BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――早い始動

 装着場のモニターでレースを観戦しようと発走を待ち構えていると、隣に丸野一樹が立った。「おはようございます!」。予選落ちを喫してしまったけれども、今朝も元気なマルちゃんだ。
 その横にすすっとやって来たのが中島孝平。先輩が横に立って、丸野が軽く頭を下げる。すると、中島は丸野の肩を抱いて、ポンポンポンと3度ばかり叩いた。そして、二人で目を細めてうなずき合う。

 ああっ、今ここに、賞金ランク17位と18位が揃い踏み! しかも予選落ちしてしまった17位と18位……。そう、今日と明日の2日間、最も首筋が寒い思いをする二人なのである。うなずき合ったのは、まさしくシンパシーというやつ。お互いの気持ちが最もわかり合っている組み合わせなのだ。そりゃあ、苦笑も浮かんでしまうわけである。
 もちろん、二人とも18位以内に残る可能性はおおいにある。それぞれの準優には現在賞金ランク16位以内の選手が複数いて、そのワンツーならばGP行きとなる公算はかなり高くなるのだ。準優を複雑な思いで見ることになる丸野と中島。そんななかでも、少しでも後続との差を広げておけるよう、今日明日の戦いに全力で臨んでもらいたい。

 準優組はというと、動き出しはいつものSGよりも早いように感じられた。1R展示前にピットに入ると、準優勢のボートの半数くらいが装着場になかったのだ。つまり、すでに着水し、試運転や調整を始めているということである。地元の田村隆信のボートも係留所にあるようで、装着場に見当たらず。田村自身はペラ調整所に陣取っていて、調整と試運転の繰り返しに励んでいるようだった。

 その様子を眺めていると、係留所から王者登場。松井繁も、早くもボートを下ろしている。手にしていたのは白いプロペラ。係留所で回転調整を行なうための、共用のプロペラである。所定の場所に返却すると、そのままペラ調整。そして、一区切りつけると係留所まで走っていってペラ装着。試運転へと飛び出していった。朝から精力的な王者である。

 装着場の隅では、片岡雅裕がJLCのインタビューを受けていた。ようするに調整作業等にそれほど忙しく動いているわけではないのだろう、と思っていたが、装着場を眺めると、片岡のボートはすでにないのであった。賞金ランク6位以内を死守するためにも逃げ切りたい準優。片岡もまた、早くも着水しているのだ。他の準優1号艇、石野貴之と山口剛のボートは装着場にあったから、1号艇組で最も早い動き出しということになろう。その合間に、快くカメラの前に立つあたり、好漢マーくんである。

 逆転GP行きを目指す関浩哉は、2R発売中に水面へと降りていった。関のボートがあったあたりにカメラマンが集中していたのだが、関はカメラマンたちに気を遣って、ボートをリフトのほうに移動してからペラを装着していた。ただ、表情は普段に比べて、ややカタめに映った。関にとって、デビュー以来最大の勝負どころといっても過言ではない、初出場を懸けるグランプリ勝負駆け。チャンスは充分と思えるだけに、なお気合と緊張感は高まっていることだろう。内枠に賞金ランク1位と2位が並ぶ12R3号艇。悔いのない攻撃を繰り出したいところだ。

 同支部の先輩・椎名豊は、本体整備を行なっていた。すでにグランプリ当確、準優は6号艇と、わりと気楽に臨める準優ではあるが、優出を目指す思いに揺らぎはひとつもないということだ。仕上がれば6コースでもまったく侮れない男だけに、この整備の効果が気になるところ。もっとも、やはり関に比べればリラックスした様子は見えて、桐生順平と談笑しているところも見かけている。予選トップだったオーシャンカップよりは、やはり平常心で戦えることだろう。

 女子は予選最終日。1Rでは三浦永理が道中ずるずると番手を下げて、結局6着となってしまった。優出が厳しい状況となってしまったこともあって、レースからあがってきた三浦の表情はやはりカタかった。後半5Rは1号艇。初代クイーンズクライマックス覇者の意地を見せたいところ。

 一方、平山智加が2着で得点率6位に浮上した。序盤に大きい着を並べたところから、ここまで巻き返してきたこともあって、レース後はさらに力強い表情となっていた。後半9Rはまさしく勝負駆け。気合の走りを見せてくれるはずだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)