●トライアル11R組
まず気になるのは守屋美穂だ。三島がA+と評価し、福岡番記者の西日本スポーツ森大輔記者もS評価の14号機を引いたわけだが、なんと、前検航走を終えたあとに本体を割った! 交換などの状況についてはわからないが、まさか前検の段階でモーターを分解するとはまったく予想外。記者会見では悪くないコメントを出しているだけに、その狙いがいまひとつ不明。声をかけられるチャンスがあれば、聞いてみたいところだ。
小野生奈は「引きたくなかった」16号機を引いて、モーター抽選では愕然とするシーンがあって、ペラを相当に叩いていたという目撃情報があるのだが(池上カメラマン)、会見のコメントからは感触は悪くなさそう。前検航走からあがってきて、平山智加と感触を話し合っていたが、表情はむしろ明るく見えたのだった。平山は、会見では「可もなく不可もなく」と語っている。
1号艇で人気を集めそうな平高奈菜は、かなり自然体で臨んでいる印象。彼女自身の調整作業よりも、10Rで転覆した岩崎芳美のボートやモーターの引き上げや転覆整備を率先しているところのほうが強く記憶に残るくらいだった。格上の選手が後輩たちを差し置いて駆け回っている姿が印象に残った、ということですね。会見で語ったところによると、前検の手応えは悪くなさそうだった。
寺田千恵、海野ゆかりの両ベテランは、やはり貫禄がある。大舞台でも慌てず騒がずのマイペースといった感じで、前検航走後もまったく浮足立った様子がない。ただ、三島S評価の21号機を引いた海野が、前検航走から引き揚げてくるときの表情があまり冴えないように見えたのが気がかりではあった。
●トライアル12R組
ペラ調整所からガッツンガッツン叩いている音が、それこそ地響きするくらいまでに聞こえてきたので、ふと目をやると、遠藤エミがハンマーを振るっているところなのであった。まだ完全に叩き変えてはいないとのことだったが、前検航走前に相当に強くペラを叩いた。もちろん走った後もペラ調整室に姿はあり、今日のうちに叩き切って、明日からは微調整という腹積もりか。今年最後の大一番、悔いのないようにペラを叩きたいという気持ちが伝わってくる。
西村美智子もかなり大きく叩いていて、こちらは前検航走を走る前に叩き変えたとか。初のクイクラだが気負いは感じられず、むしろついに辿り着いたこの場を楽しんでいるようにすら見える。それがどう出るかはなんとも言えないが、明日もいいメンタルで仕上げに取り掛かれそう。
同じく初出場の渡邉優美は、前検航走後にキャブレターのあたりを触っていた。その後、遠目にはどの部品かは判別できなかったが、細かい部分の調整をしていた。整備士さんにも相談していた様子で、少々気になるところがあったのかも。
細川裕子、大山千広はひとまず前検航走後は特に大きな動きを見せていない。大山は会見後、モーターの近況が今ひとつという情報を受けて「一からやり直す」と言っている。明日は朝からモーターとも向き合う姿が見られるか。
ピットで評判になっているのは田口節子。遠藤が会見で「田口さんにやられる感じ」とも言っており、気配はかなり良かったようだ。プロペラも、この形にしたいと考えてきたものと同じだったようで、大きな調整は必要なさそう。田口といえば、大きなレースで好モーターを引いては調整に苦労していた姿ばかり見てきたが、今節は今のところはその心配はなさそうだ。福岡といえば、今年秋に女子初の24場全優勝を達成した地。ようするにここを勝てずにコンプリートできず、苦労をしてきたというわけなのだが、しかしその優勝で流れが変わったはず。なかなか勝てなかった福岡、しかし一気に2連続Vなんてことがあっても不思議ではなさそうだぞ。
●シリーズ組
6年以上ぶりに福岡を走る松尾夏海が小池礼乃と水面を見ながら話していた、とシリーズ前検の記事に書いた。今日、まるでデジャヴのように同様のシーンがあった。田口節子が小池礼乃と水面を見ながら話し込んでいたのだ。やはり乗り方とかスタートの見え方とかのアドバイスを受けていたのか? それにしても、福岡支部は他にもたくさん出場しているのに、なぜ小池なのか。小池こそ、博多水面を知り尽くしているということ?
トライアル組にとって、先に走っているシリーズ組の存在は、今節の情報を持っているということもあって、心強い存在となりうるだろう。寺田千恵が話し込んでいたのは堀之内紀代子。岡山支部のシリーズ主軸の堀之内から得られる話が、寺田にとってパワーになるだろう。岡山支部の女子選手たちは、レース後に“反省会”のように輪になって話し込んでいる。その中心は寺田であることが多いが、堀之内もそういう存在になっている。岡山の精神的支柱として、今節はトライアル組にもシリーズ組にも影響を与えていくかも。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)