の準優11R(コンマ03)と同じようにイン徳増だけが突出。昨日と違ったのはそこから先の行き足で、2~4号艇もしっかり徳増に食らいつく。が、スタートの利とコースの利を誇る徳増が1艇身近いリードを保ったまま1マークを先取りすると、ターンの出口で後続を3艇身ほど突き放していた。SG初Vのプレッシャーを微塵も感じさせない、完璧なインモンキーだった。これも相棒45号機の絶大なる信頼があればこそだろう。
2~4着もまんま鬼足軍団が占拠したが、その着順がパワー差だったとは思っていない。バック直線は菊地-上野-峰が僅差で続き、2マークのアヤ(菊地と峰が接触)で大勢が決した。徳増を含めた鬼足軍団は、どんな組み合わせの1枠~4枠(全24通り)になっても「1号艇が逃げきり、2~4着はその時々の展開のアヤで着順が決まる」というレース展開になったはずだ。昨日と今日はわずかに徳増45号機のパワーが上=節イチだったが、それほど4人のパワーは高いレベルで拮抗していた、と思っている。
独走でゴールを通過した徳増は、右腕をキュッと曲げて無人のスタンドに敬礼してみせた。その正面の堤防(敷地外)に集まった多くのファンにも。デビューから25年7カ月、45歳でのSG初戴冠。7年前にはチャレンジカップ→賞金王シリーズで連続優出するも準Vに終わり、その後も優出はあれど頂点に立つことはできなかった。そんな長いウップンを晴らすような1121111①の準パーフェクトV。マスターズ世代に突入してからの快挙は、天晴と言うしかない。
さて、ちょいと自慢話。今節の私は『BOATBoy』誌で45号機に◎を打ち、参戦する全レースの舟券を買うと決めていた。トータルパワーとしては絶対エース72号機(→上野)には劣るものの、行き足~伸びだけは負けない、と信じて。その乗り手が徳増と知った時、「お、センターまくりが多い徳増なら暴れてくれるかも」とほくそ笑んだ。同時に、前検の記事でも書いたが「魔法のような調整方法をやらかす徳増が、超伸び型45号機をどんな風に仕上げきるのか」に興味を抱いた。どんな低調機でもストレート足を上位~トップ級まで引き上げ、ひとたび仕上げきると手前に寄せても直線は落ちない」という魔法のような調整。ここ2年ほど、徳増の成績が高いレベルで安定しているのはこの“魔法”のおかげ、と私は勝手に思い込んでいる。そんなマジシャンが節イチ級の伸びを誇るモーターを手にしたら……?
その答えは、日々私の網膜に焼き付いていった。今節の徳増の予選はインコース1回&3コース5回という極端なものだったが、その3コースから戦うたびに手前=起こし~出足~行き足のツナギの部分が強くなっているように見えた。最初は単なる伸びまかせのまくりだったのが、4日目には同じ45号機とは思えないほどの凄まじいターン回りでまくり差しを決めた。それでいて、自慢の行き足~伸びはほとんど落ちることがなかった(勝手な感想です)。
やっぱ徳増マジックだわ。
このまくり差しで予選1位を決めた瞬間、徳増のV確率は20%→80%くらい跳ね上がったはずだ。2度のイン逃げに不可欠な手前の足が完璧に仕上がったのだから。私が強烈な伸び足だけに惚れ込み、「とにかく随所にまくって穴さえ開けてくれればいい」などと無邪気に考えていた45号機は、4日間で72号機をも凌ぐほどのウルトラバランス型の怪物になってしまったのである。
「今節は僕よりエンジンが濃かったです」
冒頭の徳増のセリフを、私はこう加工して読者にお伝えしたい。
――今節は、徳増が超抜エンジンをさらにありえないほど濃厚にしたのだ。
と。今節の準パーフェクトVは単なる機力に拠るものではなく、徳増博士×45号機が合体して発生した化学反応に拠るもの、だと思っている。
※追記/読者におかれては、怪物級に暴れまくった徳増45、上野72、峰50(前検の「三島敬一郎のトップ3でもあった)と菊地51が今後もどんなパワーで宮島水面に君臨し続けるのか、舟券とともにその優劣を楽しんでくださいまし。本当に、昨今のSGでこれほどストレート足の強いモーターが4つも林立することはなかったのだから。(photos/チャーリー池上、text/畠山)