BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――終盤あたりの風景

 前半記事では王者のことしか書かなかったので、広く浅くになっちゃうけど、できるだけ多くの選手に触れていこう。
 8Rを終えた田村隆信が、速攻で整備室へと飛び込んでいる。初戦4着で、その後は5着連発。準優行きは絶望的ではあるが、このままでは終われないと整備に取り掛かったわけだ。どうやらセット交換とキャリアボデー交換をふたたび行なった様子。

 その8Rで1号艇と2号艇だった愛知コンビ=伊藤誠二と天野晶夫が、着替えを終えて装着場に出てくると、ボート回りの整理をしながら長話。どうやら8Rの感想戦だったようなのだが、内容自体はぜんぜん聞こえてこなかった。

 やがて、ここに後藤正宗も加わる。東海勢揃い踏みですね。ベテランということは、もう長い付き合いであるということでもある。かなりリラックスした雰囲気に見えたのだった。

 3R1回乗りだった江口晃生は、その後はペラ調整に時間を費やして、9R終了後の2便で帰宿している。その前、モーターを格納した江口は、控室へ戻る途上でふと足を止めて、自身のボートのもとに歩み寄っている。何するんかなーと見ていたら、モーターとハンドルをつなぐワイヤーの先端を操縦席のほうに押し込んでいた。そう、モーターなしのボートの近くを通らざるをえないとき、けっこう気になるんです。飛び出たワイヤー。絶対触っちゃいかんとボートから離れて歩こうとすると、その向かいにあったボートのワイヤーに触りそうになったりして。江口のように操縦席内に押し込む選手もときどきいるんですよね。

 9Rは赤岩善生が逃げ切り。控室に戻り、勝利者インタビューに向かう際、「クロちゃん、ありがとう」と声をあげた。俺か? 赤岩にはクロちゃんって呼ばれることあるし。でもありがとうって……赤岩が声をかけたのは黒崎竜也でした(笑)。エンジン吊りのお礼ですね。黒崎は「ナイス!」と声をあげて、赤岩を称えた。

 この黒崎ってけっこう声が大きくて、10Rのエンジン吊りに向かう際には「惜しかったーっ!」と声をあげた。同支部の後輩である井口佳典のまくり差しがいったん決まったと見えたのだが、2マークで1号艇の吉川元浩が差し返した10R。井口が勝ったと思ったのに……と心の声がストレートに出たんでしょうね。黒崎とピットで会うのはいつ以来か、といった感じなのだが、こんなに素直な方だったとは(笑)。

 9R2着の柴田光は、とにかくニコニコ。これで勝負駆けもつながった。師匠である江口晃生に声をかけられると、さらにニコニコ。ものすごく人の好さそうな雰囲気を醸し出しているのである。実際、ものすごく柔らかな人で、すれ違えば笑顔で挨拶をしてくれる。その後はゴキゲンにプロペラ修正に向かうのだった。

 9Rで苦笑い連発は佐藤大介。エンジン吊りに駆け付けた仲口博崇とともに、首を傾げながらレースを振り返る。

 そうそう、このレースは愛知勢が2人いたわけだが、最も登番が上の仲口は佐藤のエンジン吊りのほうに参加している。今回に限らず同支部が同じレースの時、師弟とか同じグループとかそういうのがない限り、先輩選手のほうにその支部の古株が参加していることが多いような気がしますね。それにしても仲口がマスターズで愛知勢の登番最上位とは……。

 そうこうしているうちに、馬袋義則、古結宏、山本隆幸の兵庫会議を目撃。さらに魚谷智之、吉川元浩がいるわけだから、なかなかの大勢力である。山本が着ているTシャツの背中には「三山ひろし」。ファンなんでしょうか?

 10Rは吉川元浩が1号艇で1着。王者が笑顔で出迎えると、吉川はすっと目を細めた。その後は淡々とした様子で、これはいつもの吉川である。

 いったんはまくり差しが決まったかと思えた井口佳典だが、意外とサバサバした様子のレース後であった。もっと悔し気な表情を見せるかと思っていたのだが、結果として黒崎のほうが素直に悔しさを表明(笑)。

 顔を歪めたのは秋山広一で、2日目まで2着、1着と快調だったものが、今日は2走で4着6着。大幅に後退してしまった格好だ。こちらは悔しさを隠し切れないといった様子で、明日の巻き返しに期待したいところ。

 最後は平尾崇典。これはピットでの様子ではないのだが、ピット記者席からスタンド記者席に引き上げるとき、選手宿舎の玄関前を通るのである。10R後に帰宿した平尾がちょうど目撃できたというわけなのだが、管理人の方が「おかえりなさい」とばかりに腰を90度折って出迎えたら、平尾も同じように腰を90度折ってご挨拶。その丁寧な返しが素敵です! 以上、本当に広く浅くで失礼しました!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)