チーム117
2015年11月のデビューから5年近く。脂の乗りきった117期が縦横無尽に暴れ回った。まず、全国のファンを「マアッ!?」と驚かせたのが6R3号艇の出口舞有子だ。枠なり3コースから突出したスタート(コンマ11)で人気の内2艇を叩き潰し、ワンパンチのまくり決着でGI水神祭を成し遂げた(別記事参照)。
GIデビュー戦の8月・多摩川レディチャンは33526434着と健闘しつつも勝ちきれなかったから、この1着は大きな自信にもなることだろう。相棒の51号機は三島リストでもAランクのお墨付き。昨日の時点では「数字ほどの手応えは……」と歯切れが悪かったようだが、しっかり手のうちに入れてさらなる活躍=予選突破まで突き進んでもらいたい。
もうひとりのサプライズ117は、9R6号艇の小池修平だ。大外枠ながら、その不気味な存在感は直前情報の段階から際立っていた。展示タイムが今日のトップタイの6秒63(もうひとりは同期の吉田裕平)! 5号艇の渡邉優美が6秒85だから、スリット同体からでも1マークまでに1艇身突き抜けるほどの大差だ。いざ実戦も、そのケタチの伸び足で軽々と優美を跳躍。さらに伸びなりぐんぐん絞めまくり、イン新開航を窮屈な先マイに追いやってから俊敏なまくり差しハンドルを突き刺した。前期B1から飛び級でA1昇級を果たした勢いと自信が、まんまスリット~1マークに反映された6コースまくり差しだったな。
当然のことながら、6号艇での1着10ポイントはV戦線において大きなアドバンテージでもある。その不気味すぎるストレート足も込み込みで、「今節の台風の目」とお伝えしてもいいだろう。ちなみに小池は117期のやまとチャンプ。1号艇=インコースの上田龍星を4カドからまくりきったジャイアントキラーの血が、初日からそぞろ騒ぎ出しているに違いない。
でもって、今日の117期の快進撃はこんなレベルじゃ終わらない。この期を高いレベルでけん引してきた真打・龍星も、無傷の連勝発進で“主席”としての貫録を示した。4号艇の3Rは②馬場剛のジカまくりに連動してのマーク差し。バック直線では馬場の内に舳先を強引に捩じ込み、2マークは非の打ちどころのない先マイで難敵を競り潰した。
返す刀で10R1号艇はインから仁王立ち。3コース中田達也がスリットから突出する勢いを見せたが、半端ない伸び返しでこのスリット攻勢を鎮圧して危なげなく逃げきった。
「勝てる隊形じゃなかった。この1着はエンジンのお陰です」
レース後に悪びれず吐露したように、相棒の49号機は三島リストでA+の優れもの。昨日の前検ではやたらと回り足の力強さが目立っていたのだが、いざ実戦の足色は「全部の足が強いバランス型」と見ていいだろう。選手の力量も加算すれば、もちろん有力なV候補だ。
さらに、117期の特攻隊長・吉田裕平のパワー気配も素晴らしい。前半5Rはイン逃げ圧勝というシンプルな決着ではあるが、スリットからの伸び返し~ターン出口で突き放すレース足~1分47秒8という今日イチの勝ち時計まで、「強い!!」と唸らせる横綱相撲だった。
後半11Rは5コースまくり差しが窮屈になって失速、後退。上條暢嵩の転覆もあって4番手のまま1周でレースを終えたが、2マーク差しのパワー&勢いを鑑みるに逆転の3着を獲りきるに充分な足色だったと思う。やまとリーグでは上田龍星を凌ぐトップ勝率7・71をマークしながら、事故パンでファイナル漏れ。同じく事故パンの兄・凌太郎とセミファイナルで丸々3周のデッドヒートを演じてみたり、去年のヤンダビではF2持ちながらゼロ台連発で予選トップに立ってみたり、何かとお騒がせな一面もある特攻隊長ではあるが、だからこそ見ていて飽きがこない“大物感”が随所ににじみ出ている。
「今回は、去年(準優3着)のリベンジのために来ました」
トップ級のレース足も含めて、このマニフェストが実現する可能性は低くはない、とお伝えしていいだろう。
総員5人の117期の初日成績をまとめておこう。
4901出口舞有子=3号艇1着
4907小池修平=6号艇1着
4908上田龍星=4号艇1着・1号艇1着
4910中村泰平=5号艇3着・2号艇4着
4914吉田裕平=1号艇1着・5号艇4着
ご覧のとおり、同期では中村泰平だけがババを踏んだというか、勝ちきれなかったわけだが、泰平の実戦足も十分に勝ち負けできるレベルだったと思う。先鋒・舞有子~大将・龍星まで個性的な精鋭が揃ったチーム117の活躍は、今日だけでは終わらない気してならない。
最後に、びわこ名物「中間整備モーター」の今日の成績を羅列しておこう。
2連対率上位の中間整備モーター
★44号機(32%)=松山将吾 1号艇3着・3号艇5着
★52号機(28%)=藤山翔大 2号艇1着
★65号機(38%)=高田ひかる 6号艇5着
サプライズ参戦・中間整備モーター!!
★11号機(22%)=大上卓人 ドリーム5号艇5着
★33号機(19%)=豊田健士郎 5号艇6着・4号艇6着
★34号機(19%)=渡邉 翼 5号艇2着
★39号機(19%)=塩崎桐加 5号艇3着
★49号機(23%)=中田達也 5号艇5着・3号艇2着
★67号機(20%)=松井洪弥 1号艇3着
この成績を健闘と見るか、期待外れと見るかは読者次第だ。9人でのべ12戦して1勝・2着2回・3着3回(3連率50%)という結果そのものは極めて平凡ではある。枠番と着順をそれぞれ合計すると【45枠→46着】とこれまた平凡。ゴルフに喩えるならワンオーバーで初日を終えた感じなのだが、私の勝手な感想としては「かなりの活躍」だったと思っている。
だって、これだけの低調機でワンオーバーなのである。普通、この数字どおりのモーターがこれだけ大挙して参戦したら、大半は素性どおりのゴンロクに這い回ることだろう。今日は豊田健士郎だけが箸にも棒にも掛からないレースになってしまったが、他の面々はそれなりに見せ場を作ったり、道中で競り勝ったり、つまりは「しっかりとレースができるだけの足色だった」と思っている。
のみならず、ただひとり勝ちきった藤山翔大や1Rで熾烈な2着争いを演じた渡邉翼×松山将吾のレース足は、十二分に予選突破を狙えるレベルに感じた。塩崎桐加、中田達也、松井洪弥のスリット足も然り。もちろん、どれも絶賛するには至らないのだが、それぞれの悲惨な数字よりは一枚も二枚も上手のパワーだと確信した次第だ。明日からも「こんな10%台のモーター、危なっかしくて買ってられん」などと軽視するファンは全国に多々いるはずで、人気の盲点=舟券的な妙味が随所に生まれる気がしてならない。私個人としても、この9人の枠番コースやスタート展示の気配、展示タイムなどを照らし合わせ、明日からもちょいと助兵衛な穴舟券をチマチマ買い続ける所存である。
あ、全体のモーター鑑定については明日あたりにアップするつもりだが、昨日の当欄を踏まえてお詫びをひとつ。
――今日、見事にピンピン連勝した関浩哉さま、昨日は『今節の群馬支部は「関よりもカネケン」のシリーズになる』などとすっとこどっこいな予言をしてすいませんでした。やっぱ関さまは強いし、実戦足もなかなかに素晴らしかったです~~ッ!!!!(photos/黒須田守、text/畠山)