BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――マスターズ世代も若者も

9R

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 スリットでは3分の2艇身ほど2コースの毒島誠にのぞかれたが、結局のところ、白井英治の逃げ切りは盤石だった。しっかり伸び返して、悠々と先マイ。課題とも思われたスローからの足は、起こしの部分はともかく、基本的には解消されたように思えた。今日は長くプロペラ調整に取り組んだ白井、その成果が出たと言っていいだろう。
 勝っても負けても難しい顔で引き上げてくる白井が、珍しく柔らかい表情を見せていた。出迎えた山口支部の後輩たちとの掛け合いも軽やか。ふと目もとが緩む瞬間も。確実に、手応えを得ているといった雰囲気だった。

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 2着は濱野谷憲吾。そう、登番3000番台がワンツーを決めて優勝戦進出。他は全員4000番台、しかも峰毒島という当代きっての実力者らをしりぞけたのは、マスターズ世代の猛者たちだった(白井もあと1月半ほどで45歳!)。淡々と振舞うレース後の濱野谷だったが、永井彪也に声を掛けられてヘルメットの奥の目が細くなっていた。そうそう、濱野谷は控室に戻るまでヘルメットを脱がないんですよね。今日はボート洗浄があったので、そのときに脱いではいたが、通常はヘルメット越しに表情を覗き込むのがやっと、という次第であります。
 それにしても、オーシャンVに続いてのSG優出! 憲吾の季節が来たか! 明日は外枠となるが、ファンタジスタの豪快なレースが見たい!

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 その濱野谷に競り負けた毒島誠は、さすがに何度も何度も首をひねる様子が。盟友・桐生順平と長く話し込んでいたわけだが、それはまるで愚痴をこぼすかのような雰囲気に見えるものだった。年末へ向けて、そろそろエンジン全開にしなければならない時期。優出はどうしても欲しいところだっただろう。明日の特別選抜でしっかりと稼ぎたいところですね。

10R

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 地元ワンツー! 平本真之が勝ち、池田浩二が2着。まずは蒲郡にとってはめでたい結果だったと言えるだろう。
 痺れたのは2マーク。若き羽野直也をねじ伏せるようなツケマイで、2番手をもぎ取った池田だ。それはまさに地元の意地! 気持ちのいい2番手強奪だった。
 これに大喜びだったのが西山貴浩。義兄弟のように仲のいい二人だ、西山の喜びようはよくわかる。でも、負けたのが後輩なんですけど(笑)。もちろん羽野をいたわりながらも、池田を称えていた西山。池田も「あざーす!」と何度も何度も繰り返して、西山と喜びを分かち合っていた。

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 平本は、1号艇をしっかり活かしたことで、どちらかといえば安堵の思いが強かったか。やはり西山に称えられて「あざっす!」。力強く、笑みを返している。蒲郡メモリアルといえば思い出すのは2010年のこと。平本はSG初出場で、初優出! あのときの初々しい若者が、準優1号艇を堂々と逃げ切り、レース後にたくましい顔つきで振舞っていることに感慨を覚えざるをえない。あのときは完全にチャレンジャーだった平本(6号艇でもあった)。明日は優勝を狙う一人として、超抜コンビに立ち向かう。

11R

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 原田幸哉はもう、笑いが止まらないといった雰囲気なのである。ピットに戻ってきたときからすでにニコニコ顔で、あのイン圧逃劇を思えば、本人も会心であろう。「緊張するかも」的なことを言っていた原田だが、しっかりいつも通りのレースができたこともまた、気分を高めてくれるものだったと思う。まあ、たまたま展示後にすれ違ったとき、この人は口笛を吹いていたんだけれども(笑)。緊張を紛らす口笛、なんて言い方もできるかもしれないが、どう見ても震えることなくこの舞台に立っている強心臓の男としか見えなかった。

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 もちろん、優勝戦1号艇となれば、また空気は変わるかもしれない。なにしろ元地元の蒲郡だ。故郷を捨てた、なんて言い方はしたくないが、いろいろな思いがこの水面には溶け込んでいるはずなのだ。明日もまた口笛は聞こえるのか。それは余裕の口笛なのか。優勝戦前、静まり返ったピットでしっかり耳をすまそう。

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 2着は丸野一樹! いやー、正直驚いている。ここに来れるかどうかもわからなかった1カ月前。本人も欠場を覚悟していたそうだ。それが、なんとか間に合って、日に日にレースぶりが冴えていき、そして優出! 決して万全な過程でなかったなかでSG初優出が実現してしまうのだから、ボートレースの神様は気まぐれである。いや、丸野の思いにご褒美を与えてくれたのかな。
 会見に向かう丸野を祝福すると、「まさかまさか」と笑った。明日もまさかまさかを起こせ! とは言えなかったけれども、丸野の初めての優勝戦をしっかりと目に焼き付けさせてもらおう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)