伏兵たちの舞・PART1
８Ｒ
①中田夕貴（埼玉） F+02
②大橋栄里佳（福岡）03
③高憧四季（大阪） 01
④富樫麗加（東京） 06
⑤長嶋万記（静岡） 08
⑥實森美佑（広島） 06
イン中田がフライングに散ったが、勝者の決まり手は「恵まれ」ではない。大橋が２コースからブッ差してバック突き抜けた。今節のエリカ様はまさにこの部分の足が強力。くるくる回れる回り足～ターン出口の押し足はシリーズのトップ級で、今日はこの足をさらにホーム追い風がバックアップした。
もちろん、明日のファイナルでもこのくるくる鬼足が生きる展開になれば、デビュー18年目にして悲願のデビュー初Ｖもありえるだろう。繰り返すが、エリカ様の決まり手が「恵まれ」ではなく「差し」だということは強調しておきたい。
２着もまた「恵まれ優出」ではなく、自力で勝ち取ったファイナル切符だった。124期、22歳の四季!! ３コースからキワのキワまで踏み込み、今日も迷いのない握りマイでイン中田を粉砕。その後も百戦錬磨・長嶋の追撃をシャットアウトして優勝戦へと続くゴールを駆け抜けた。掛け値なしの自力突破、おめでとう！
今節の６日間だけで、『高憧四季』の名はどれほど全国に知れ渡ったことか。はじめて苗字の読みが「タカハタ」であることを知った方も少なくないだろう。５コースから大まくり一撃、６コースから強烈なまくり差し２着などで大穴を演出した22歳が、明日も外コースからどんな攻めを見せてくれるか。失うもののない豪快なアタックに期待したい。
伏兵たちの舞・PART2
９Ｒ
①松尾夏海（香川） 09
②薮内瑞希（岡山） 13
③藤崎小百合（福岡）12
④五反田忍（大阪） 11
⑤平田さやか（東京）11
⑥島田なぎさ（埼玉）14
８Ｒまで吹き荒れていた追い風がやや収束した福岡水面。スタートは美しいまでの横一線で、しかもイン松尾の舳先だけがﾋｭｯと覗いている。センターからの攻めに定評がある藤崎、五反田も、さすがにこのスリットラインから仕掛けるのは難しかった。
松尾が１マークを先取りして独走態勢に。松尾の足は前検から軽快で、「シリーズでは全部の足が強めのバランス型」と評価している。明日も１号艇なら十二分に逃げきるだけのパワー。そうなるかどうかは、続く10Ｒの①松本晶恵が勝つか負けるかに委ねられた。
２番手も２コースから差した薮内がすんなり取りきったが、後続の先輩たちが黙っちゃいない。１周２マークでは五反田が、２周１マークでは藤崎がまだ経験の浅い後輩に「間違えろ、間違えろ」と嫌味をつけて詰め寄った。特に藤崎の切り返しは迫力満点だったが、薮内はそれらの罠を掻い潜ってファイナルチケットを入手した。見事な立ち回りだったし、その危機を回避するだけの強力なレース足も感じさせる２着だった。
１着・松尾、２着・薮内。
なんとなんと、８Ｒに続いてこちらのワンツーも優勝ゼロ。日に何十億円も売れるビッグな大会の準優で、４人連続で優勝未経験レーサーが優勝戦に突き進むとは、誰が予想できただろうか。この時点で、明日は超フレッシュなメンバー構成が約束された
仁王立ち
10Ｒ
①松本晶恵（群馬） 07
②高田ひかる（三重） 18
③堀之内紀代子（岡山）11
④山下友貴（静岡） 02
⑤櫻本あゆみ（群馬） 12
⑥川野芽唯（福岡） 14
最後のバトルは、すべて複数の優勝経験を誇る強豪カード。とりわけ松本が２度、川野が１度ティアラを戴冠しているのだから、９Ｒまでとは別次元のメンバー構成だ。
晶恵が逃げるか、ひかるがまくるか。これが最大の争点と思っていたファンは、私だけではないだろう。いざ実戦は、２コースのひかるが起こしで後手を踏んだ。代わって突出したスタートから一気に絞めまくったのが４カドの山下だ。その猛攻は熾烈を極めたが、カド受けの堀之内が舳先ひとつで徹底抗戦。さらに死に体に見えたひかるがズンズン伸び返し、玉突き状態でもつれ合う。
３艇がやり合っている間にインの晶恵はするする直進し、火の粉が降りかかる前に１マークを先取り。何事もなかったかのように独走状態に持ち込んだ。さすがの胆力、さすがのスピード。
２番手は窮屈ながらも一番差しに構えたひかるが取りきったかに見えたが、伸びに特化したモーターだけに出足がゼロに等しい。あっという間に外から差し抜けた櫻本がひかるを抜き去り、バックでは１－５態勢に。
ところが、今度はその櫻本が２マークの出口でバランスを逸して落水！ 後続の川野がそれを避けている間に、経済コースを通った堀之内が２番手に浮上した。いろいろあったが、終わってみれば松本晶恵の強さだけが際立つ準優ラストバトルだった。
初日の連勝にはじまり、一度も予選トップの座を明け渡すことなくファイナル１号艇ＧＥＴ。この一連の流れが、そのまま晶恵の格の違いを証明している。さらに、この大本命を脅かすであろう核弾頭ひかるも準優で消え去った。
もはや、明日の敵は風速６～７ｍと予測される大荒れ水面だけか。いや、出足系統もシリーズのトップ級だからして、それすらも問題にしない可能性は高い。
明日、この格上の女傑がすんなり逃げきったら、私の私的回顧はある一文だけで終わるかも知れない（笑）。
(photos/シギー中尾、text/畠山）
