前検日と比べると、やはり空気がピリッとした感がある。どの選手も調整に飛び回っており、表情が険しい選手も見受けられる。誰もがみな慌ただしく、喫煙所で一服している選手も煙草を吸い殻に入れればすぐさまペラ室なり水面なりに早足で向かっていく。昨日は「太った?」とにこやかに声をかけてきた白井英治も、眉間にシワを寄せながら水面へと降りていった。こちらが視界に入っているかどうかもわからないし、入っていたとしても関心は水面での自身の足色だけだろう。
整備室を覗くと、池田浩二が難しい顔で本体と向き合っていた。前検後のコメントはまさに“泣き”であり、もはやお手上げだといったような言葉も聞かれた。しかし、もちろん勝負を投げるわけがないのであって、ドリーム1回乗りで時間があることもあってか、本体整備に取り組んだという次第。1R発売中には整備を終えてモーターを装着、水面に降りていく構えを見せている。
ペラ室には言うまでもなく多くの選手が陣取っており、ハンマーを打ち下ろす金属音が響いている。かなり強く叩いていたのは、實森美祐。エース53号機を引き当てて注目されているわけだが、噴いているモーターだというのに、そんなに叩いて大乗なのだろうかと心配になってくるくらい、強力に叩いていた。實森は3Rに出走。レースを見ると、出てますね! ペラ調整がむしろハマったのではと思えるような足色であった。6コースから4着だったが、内のコースになったときの戦いぶりが楽しみだ。
オープニング1Rは守田俊介が逃げ切り。珍しく、というべきだろうか、レース後はひたすら頬を緩ませていて、なんだかゴキゲンなのであった。勝利後にこんなにニコニコする人だっけ? 馬場貴也との会話中も、気分の高揚が伝わってくるのであった。
2番手を競り合ったのは桐生順平と鎌倉涼。100期競り! 桐生は厳しい足色と見えたが、しのいで2着。出迎えた関東勢に、ハンドルを回す仕草をしながら「右へ右へ!」と苦笑していたが、外並走だった鎌倉に寄せていかなければ厳しかった、というようなお話だと思われる。
カポック脱ぎ場では、鎌倉がにこやかに桐生に声をかける。競り負けたのは悔しいだろうが、SGの舞台で同期と、しかも超一流の同期と競り合えたのは充実感にもつながったのではないかと思われた。
2Rは磯部誠が4カドまくり。西島義則が前付けし、3号艇の新田雄史が突っ張って、そして1号艇の菅章哉はインには入れず深い3コースだった。選手紹介でも「エンジンは厳しい」と言っていた磯部、にもかかわらずまくれたのは展開が向いた部分があったということだろう。ピットにあがってきた磯部はただただ苦笑いを浮かべて、出迎えた仲間の祝福に応えていたのであった。ツイてたツイてた、って感じ?
磯部の外から発進していた倉持莉々にも展開は向いたはずだったが、活かせず。道中は新田雄史にも激しく競り負ける格好となっている。初戦でSGの洗礼を受けた、ということになるか。その倉持にレース後寄り添ったのは、意外や西山貴浩だった。瓜生正義のエンジン吊りを終えて、近くにいた倉持に気になった点を伝えていたのだと思われる。SG出場というのは、最高レベルのレースを体験できることだけでなく、そこで戦っている先輩の声を聞けるという点が得難い糧になるのだと思う。西山の言葉は確実に倉持の栄養になっているはずだ。
なお、不完走失格の西島義則は、自力でレスキューを降りたものの、腕を押さえていたのが心配だ。地元SGだけに、なんとか節間完走を果たしてもらいたいものだが……。進入から盛り上げてもらうためにも。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)