電光石火
12R優勝戦
①今垣光太郎(福井)09
②上平真二(広島) 11
③田中信一郎(大阪)12
④天野晶夫(愛知) 31
⑤白井英治(山口) 14
⑥服部幸男(静岡) 16
うわっ、はやっ!!??
1マーク、上平の舳先があっという間にぶっ刺さった瞬間、ごくごく自然に「電光石火」という四字熟語が頭に浮かんだ。当欄でも、ポートレース界でも、非常に便利に使われてきた常套句でもあるのだが、今日の1マークほどごくごくナチュラルに浮かんだ「電光石火」は記憶にない。それくらい早くて速い2コース差しだった。
上平真二、48歳にしてGI初制覇。
これを聞いて、えっ?と驚いたファンも多いことだろう。上平は20年以上も前から、ずっと強いカテゴリの選手だ。勝率も隙あらば7点を超え、21年前の2001年(27歳)にはクラシックとダービーにも参戦している。
ただし、その後は13年ほどもSGとは無縁の選手生活に。私の脳内では同じ広島支部の前本泰和と重なる部分があり、「高い勝率を誇っているのに」とか「ちょい地味だけど」とか「一般戦では鬼だけど」とか、妙な前振りを付けてしまう選手になっていた。
そしてそして、「45歳を過ぎてメチャクチャ強くなった」という前振りも、前本とほとんど同じなのである。SG初優出は2年前のダービーだから、46歳になっての大出世(4着)。このマスターズも45歳の新入生では準優敗退だったが、その後は優出4着、優出5着ときて、今年はついに頂点まで昇りつめた。おそらくYOUTUBEの開設によって何らかの開眼があったと思われるが、そのあたりは本人自身が面白おかしくファンに伝えることだろう。
とにもかくにも電光石火だ。48歳で、プレミアムGI優勝戦という大舞台で、こんな凄まじいスピード差しを決められる男が、なぜ今まで記念のタイトルを獲れなかったのか。まったくもって不思議でならない。実に不思議なのだが、過去を詮索するより「いま、強くなっている」という事実をこそ、我々は重視すべきだろう。
一瞬にして差された大本命の光太郎は、レース後に「差されるとは思わなかった」と吐露している。田中信一郎も白井英治も、上平の神業の如きスピードに舌を巻いている。48歳の上平真二は、とてつもなく強い男なのだ。
記者席に戻ってから、当たり前に使っている「電光石火」の意味を調べてみた。その出自は「稲妻の光や、石を打ったときに出る火」とのことで、これは想像どおり。で、ここから転じて発生した意味としては、ふたつの解釈があるのだそうだ。
★動きや動作が非常に素早いこと。
★非常に短い時間。
うん、やっぱり。今日の1マークはそのどっちもがぴったり重なる、この上なく電光石火な差しだった。強い強い新名人誕生、おめでとう!(photos/シギー中尾、text/畠山)