まずはこの大会のお約束、団体戦の結果から。
紅組5-3白組
うん、今日の団体ブロック戦は、まんま【紅組の内枠シードが5回vs白組シード3回】だったから、結果的に順当なスコアに収まったと言えるだろう。実際には6Rと7Rで不利な外枠が勝利する「ブレーク」が発生しているのだが、痛み分けで大勢に影響なし。選手たちも我々も、「本当の勝負は、勝利ポイントがべらぼうに高い最終日の10~12R」と気づいており、特に初日あたりは口角泡を飛ばす必要のないささやかな鍔迫り合いとお伝えしておこう。
で、今節は実験的に【団体戦のチーム貢献度ポイント】を採点してみたい。各選手がどんだけ団体戦の勝利に貢献したかを数値化すれば、最終日に今大会の団体戦MVPや逆にA級戦犯が浮かび上がるという仕組み。私なりの勝手な採点ルールはこうだ。
★勝利ポイント=団体戦で勝ったチームの選手に1点。さらにブロック戦の4~6枠で勝ったチーム(いわゆるブレーク)の選手は+1点でトータル2点。ただし、チームが勝っても6着&事故などで不完走となった選手は0点。
★これに成績ポイント=「各選手の枠番-着順」を加算する。事故などで不完走となった選手は一律「7着」扱いとする。
たとえば、7R6号艇で1着&紅組ブレーク勝利となった三浦永理は、勝利ポイント2点+成績ポイント5点(6枠-1着)で初日は計7ポイント。また、6Rでいきなりフライングを切ってしまった向井美鈴は、勝利ポイント0点+成績ポイント-5点(2枠-7着)でトータルは-5ポイント。Fの査定が甘いようだが、あくまでも6日間を通じての貢献度が重要なので、この程度に留めたい。F持ちとなった向井であっても、今後の活躍次第では大逆転のMVPに輝く可能性もあるわけだ。
それから、今節は初日から団体戦2回乗りの選手が発生するが、細かいことは気にせずまんま加算するとしましょ(笑)。初日を終えての全選手の貢献度ポイントをどうぞ。
★団体戦(5~12R)のチーム貢献度ポイント
【レディース】
初日
高橋淳美 1点
寺田千恵 5点
道上千夏 -1点
水口由紀 0点
岩崎芳美 1点
海野ゆかり-1点
安達美帆 0点
向井美鈴 -5点
田口節子 1点
長嶋万記 4点(2走)
三浦永理 7点
大橋栄里佳 1点
落合直子 0点
藤崎小百合 1点
原加央理 0点
今井美亜 1点
深尾巴恵 1点
村上奈穂 3点
前田紗希 -2点
新田有理 1点
大山千広 -1点
小芦るり華 0点
實森美祐 1点
【ルーキーズ】
初日
山下流心 0点
鈴谷一平 1点
上田龍星 0点
中村泰平 1点
片岡大地 1点
吉川貴仁 4点
栗城 匠 2点
宮之原輝紀 4点
上村宏太 -2点
井上忠政 0点
田川大貴 -3点
宗行治哉 3点
河野主樹 1点
宇留田翔平 2点
高木圭大 -2点
梶山涼斗 -1点
高橋竜矢 -1点
宮田龍馬 2点
荒牧凪沙 0点
畑田汰一 1点(2走)
前田 滉 -3点
滝沢 崚 2点
定松勇樹 -1点
はい、今日のMVPは、やはり6コースから差し抜けて紅組勝利にも貢献した三浦永理の7ポイントで文句なし! 9Rの寺田千恵も6号艇(5コース)で激勝したが、団体戦はブレークできず5ポイントの2位に留まった。
一方、白組のトップは宮之原輝紀&吉川貴仁の118期コンビの4ポイント。ん? 12Rドリーム戦で凄まじい5コースまくり差しを決めた宮之原は当然として、吉川はナニをしたっけ? 実は集計した私も目を疑ったのだが(笑)、実にラッキーな4点をGETしてるだな。その6Rは②向井美鈴のフライングで、外枠の白組が労せずしてブレークポイント(2点)を獲得。さらに6号艇だった吉川は恵まれもあって4着となり、成績ポイントも2点追加。
つまりは恵まれの恵まれによる4点なのだが、運も実力のうち。我々が勝手に『ミスター団体戦』と呼んでいる吉川は、やはりこの大会の神様にこよなく愛されているのだろう(笑)。今節も“指定席”のファイナル入りを果たしてくれよ、貴仁クン!
さてさて、団体ポイントを離れて「レディースvsルーキーズ」というシンプルな戦いに目を移せば、今日のベストバウトは10Rの實森美祐vs畑田汰一で決まりだろう。1マークは③實森が握って④畑田が差しての2着争いに。2マークを回っても2艇がビッシリ舳先を揃えて優劣が付かなかったが、2周1マークで外・實森の鮮やかな強ツケマイが炸裂。その初動の早さとターンスピードは「おおっ!」と唸らせるほどで、前大会覇者の畑田が色褪せて見えるほどのド迫力だった。
が、そこからだ。強烈な引き波を喰らって大きくバランスを崩したように見えた畑田が、あっという間に艇を立て直していた。おそらく、非凡な体幹のなせる業。元よりサイドをあまり掛けない旋回でもあり、あれだけの致命的なツケマイを浴びながらも咄嗟に体重を移動して持ちこたえたのだろう。ダメージを最小限に抑えたから、そこから前進するスピードもまた速い。勝負あったと思った實森にジリジリと接近し、2周2マークは内から内へ、ちょっとありえないほどの鋭角ターンで再び實森の内に舳先を突き刺していた。
この違和感ありありの高速&超鋭角小回りターン、どこかしらで何度か見かけたぞ。と思い、すぐに浮かんだレーサーが桐生順平だった。もちろん、同支部だからという色眼鏡もあるだろうが、この半周の逆転劇はまさに順平のお家芸ではなかろうか。今節もまた、初日から畑田汰一という若者の得体の知れない能力を垣間見た気がしてならない。
3期下の後輩をズッポリ引き波にハメながら、よもやの逆転を喫した實森はさぞや悔しかったことだろう。「あの展開からどうして?」と驚いたかも知れない。ただ、先にも書いたが、そんな天才を一撃のツケマイで仕留めた實森もまた非凡な才能の持ち主だ。去年の晩夏、立て続けにフライングを切ってから成績が下落した實森が、今日のようなガチバトルを契機に新たな脱皮を遂げることを祈りたい。(photos/チャーリー池上、text/畠山)