BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――通常と違う前検

 グランプリを走った選手がこの舞台にいる! ほんの10日ほど前、大村でたしかに最高峰の戦いをしていた遠藤エミ。それを目の当たりにしたのも感慨深いことだったが、その選手が次節に女子最高峰の舞台に立つことの、なんと感慨深きことか。グランプリシリーズを走り、それを目の当たりにしていた守屋美穂はもちろん、ここで剣を交えるクライマックス組や、遠藤を今日迎えたシリーズ組も、おおいに刺激を受けていることだろう。ぜひとも遠藤に続いてほしい!
 というわけで、堂々の賞金ランクトップ(しかも年間賞金女王は確定している)として住之江にやって来た遠藤。すでにお伝えしたとおり、“三島漏れ”モーターを引いたわけだが、前検航走後は整備室に入って、本体整備である。今日得た感覚を素早く調整に反映させようとするあたり、短期決戦の心得がある、というべきか。

 そして、守屋美穂もまた、本体を外していた。守屋もまた“三島漏れ”モーターを手にしたのだが、実は34号機は、三島が上位には入らないけど見るべきところはあると評価している“裏三島”モーターだったりする。記者会見でのコメントもそこまで悪くはなかったし、香川素子が「守屋さんが良かった」と証言してもいるのだが、守屋もまた本体に手をつけたわけだ。今日は乗り始めは良かったものの、試運転で乗っているうちに違和感が生まれてきたようだから、その原因を探るという意味もあるのかも。

 そう、三島のS評価68号機を引いた香川素子は、今日のところは景気のいいコメントを会見では出さなかった。むしろ守屋のほうを評価していたのだ。
 クライマックス組の前検は、通常の前検とはちょいと違う点がある。まず、モーター抽選が2時間ほど前倒しされているから、試運転を始めた時間帯も前倒しされている。そして、前検航走は8R発売中(11R組)と9R発売中(12R組)に行なわれており、試運転タイムからものの数十分で前検航走を走る通常の前検よりも試運転タイムがたっぷりと与えられているのだ。そして、通常は前検航走終了後はボートを引き上げてもう乗ることはできないが、クライマックス組はシリーズ組の試運転に混じってさらに乗ることができるのである。香川は今日、前検航走後も試運転! エース機たる手応えを、今日のところはまだ得られていないのは明らかだ。

 もう一人、前検航走後も試運転をしていたのが、細川裕子。記者会見では泣きのコメントも出ており、どうやら今ひとつだった様子。少しでも上積みをはかるということもあるだろうし、ペラを試すという意味もあったのだろう。とにもかくにも、クライマックス組で最後まで水面にいたのが細川だったということ。これが足色にどんな変化をもたらすか。

 今回、注目ポイントのひとつは高田ひかると堀之内紀代子の伸びコンビがどれだけトライアルを賑わすか、であろう。高田はペラ調整をもちろん早くから始めていたわけだが、前検航走後も続けている。普段の前検日に比べてペラ調整に割ける時間も長いから、まずは明日までに可能な限り、自身の調整を進めたいところだろう。

 チルトの女王・堀之内は、今日は1度で調整し、前検航走にも臨んでいる。しかし、堀之内の表情はとにかく暗い。まったくもって、動いていないというのだ。1度で行ったのは、10月のびわこでピンを並べ優勝したときが1度で、そのイメージで臨んだとのこと。しかし、これがそのときの仕上がりには程遠く、ありとあらゆるパターンを試さなければならなくなりそうだ。もちろん住之江のマックス=1・5度も視野に入れて、前検航走後も忙しく動いた。明日も一日、正解を探す旅を続けることになるのだろう。

 シリーズでは大瀧明日香が2日目連勝! 3コースまくり、2コースまくりと、まくり連発だ。8R、1マークでジカまくりを放った瞬間、ピットでは「おおっ!」と驚嘆の声があがっている。レース後の大瀧はといえば、控室へ引き上げる際には淡々としていたものだが、まくり連勝で会心の思いは胸の内にあるはずだ。

 まくられた中田夕貴だが、ここはよく2着に残したと言うべきだろう。意表をつかれた部分もあるはずだが、冷静に立ち回っての連対確保。負け方としては悔しいもののはずで、レース後はやや複雑な表情にはなっていたが、この時点ではオール2連対もキープ(12Rは6着……)。それなりの手応えはあるはずである。で、実は大瀧も中田も、三島シリーズ3基からは漏れていたけど、もしもう数基取り上げるのなら入っていただろう“裏三島”だったりします。二人ともしっかり仕上げてきているということだろう。明日からも注目!(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)