BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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若松マスターズTOPICS 3日目

インファイターの逆襲

 

「マスターズの華」と呼ぶべき前付け軍団が、3日目になって縦横無尽に暴れはじめた。まずは『安芸の闘将』西島義則だ。西島は初日7Rにうっかり寺田千恵(転覆)のエンジンを突いて不良航法に。マイナス10点の借金を抱え、2日目にして準優へ赤信号が点灯してしまった。
 だがしかし、この男に諦念の二文字はない。今日の開幕戦は5号艇のピットからいつも通りオラオラのモンキー進軍。あっと言う間に2コースまで侵攻し、100mを切る起こしでも怯まずコンマ04!!でイン坂口周(コンマ19)を出し抜き、情け容赦のカケラもないジカまくりで一気に叩き潰した。その直後に3コース仲口博崇のマーク差し(=決まり手は「まくり」)を浴びて2着ではあったが、このレースの演出家は間違いなく西島だった。その質の高さを思えば、「名匠」と呼んでもいいだろう。

 でもって、次なる5Rのシナリオもエグイの一語。2号艇だからフツーに穏やかな2コースかと思いきや、とんでもない飛び道具を用意していた。ピット離れ。昨日からバナレ仕様を試していたらしい西島は、2号艇というもっとも効果的な枠で集中砲火。スコーーンと飛び出して①田中信一郎の前を遮った。オレンジブイを回って完全に2-1の隊列だ。
 が、百戦錬磨・信一郎も負けてはいない。獲られたら獲り返せ。西島が前方を見ている間にぶおんとエンジンを噴かし、西島の周りをぐるり180度回ってインコースに収まった。西島にしては脇が甘かった? いや、私が思うに、この反撃も織り込み済みだったはずだ。インを奪い返すため早々と舳先をスタート方面に向けた信一郎は、ただひとりグングン深くなる。一方の西島は悠々とピット方向に艇を流している。西島のバナレ作戦は不発のようでいて、信一郎に強烈なボディーブローを叩き込んでいた。

 最終の起こし位置は……イン信一郎80mvs西島120m! 有り余る助走を得た西島は、スリットからグイグイ伸びて信一郎を圧迫。「信さん、あんたもジカでまくるけぇのぉ」と煽りつつ、信一郎が握って応戦した瞬間にスッと差しに構えた。絵に描いたようなズッポリの2コース差し!
 で、このレースも道中で逆転されて2着に甘んじた西島だが、【監督・脚本/西島義則、主演/田中信一郎】というエンドロールを流したいようなスリリングな名作だったな(笑)。V戦線とは無縁のレースでここまで暴れまくる61歳……同い年の私・畠山はその不屈の闘争心にただただひれ伏すばかりだ。

 それから、『赤城の鬼軍曹』江口晃生も3Rで凄まじいインファイトを魅せつけた。まずは4号艇のピットから、有無を言わせぬオラオラ前付け。スタート展示⇔本番でさまざまな駆け引きを繰り出す西島とは違って、愚直なまでに前に前に突撃するのが江口という男。
 覚悟を決めてインを主張する①古結宏とともに2艇だけがずんずん深くなり、起こし位置は90m前後。これはもちろん、ボクシングでいうところの「江口の距離」だ。コンマ14がいっぱいいっぱいだったイン古結に対し、鋭い出足でコンマ09まで踏み込んだ江口が一撃の鋭角フックで人気の古結をノックアウトした。赤信号が点った西島とは裏腹に、58歳の鬼軍曹は貴重な10点を加算して予選7・00までポイントアップ。くっきりと準優の姿が見えてきた。

 それからそれから、『近江の特攻隊長』吉川昭男も6Rでガッチリ10点を取りきった。インから②立間充宏に差されたかに見えたが、2マークは敵の脇腹をえぐるようなスピードパンチで「抜き」の1着。予選5・50でまだ準優圏内には届いていないものの、明日の勝負駆けに弾みがつく逆転のKO劇だった。明日の昭男さんは【4R3号艇】の一発勝負。でもって、5号艇には『赤城の鬼軍曹』も編成されている。うむ、このレースの内水域は、間違いなく足を止めての接近戦になることだろう。

 さて、西島、江口、昭男さんがオール2連対の大活躍を見せる中、今日も今日とて重い着順に沈んだのが『暗黒街のレジェンド(笑)』今村暢孝だ。初日からまさかの5655着。地元で気合パンパンなのに、相棒の47号機は下馬評の高い銘柄モーターなのに、どっちも空回りしたまま準優へ赤信号が点灯してしまった。
 主たる敗因はまったく分からないが、西島同様にこのインファイターの心が折れることは200%ありえない。明日からの3日間、どこかしらのレースでズドーーーン頭突き抜けで穴配当を演出する、と予言しておこう。

 今日は超個性派にスポットを当ててみたが、3日目を終えてもV戦線の行方はかなり混沌としている。現時点のファンの予想もさぞかし割れることだろう。やはり地元の瓜生正義が有利なのか、3日目終了時で暫定トップの中岡正彦(明日は【7R2号艇】の1回乗り!)がこのまま逃げきるのか、はたまた前出のインファイターたちが大波乱を引き起こすのか。

 で、伸びフェチの私の脳内に浮かぶ顔ぶれは、井口佳典、中澤和志、魚谷智之、平尾崇典の「ハイパー4人衆」だ(と、ここまで書いた直後の11Rで⑤魚谷が5着大敗。安定板の影響があったかどうか……)。とにかく、準優・優勝戦の勝負どころで自慢のパンチ力が炸裂する、と踏んでいるのだがどうか。

 だとするなら、できれば彼らには1号艇ではなくセンター枠あたりで暴れてほしい、なんて思うのは私だけではないだろう。例年よりもはるかに荒れ続けている今シリーズ、最後の最後もインファイター×バイパー軍団が適材適所に配置される、超スリリングな優勝戦になってもらいたい。(photos/シギー中尾、text/畠山)