BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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芦屋レディースvsルーキーズTOPICS 初日

野武士・才一郎の決断

 さあ、今年もまた「団体戦」または「紅白戦」などと呼ばれる特殊形態の一般シリーズが開幕した。私・畠山は10回目に至るこの大会を全日・全レース生観戦してきたのだが、舟券的になかなかに難しい大会ではある。 
「あんたたち、ホントに団体戦のこと考えて走ってる? チームのために貢献しようと思ってる?」
 みたいな疑惑がふつふつと湧いてくるのだな。私だけの考えをざっくり伝えると「最終日10Rからの点増しレースは、当該選手も外野選手もソロバン弾いてガチ勝負モード。それまでの1点だけの増減はほとんどの選手が得点の推移に興味がなく、フツーのレース展開とあまり変わらない」ってな感じだと思っている。

 それでも、10回目ともなると全国の選手間にもソコソコ浸透し、「このシリーズって他の一般戦とは違うな」と認知されている気がするのだがどうか。で、今日の団体戦のオープニング5Rは故意か偶然か、なかなかに団体戦らしい1マークが出現したのである。ちょいと再現してみよう。

5R
①西橋奈未(紅組) 25
②北村寧々(紅組)    32
③石丸小槙(紅組)    36
④原田才一郎(白組)18
⑤廣瀬篤哉(白組)    15
⑥中野仁照(白組)    13

 まず、↑こんなスリット隊形だからして、4カド才一郎がドカ遅れの石丸らを叩くのは当然の一手。だがしかし、インの西橋だけはやや凹みながらも、スリットからしっかり伸び返して迎撃の姿勢を整えている。元より才一郎はゴリゴリ攻めるより臨機応変に立ち回るタイプ。風はまくれば流れるホーム追い風。いつものクレバーな才一郎なら「西橋を行かしてのまくり差し」を選んだだろうし、実際にも1着を獲るならそれが正着だったはず。

 だがしかし、才一郎はそんなテクニカルな戦法には目もくれず、握りっぱなしで西橋に向かって行った。ウルトラ強引な全速ツケマイ! これは団体戦だからして、私の耳にはこんな才一郎の叫びが響き渡った。
「敵の大将・西橋さえ討ち取れば怖いものなし! オレが首を討つから、後続はオレを差してでも前に突き進めーー!!」

 その号令に従うように、先輩の廣瀬篤哉~後輩の中野仁照がドカドカと差し抜けて行く。あまりに男前な猛攻に、私は目を細めてこうつぶやいていた。
 こ、これが団体戦ぢゃーー!!
 実際の才一郎が、どこまで団体戦を意識していたか、まるで分らないけれど……。

 はい、ってなわけで、今日の団体ブロック戦は白組が口開け5Rから優勢をキープし続けた。

 ★初日の団体ポイント

  紅組35白組

 

明日のブライトホース

5093浦野 海(福岡)
  初日【1R1着・11R6着】
  2日目【7R6号艇】

 初日の1R、3コースから伸びなり豪快にまくりきった。相棒は芦屋の絶対エースにして三島敬一郎の第一席・41号機。後半11Rは絶好の展開を捕えきれず6着に沈んだが、やはり今節、もっとも気になるレーサーのひとりと断言していいだろう。正直、昨日まで浦野クンに疎かった私は、あれこれネットの情報をかき集めてみた。

 小学校の頃に父親とともにボートレース場に足を踏み入れた浦野少年は、でっかいエンジン音とモンキーターンを目の当たりして「ボートレーサーになる!」と固く心に決めた。その後は陸上とキックボクシングに精を出したが、それもこれもボートレーサーになるための踏み台でしかなかった。
 一途な思いを胸に秘め、15歳で124期の養成所受験にアタック。見事に一発合格して17歳になったばかりの2019年5月16日、この芦屋水面でプロデビューを果たした(6着)。養成所リーグの成績は5・66、4優出0V。同期は天才と謳われた末永和也や前田翔、高憧四季など多彩な顔ぶれで、今節も中島秀治、佐藤航といった有望株が参戦している。そんな面々に比べれば現状はやや見劣る浦野クンだが、若さ=超抜エネルギー。まだ20歳という年齢は、そのまま未来の可能性に直結する数字と思っていいだろう。

 デビュー初勝利は74走目。ここまで、今日の1勝も含めて全32勝しか挙げていない浦野クンだが、サプライズな資質も秘めている。21年8月23日、デビューからわずか2年3カ月で初優出。19歳という年齢で、新人にとって難水面と言われる鳴門で、20%台のモーターでファイナル3号艇をGETしたのだから恐れ入る。その晴れ舞台は4カドから攻めきれずに5着と敗れたが、底知れない資質を垣間見せた浦野クンだった。

「僕のほうがスピードがあるので、握って攻めました」
 今日の1R、勝利者インタビューで不敵な笑みを浮かべながら言い放った。同じ福岡支部、3歳年上で2期後輩の②江藤敦宏が先攻めしようとしたが、ターンスピードで圧倒した、と。芦屋のフレッシュルーキーは、なかなかのビッグマウスでもあるようだ。最後には、こんな言葉も発している。
「個人戦で優勝して、白組に貢献できるよう頑張ります!」
 後半の6着の後には出なかったセリフかも知れないけれど(笑)、その心意気やよし。明日の7R6号艇という試練の枠で、有言実行の走りを見せてもらいたい。相棒41号機は間違いなく克服できるだけの能力を持っているのだから。(photos/チャーリー池上、text/畠山)