BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――沸いた!

●9R

 昨夜は重苦しい空気に包まれた地元勢が、今日は沸いた! 松尾夏海、優出! もうひとりの準優進出者である平山智加は11R出走なので、出迎えは可能。というわけで、全員がリフトに集結して、松尾を待ち構える。そして、最も盛り上がっていたのは、岩崎芳美だった(笑)。さすが陽気な岩崎さん! もちろん、香川勢もまた、満面の笑顔で松尾に祝福を送った。山川美由紀は、松尾を褒め称えるかのようなハイタッチ。平山はいい勢いをもらって11Rに臨めるとばかりに、松尾と笑顔を交わし合った。もちろん、松尾も最高の笑顔! レディースチャンピオン初優出を地元で飾れたこと、あるいは地元のビッグで優出できたことを心から誇っているように見えた。
 それにしてもF2で優出とは!「スタートはいつもより集中できているように思います」と会見での松尾。状況に怯むことなく、むしろより前向きになれているとはたいしたものだ。地元で、初のGⅠファイナルでも、震えるようなことはなさそうだ。

 勝った香川素子の周辺も、笑顔が絶えなかった。注目機39号機の威力を存分に引き出しての優出。それを順当と捉えることもできるが、一方で決して簡単なことでもない。香川には安堵の思いもあっただろうし、もちろん満足感もあっただろうし、というわけで周辺の笑みに波長を合わせるかのように、いい笑顔を見せるのであった。

 苛立ったような表情にも見えたのは鎌倉涼である。足的にはやはり評判だった鎌倉。予選道中は快調とも思えたが、優出できなかったのなら意味がない。しかも5着大敗では、表情を暗くするのも当然というものだ。その悔しがり方は、いわば格上のそれである。地元クイーンズクライマックスに向けて賞金を大きく上積みするチャンスを逃したことを考えても、レース後のその様子は必然というしかない。

●10R

 今度は福岡勢が沸いた! 10Rは福岡ワンツーだ。特に、レディースチャンピオン初優出となる藤崎小百合への祝福の輪がすごかった。もちろん福岡支部の面々は笑顔で声をかけるわけだが、高田ひかるが抱き着いたり、平高奈菜がダブルグーハイタッチで祝ったり、誰もが藤崎が優勝戦についに辿り着いたことにテンションを上げていたようだった。初出場からもう12年が経つが、今までなかなか結果を残してはこれなかった。というか、予選突破は12年多摩川大会のみ。レディースチャンピオンは苦戦の思い出ばかりだったわけだ。それがついに優出! 周囲も、藤崎自身も、そりゃもう笑顔笑顔でしょう! まずは、本当に優出おめでとうと言っておきたい。

 勝ったのは大山千広だ。19年の衝撃の優勝以来の優出ということになる。1号艇ということで、やはりまずは安堵の表情が見えたが、藤崎とはおおいに笑顔を交わし合っている。周囲も、藤崎に向けるのとはまた違った笑みで大山を称えており、実績を考えればそういうものだと思う。
 レースは、2コースと3コースがヘコんで壁なしのイン戦。しかししっかりと外を牽制しての逃げ切りはお見事だった。さすがとも言える。そういえば、初日のイン戦も2コースがヘコんで、堀之内紀代子のまくり差しを許して2着。ある意味、そのリベンジに成功した準優だったとも言える。大山の賞金ランクは昨日時点で34位。年末に向けて、この優出は非常に大きい。先々を見据えての気合という意味では、このメンバーでは最も入っているのではないかと思うがどうか。

●11R

 ここで沸いたのは、やはり広島勢だった。實森美祐、深い起こしにも動じず、逃げ切り快勝! 前付けがあってのイン逃げだから、価値が高い。師匠の角ひとみも、海野ゆかりも、ヒヤヒヤしながら見ていたと思われるが、だから實森を出迎える際には、自然とガッツポーズ! しかも二人が同時に右腕を掲げるという、ナイスコンビネーションだった。海野と角はひとつ前のレースでともに悔しい敗退を喫しているが、その思いをはるかに下の後輩に託すことになる。二人のサポートを得て、實森は明日も自然体で臨めるのではないか。

 そんな二人に祝福されれば、實森も自然と笑顔が浮かぶというものだ。控室に入る目前で待ち構えていたカメラマンにポーズを要求されたときも、海野と角は邪魔にならないようにと待機。そんな様子も微笑ましく、實森は実に初々しい笑顔をレンズに向けるのだった。

 その實森に頭を下げていたのは平山智加。5号艇から前付けに動いたことについて、対戦相手に礼を尽くすのはごく日常の光景。もちろん實森以外にも頭を下げていて、それは後輩に対しても同様ということだ。ただし、これはもちろんナイスファイト!なのである。道中も懸命に前を追って、優出への執念を見せた。進入から道中まで、すべてが意地を最大限に見せつける、素晴らしい走りだった! 皆に頭を下げた後は、露骨に顔を歪めていた平山。そう、2着までに入れなかったことは、心から悔しかった。地元で優出がかなわなかったことを、隠すことなく悔しがっていたのだ。

 しかし! 道中追って追って、諦めなかったのが奏功した。2着に入った櫻本あゆみが不良航法をとられたのだ。諦めずに追いまくって、3周2マークは気合の先マイを放って、3着に浮上したことで、繰り上がり優出! 繰り上がりということにはなるが、しかし平山が気持ちでもぎ取った優勝戦のシートと言うべきだろう。素晴らしい優出だ!
 優勝戦は繰り上がりということで6号艇ということになる。準優は5号艇で動いた。ということは、6号艇ならもちろん動くだろう。会見でも「地元だし行きます」と言っている(すんなり6コースのほうがいいのかなあ……と迷いも見せてはいました)。明日も平山がとびきりの気合を見せてくれると信じよう。

 櫻本は、伸びて締めたことで田口節子に影響を与えたことで、不良航法をとられた。レディースチャンピオン3年連続優出かと思いきや、賞典除外となってしまった。田口がかなり危ない場面があったので致し方ない裁定ではあるが、櫻本もまた優出に意地を見せたのだということは言っておきたい。もちろん反則についてはしっかり反省して、来年もまた、“変則連続優出”を目指したもらいたい。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)