トライアル2nd組は今日明日とレースを走らないわけだが、しかし6人が6人とも、慌ただしい時間を過ごしている。レースは2日後だが、少しものんびりしようという気配が見られないのだ。何しろ、石野貴之は選手紹介後すぐに水面に飛び出している! 望んでいた88号機を引いたからといって、ひとつも安心などしていない。この相棒を2日間で仕上げる! そんな気迫がうかがえてくる。
磯部誠と池田浩二は本体整備である。ドリーム戦に出走する選手が初日、朝から本体を割るのは珍しくなく、まさにそのトライアル2nd版ということになるか。時間があるからこそ、整備に時間を要する本体整備に取り掛かる。通常のドリーム組よりも丸2日、時間を与えられているわけだから、まずは本体を割ってみるというのはなるほどと納得させられる動きと思える。
峰竜太は外回り調整に取り組んでいる。これも初日の早い時間帯にはよく見かけるもので、磯部や池田とは目をつけた部分が違っているだけだろう。その後に本体を割るかどうかは別として、峰もまた早い段階から万全を期すべく、やれることをやり尽くし始めた、ということだ。
馬場貴也と茅原悠紀はプロペラ調整。仮に調整が失敗したとしても、いくらでもやり直す時間があるのがトライアル2nd組の強みだ。そう、攻めた調整を試すことができるのだ。これはやはりアドバンテージだろう。2人ともボートを下ろしていなかったので、まずはじっくりとペラと向き合う時間を設けたということか。
そんな具合に2nd組も精力的に動いているから、1st組との違いは一見すると何もないと言っていい。もちろん1st組は過酷なバトルの初戦に臨むため、誰もが懸命に調整を進めている。ようするに、レースがあろうがなかろうが、この最高峰バトルのためにとことん没頭し尽くすわけだ。
本体整備はまず菊地孝平。選手紹介後にピットに入った時点でもうモーターがボートに乗っていなかったから、今日はかなり早い段階で本体に手を入れ始めたということだろう。
1R発売中には山口剛がモーターをボートに装着したまま、本体だけ外して整備室に運び込んだ。もっとも、2R発売中にはふたたび装着する準備を始めていたから、大きな整備というわけではなかったのかも。ほかには土屋智則、深谷知博、今垣光太郎も本体を割っており、深谷と今垣は昨日に続いての整備で、パワー的に不安は拭い切れないといったところか。
早くから試運転を始めたのは片岡雅裕と毒島誠。毒島は今節に限らず、1R前にはボートが係留所に繋がれていることが多く、今日も同様。また、片岡はチャレンジカップで優勝戦1号艇の朝に水面を走っているのを見かけている。ふたりとも動き出しが早いタイプということだ。今日も同じように動いており、いつも通りの調整を進めているということになる。気持ちはトライアルに向けて高ぶっていても、やることが変わるわけではないというわけだ。
1号艇の桐生順平と濱野谷憲吾はペラ調整。これもいつも通りの姿だ。ちなみに、桐生はペラ調整室にいたが、濱野谷は整備室の隅に臨時に設けられたペラ調整所で作業をしていた。その臨時調整所は地面に段ボールが敷かれるかたちで設置されているのだが、環境に頓着しない様子にも見えて、どこか微笑ましくも感じられたのだった。
というわけで、非常に慌ただしい初日、というのはグランプリだろうが通常のSGだろうが変わらないわけである。住之江のピットは細長い構造だからということもあって、駆け足で移動する選手も実に多い。篠崎元志が走れば、ベテラン松井繁だって走る! このピットでは本当に多くの、走っている選手を見ることができるのであります。そう、シリーズ組も実に精力的に動いており、大挙60人が参戦するこの大会だから、慌ただしさはより増して感じられるというわけである。この空気を味わって、今年もグランプリが始まったのだと強く実感するのですね。
1R、石渡鉄兵が差し切り1着。今年のグランプリは断固たる差し切りで幕開け! 淡々と引き上げてきた石渡だが、ちょうどすれ違ったので会釈をしたら、ニッコリ! 鉄兵さん、ナイススマイル! 幸先いいスタートを切れて、まずは気分上々。さらに断固たる決意を見せてください!(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)