西山貴浩の勝利者インタビューをご覧になった方は、意外とテンションが高くなかったことに驚かれただろうか。10Ｒ１号艇を逃げ切って、さぞかし大はしゃぎするものと思われたわけだが、折々にギャグは挟み込むものの、口調自体はどこか疲れを感じさせるような、そんな弱さが漂っていた。やはり昨日の転覆は精神的に尾を引いているようだ。舟券圏内を走りながらの転覆は、投票２位でファンの存在の重みを実感している西山にとって巨大な痛恨事。だから、勝って戻ってきたピットでもそれほど笑顔を見せてはいなかったし、ヘルメットを取って最初にあらわれたのは胸を撫でおろすような安堵の表情だったのである。
その10Ｒでは、近江翔吾の顔が強張っていた。１マークを出てきたときには２番手争いの一角だったはずが、終わってみれば６着である。初戦に続いてのシンガリ負けに、そのこと自体もそうだし、動いてくれない相棒に対しての不安もそうだし、表情が固まってしまうのは致し方ない。開会式では「自分が選ばれるとは思っていなかった」というようなことを話していたが、だからこそ推してくれたファンに応えられないことがなお、辛いことと感じられるのだろう。キャブレター交換で臨んだレースだったが、さらに整備を加えることが予想される。明日は朝から忙しくなるだろうと思う。
整備室を覗いてみると、守田俊介が本体整備！ 思わずビックリマークをつけてしまったが、つまりこれは珍しい光景なのだ。３Ｒもピストン２、シリンダケース交換で登場し、それにも驚かされたわけだが、さらに整備を進めているというわけで、その姿を見るとつい目を見開いてしまうわけである。
その守田の傍らには馬場貴也がビッタリと寄り添っていた。もう、どちらが先輩かわからないような光景なわけだが（笑）、めったにやらないことだから心配だったのかな。ともかく守田も、このままで終わるつもりはないということ。それもここに送り出してくれたファンの存在を意識しているからだろうか。
整備室には重成一人の姿も。９Ｒで落水失格となり、転覆ではないからモーターが水に浸かったというわけではないものの、点検も含めた整備であろう。ＳＧ復帰戦となった昨日は１着発進。ところが今日は２Ｒで不良航法をとられ、９Ｒは落水で選手責任。一気に15点も減点される２日目となってしまった。久々のＳＧがオールスター、いろいろ思うところも大きかったはずだが、最悪の一日となってしまった今日。明日からの巻き返しに向けて、整備も入念に行なってくるはずだ。ＳＧに復帰させたのはファンの力だったと考えれば、重成がこのままで終わらせるとは思えないのだ。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 ＴＥＸＴ／黒須田）
