BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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下関メモリアルTOPICS 3日目

不運な厳罰

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 まず、王者・松井繁ファンには残念な報告から。6Rで4コースから伸びなりまくった松井が3コースの原田篤志と接触。さらに篤志→内艇が玉突き状態になっててんやわんや。複数の接触で篤志の45号機はエンジン不調を発症し、タイムオーバーギリギリでなんとかゴールを通過した。このアクシデントの引き金となった松井は不良航法=マイナス10点となった。
 まあ、こんな雑多な流れだけを書けば確かに松井が「A級戦犯」になってしまうが、実際のレースは実に微妙なものだった。スリット隊形(進入順)はこうだ。
①磯部 誠 .14
②西山貴浩 .21
③原田篤志 .20
⑥松井 繁 .12
④萩原秀人 .12
⑤長田頼宗 .15
※隊形1236/45
 ご覧のとおり、内のスロー4艇は完全な中凹み。3・4コースの差はぴったり半艇身で、しかも松井は(おそらく)全速で伸びて行ったから、まくり戦法は当然の選択だ。松井アタマの舟券を買っている人は、この隊形から直進したら激怒してもいいだろう。

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 で、松井が当たり前のように絞めたらば、半艇身凹んでいる篤志が捨て身で抵抗した。シンプルに飛びついたと言うより、篤志がまた内の西山よりグングン伸びて行くから「先まくりできるかも!?」という風情で握ったように見えた。『穴・極撰』で◎篤志-○松井の私は、そりゃ篤志を応援しましたよ。奇跡的にブロックが成功して先まくり→予想通りの3-6決着にならないか、などと思ったりもしたものだ。
 だがしかし、中凹みの隊形も含めてこの篤志の選択はあまりにも無理筋だった。応援している私の目にも、すぐに「そりゃあかん!」と映った。事実、松井に圧迫されながらも握り続けた篤志は西山を飛び越え、スタートをしっかり行っていたインの磯部に激突。エンジンに支障をきたすこととなった。

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 この事故は、本当に松井繁だけの“選手責任”なのか?
 レース後の裁定を聞いて、私は非常に後味の悪いものを感じた。確かに過去の判例は、「玉突きによる転覆やエンストなどが起きたら、とりあえず最初にその原因を引き起こした選手が悪い。逆に玉突きがあっても大ごとにならなければお咎めなし」という玉虫色の裁定が多く、今回もそれに相当するだろう。絶対的に優位な隊形からごく普通に絞めまくった松井は、「運が悪かった」ということになる。
 ただ、不良航法の減点が一気に10点に倍増した今、「しっかり攻めたはずの選手が偶発的な連鎖事故で運悪く厳罰を喰ってV戦線から一発で脱落」という不条理な事態も激増するだろう。それに比例して「スリットから半艇身突出しても、無理はできない、しない」という選手も増えるだろう。イエローカードが廃止になって、何でもかんでもレッドカード一発退場になるサッカーみたいな……。

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 私個人の意見を書いておこう。
 今日の松井の4コース絞めまくりは、実際には-10点を取られるような反則ではなかった。かと言って、抵抗した篤志が悪かったわけでもない。選手はその時々の状況に応じて、コンマゼロ何秒という瞬時に判断して行動に移す。松井も篤志もそうしたらば、不可抗力的にてんやわんやの状況に至った。「水上の格闘技」ボートレースに付き物のアクシデントであり、悪意や危険と知りつつ動いたものではなかった。サッカーのレッドカードがそうであるように、減点10点時代の裁定は「故意や悪意や危険な自覚があるやなしや」というファクターを最優先にしてもらいたい。「見た目に派手な事故、危険な事故が起こったから、とりあえずそのキッカケを作った選手を罰する」という慣例は、そろそろ見直すべきだと思う。閻魔様が天国か地獄かを下す裁定は、人間の悪意のみを汲み取っている。

連勝ストップ

 おっと、ついアツくなりすぎた。通常モードに戻そう。
 初日7勝、2日目8勝、3日目9勝……「いつも通りのSG」と言えばそれまでだが、今節の下関水面も1号艇=インコースが圧倒的な強さを誇っている。特に今日はスタートがほぼほぼ揃い(3日間の風向き・風速が似たり寄ったりなのだ)、多くの選手の大型整備が当たってパワー相場も均等化し、横一線のイン選手を誰も攻めきれないという「金縛りパターン」が目立ったな。明日の勝負駆けデーは、さらに順繰りのイン10勝?? うーーん、そんな「選手の気合よりもコースの利」みたいな1日、穴党の私は許しませんっ!!

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 さてさて、昨日は速報形式で「3連勝アタック」を追いかけたが、今日はふたりの選手が「無傷の4連勝」にチャレンジした。第一の挑戦者は、10R4号艇の峰竜太。昨日は5コース&3コースから凄まじいまくり差しを連発した峰だったが、4カドの今日は不発。その最大の敗因は、スリット後に5コース石渡鉄兵11号機の伸びなりのツケマイを浴びたことだろう。峰が差しに構えた瞬間、モロに石渡の引き波が艇尾を直撃。さしもの異次元ターンも、この強烈な引き波でスピードを半減されてしまった。①113着で節間9・50。明日の峰は【7R5号艇&11R2号艇】で予選トップを目指す。

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 で、峰を引き波にハメたはずの石渡は、その後の展開がなく5着大敗。前半の4Rでも道中2番手から4着に後退した鉄兵は、節間6・00で明日はそれなりにタイトな勝負駆けとなってしまった。【10R4号艇】からどこまで得点を伸ばせるか。あるいは絶対エース11号機のパワーを持て余したままV戦線から去ってしまうのか。今日の気配的には「あと伸びっぽかった直線足が少し手前にきて、行き足のあたりが強めになった」という印象があるのだが、どうか。

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 次なる「4連勝アタック」は11R2号艇の寺田祥。今日の寺ショーはなんとなんとピストン2×リング4×シリンダケースの「セット交換」を敢行!! 初日のギヤケース&キャリアボデーでパワーの底上げに成功したというのに、もう一丁上のレベルを求めたわけだ。うーーーーん、やっぱこの長州侍は生粋の勝負師だな。
 で、このギャンブルは悪い方には出なかったようで、特訓でもスタート展示でもなかなかのスリット足だったし、展示タイム6秒75も今日の2番時計(トップはコンマ01差で石渡)。いざ本番もスリットからイン井口佳典を煽る勢いで出て行ったが、2コース差しは惜しくも届かず2着まで。峰同様に連勝は途切れたものの、ゴキゲンなスリット足といい道中で絡まれた羽野直也をパワー任せにねじ伏せたレース足といい、収穫の大きな2着だったはずだ。1112着は峰と同率の9・50だが、2着がある分だけ暫定トップに立った寺田。明日は【5R6号艇】の一発勝負で、峰よりも一足お先に予選トップの座を狙う(1着でも峰が1・1着なら2位ではある)。長州の特攻隊長がどんな勝負手を放つか、ピットアウトから目が離せないレースとお伝えしておこう。
 最後に、3日間36レースを観戦しての勝手なトータルパワー評価を記しておきます。

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独断パワー評価
★★★石渡鉄兵11号機=S【出A・行SS】
★★★新田雄史28号機=S【出SS・直A】
★★寺田 祥70号機=A+【出A・直S】
★菊地孝平21号機=A【出A・行A】
★仲谷颯仁59号機=A【出A・直A】
★片岡雅裕31号機=A【回S・直B】
★白井英治43号機=A【出A・行A】
★湯川浩司40号機=A【回B・行S】

 初日にも書いたが、石渡11号機のSSは今節の中での相対評価。宮島グラチャンの45号機ほど突出したモンスターパワーではないことを改めて明記しておきたい。

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 一方、新田の出足・回り足は文句なしのSSレベルか。スリットから自力で突き抜けるだけのパンチ力がない反面、道中の競り合いになったら面白いように他を圧倒して抜け出して行く。あえて一言で評すなら「余裕がありすぎる足」。つまりはイン戦でスリット同体なら百戦百勝の出足~行き足だと思っているのだが、さすがに予選トップは厳しいか。明日の【7R4号艇】の一発勝負で5号艇の峰を蹴散らし、とりあえず準優1号艇を目指す戦いとなるだろう。

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 同じく非凡な出足・回り足をフル稼働しているのが片岡雅裕だ。今日はイン逃げ&3コースまくり差しの連勝! 菊地孝平のジカまくりに連動した「ごっつあんマーク差し」ではあったが、出口から菊地を突き放していく押し足も強烈に見えた。この20点増しで一躍4位に浮上したマー君。パワーのみならず、近況は選手もノリノリの勢いでどんどん強くなっている印象があり、このまま天辺までの突き抜けも想定しておきたい。とりあえず、明日の【6R6号艇】がひとつの正念場ではあるな。
 その他の上位予備軍は、井口佳典(伸び型で合わせきれず、手前に寄せて引き締まったか)、松井繁(-10点でもまだまだ勝負駆け圏内。不気味な行き足に注意!)、峰竜太(パワーかスピードかいちばん分かりにくい)、中野次郎(これも不気味なレース足あり)などなど。この中堅上位あたりは大整備を施した面々も日替わりで出没しており、「予断を許さぬどんぐり状態」だと思っている。(photos/チャーリー池上、text/畠山)