BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今年もGPがはーじまったよーっ!

 さぁ~、今年もGPがはーじまーるよーっ!
 11Rがいよいよピットアウト、というとき、控室のほうから出てきた菊地孝平が、おどけて声をあげた。いや、あなたも出てるんですけど(笑)。トライアル2nd組の余裕、というわけではなく、出場選手張本人も、グランプリには胸躍らせている、ということだろう。もちろん1stから出場だったら、そんなこと言っていられないわけだが。
 菊地が“アリーナ席”に陣取るとほぼ同時にピットアウト。今年もGPが始まったぞ!

 幕開けは、池田浩二が逃げ切り、桐生順平が2着。まあ、順当な結果ではあった。池田はヘルメットをアタマの上に乗っけたまま、微妙な笑顔とともに控室へと消えていく。最後、桐生に差を詰められたあたりにいろいろ思うところはあったはずだ。ちなみに、ピットアウトしたあとに、「よーし、池田浩二!」と言いながら西山貴浩がアリーナに姿をあらわしている。しかし、Tシャツ姿で外に出てきたため、「さ、寒っ!」と控室に退散してしまった(笑)。池田浩二に言いつけるぞ!

 熱かったのは3番手争いだ。先行する遠藤エミを追い詰める毒島誠。その実績を思えば、初トライアルの遠藤にはシビアな局面だったと言うべきだろう。しかしながら、遠藤は毒島の猛追をしのいだ。2周1マーク、先マイを仕掛けられれば冷静に差し、3周1マークは内から迫る毒島に怯まず握ってしりぞけた。遠藤が出口でややキャビったこともあって、レース後の遠藤は申し訳なさそうに毒島に駆け寄って頭を下げているが、あの場面でまったく気後れする様子を見せなかったことが素晴らしい。トライアルの魔に惑わなかったのは立派なレースぶりだ。

 一方、毒島はひたすら悔しい。露骨に感情を表に出すわけではなく、コメントを求める報道陣や、労う土屋智則に対して明るく振舞いながら、時に肩をすくめたりして、5着にまで後退した痛みは明らかに心の底にはあるようなのだった。着替えを終え、即座にペラを外して調整室へ。足色的には遠藤と比べて劣勢にも見えていたので、調整の方向性を確認する意味も含めて、ペラを見ずにはいられなかったのだと思う。得点的に追い込まれた状況で、この超実力者が何を見せてくれるか。明日は気合の塊となって、調整にもレースにも臨むはずだ。

 12Rは白井英治が逃げ切った。磯部誠が4カドから伸びてきたが、制して先マイ。まくり差しに構えた磯部を封じた。もともと評価の高い22号機、前検後は不満そうなコメントも残してはいたが、今日一日かけた調整は満足のいくものだったようだ。全員が後輩である他の5者に対して「ごめん」と声をかける口調の力強さは、間違いなく納得のいくトライアル初戦だったことをあらわしていた。

 悔しいのは磯部だ。一瞬はアタマも見えたはずが、まくり差しは流れて外枠勢にふところを捉えられ、2マークもまくり差しの格好で逆転を狙ったが出口で舳先が浮いてしまった。ピットに戻ってヘルメットをとると、さすがに痛恨の表情があらわれる。目の前に、自らが頭を叩く格好になった石野貴之を見つけたため、すぐさま頭を下げているが(もちろん石野は気にするなと磯部の腕をぽんと叩いた)、それも含めてやや沈んだ表情のレース後なのであった。

 石野は6着大敗。11Rで上條暢嵩が6着で、大阪勢が揃ってシンガリ負けとなってしまった。“アリーナ”で観戦していた山崎郡は、3周2マークでも最後方だった石野を確認し、眉間にシワを寄せて渋い表情となっていた。敬愛すべき先輩たちが崖っぷちに立たされたことを、我がことのように悔やんだのである。

 ただ、石野自身はむしろサバサバとした様子でもあった。部品交換して臨んだように、足的には納得していなかったはず。磯部に叩かれたことでも、それを実感しただろう。ならば致し方ないと割り切れたということだろうか。何より、この男はここぞの勝負所に圧倒的な強さを発揮する。追い込まれても、それが逆にエネルギーとなって、渾身の一手を繰り出せる男である。後がない第2戦、抽選で6号艇を引いてしまった(というか緑しか残っていなかった)石野の勝負手が何になるのか楽しみだ。

 さて、枠番抽選。最初に抽選を行なったA組で、3番目に引いた遠藤エミが白を引いた! その瞬間、会場がドッとどよめく。紅一点の遠藤が白を引いたら、ということは関係者もどこか頭に思い描いていたはずで、それを現実のものとした遠藤にさらなる期待をかけるどよめきであっただろう。

 B組の1号艇は丸野一樹。今日は11R、12Rの3着がともに滋賀支部。そして明日はともに1号艇だ。丸野は目を丸くしながらニヤニヤ(笑)。実に素直に喜んでいたのであった。ただし、明日は1st最終戦で、いくら1号艇を引いたとて一筋縄ではいかないのである。勝負駆けとなる面々が、外枠であろうと黙って退くわけがないのである。トライアル2ndで待ち構える馬場先輩と合流するため、この1号艇は大きなチャンスであると同時に、絶対に油断してはならない好枠である。明日も緩めずに過ごす一日となろう。

 シリーズ戦。10Rの「シリーズ特別戦」は中島孝平が逃げ切り。実は昨年もシリーズ特別戦1号艇で、恵まれではあったが勝利をあげている。これは中島にとっては複雑な勝利では? ようするに2年連続次点(今年は賞金ランク20位も選考順位では19位)なのである。レース後はいつも通りに淡々と、感情を特にあらわさずに引き上げているが、決して特別な勝利ではないのだろうと推測した次第だ。

 8R、1マークでは2コースから差し切りながら、2マークで逆転されてしまった赤岩善生は、レース後速攻でモーターをバラバラにした。まあ、いつも言う通り、赤岩にとっては特別なことではないのだが、しかし今日の動きはかなり早かったのが少々意外であった。2着でも納得できる足色ではなかったということだろう。赤岩の手腕が明日生きるかどうか、注目したい。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)