BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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悲喜こもごもうごめく2日目後半のピットから

 前検日のピット記事で書いた、救助訓練。僕は初見だったわけだが、実は尼崎では毎節実施されてるものだそうだ。尼崎の関係者や地元記者さんに聞くところによると、住之江でも実施されているとか。ただ、大レースではあまり行なわれておらず、しかし尼崎では記念以上でも実施するようになったそうだ。いい取り組みだと思います。
 本来は、訓練だけ行なって準備万端、レースは無事故で、というのが理想なのだが、10Rでは一昨日に見た光景をそのまま見ることになってしまった。2周ホーム、2マーク手前で高橋直哉が井口佳典と接触して転覆、左膝を負傷してしまったのである(途中帰郷)。モーターの動きは悪くなさそうに見えただけに残念。一刻も早い快癒を願うとともに、また来年、この甲子園に元気いっぱいに登場してもらいたい。秋田県の誇りを胸に!

 井口は妨害失格を取られてしまっている。真っ先にピットに井口が戻ってきたのとほぼ同時に高橋を乗せたレスキューも到着。井口はエンジンを吊るとそのまま高橋が運ばれた救護室へと向かっている。その姿はやはり痛々しくもある。その後、他の4選手にも頭を下げ、すみませんでしたと丁寧に口にも出した井口。出走メンバーでは最も年上であっても(飯山泰は先輩だが)、井口はとことん丁重に礼を尽くすのだった。

 その10Rの前、丸野一樹がどうにも足が上向かないのだと首を傾げていた。最近はモーター運自体が悪いようで、それをちらりと愚痴る場面も。ただ、しのぐしかないと前をも向いていて、10Rはまさにしのぎ切っての逃げ切り1着! インから先に回って、しかし桐生順平に迫られまくりの展開をなんとか振り切った。ボートレースはもちろんモーターが重要な部分を占める競技だが、同時に腕と意地と気合が重要なのだと知らしめる1着だったと思う。ピットに上がってきて丸野は「ギリですわ」と苦笑いを見せたが、白星は良薬ともいう。苦しんでもぎ取った1着だからこそ、これを巻き返しの契機としたいところだ。

 今日は連勝が2人! 池永太と前田将太。宮崎県代表と福岡県代表、ともに福岡支部だ。1号艇と4号艇での連勝という点も同じ。池永はどうやら悪くない仕上がり。今日は雨が降り出して湿度が高く、気圧が低いという気象状況で、どうしても重さが取れなかったというが、しかし前半のイン逃げ時には軽快に伸びた飯山泰に対して伸び返すところもあって、池永らしい攻めるスタイル向きの足ではあるようだ。表情も明るい。

 前半はタッチスタートで苦笑いの勝利となった前田は、後半8Rはコンマ09からの逃げ切り快勝。早めのスタートには違いないが、今度は確信をもってのスタートだったでの逃走でもあり、こちらは淡々粛々のレース後なのだった。そういうものでしょうね。ドリーム戦は6着だっただけに、うまく巻き返した2日目だ。

 9Rは中村晃朋が逃げ切り。出迎えた石丸海渡がわりとテンション高めにガッツポーズで中村を出迎えた。ここまでオール3連対と順調な予選前半。中村も逞しさを感じる笑顔で応えている。

 このレース2着の池田浩二はゴキゲン。5コースからまくり差しての2着で、ピットに戻ると濱野谷憲吾に「頑張ったでしょ? 偉い?」と称賛を要求(笑)。他の選手ともハイな感じで言葉を交わしており、なんだか気分良さそうなのだった。想像するに、足はまだ仕上がっていないのだが、今日はしっかり2着2本。場合によっては大敗も覚悟するなかでの好走という面があったのではないだろうか。いや、まったくもって想像なんだけど。でも、2着なのに不思議なはしゃぎ方を見せているのは足以上の着を獲れているからだとしか思えないのだ。

 その池田からの挨拶を受け、上平真二が笑顔を返した。えっ、上平が笑ってる! 髭と笑顔が素敵でしょ、の上平だが、それはレースを離れた部分でのこと。レース前後や調整作業中はほとんど笑顔を見せず、集中し切った表情で粛々と作業をこなし、レース後も淡々としているのが上平なのである。しかも、この9Rは6着。今日はなんと6着2本なのだ。なのに笑顔? 今日のレースはというと、前半は2コースから桐生の3コースまくり差しをもろに浴び、引き波でズルリ後退。そして後半は4コースから池田の5コースまくり差しをもろに浴び、引き波でズルリ後退。ほぼ同じような展開で、すぐ右隣の強烈なまくり差しの直撃を受けているのだ。こんな日、あるんだろうか。上平としては、もう笑うしかない、こんな日は、といったところか。上平真二、明日があるさ。明日は勝って笑え!(6号艇ですが……)(PHOTO/池上一摩 TEXT/黒須田)