BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――連勝途切れる

 馬場貴也、パーフェクトならず! 前半6Rで6コースから突き抜けて、無傷の4連勝を果たしたことで、一気に注目度が増した10R。6コースから勝ったのだから4カドだって、という期待もむなしく、見せ場なく5着大敗。SGのパーフェクトはやっぱり難易度が高すぎる。ちなみに、15年オーシャンでは石野貴之が無傷の4連勝。そしてやはり5戦目に敗れたのだった。ここがひとつの壁なのか。
 ピットには溜息が渦巻くのかと思いきや、意外と淡々とした空気なのであった。出迎えた仲間たちも、惜しかったねえ、みたいな雰囲気は見せず、馬場自身もやけに静かに控室へと消えていった。まあ、1号艇で連勝がストップしたのならもっとざわついたかもしれないが、4号艇ならそういうものか、といった感じなのだろうか。

 勝ったのは濱野谷憲吾でイン逃げ。その濱野谷も馬場に対しては、普通にレース後の挨拶をするのみだった。「馬場ちゃん、悪いね~」みたいなやり取りは皆無で、まあ野次馬としてはちょっと拍子抜けといったところなのでした。
 その濱野谷は、ヘルメットをかぶったままだったので何を言ったのかはまるでわからなかったのだが、出迎えた関東勢に何か言葉を発すると、全員が大ウケになっていた。ああ、何を言ったか気になる!「馬場を止めてやったぜ」とかなら、背筋がゾクゾクするのになあ。明日の勝負駆けに向けて大事な1号艇、たとえ馬場が相手でも負けるわけにはいかなかった一戦だから、勝ててゴキゲンの濱野谷なのである。

 9R、勝ったのは長嶋万記だ! 1号艇の菊地孝平を差し切って、殊勲の勝利! たまたま笠原亮と並んで観戦していたのだが、笠原は「おっ、ワンツー!」。静岡支部の見事な上位独占である。長嶋を出迎えたのは守屋美穂、高田ひかるの女子勢。インパクトの強い勝ちっぷりは、彼女たちのテンションを上げていた。ふたりともニッコニコだ。長嶋も、強い強い先輩を撃破したことで自然と目が細くなる。これは気持ちよすぎる1勝だよなあ。

 敗れた菊地は、レース直後は「やられた!」といった感じの苦笑いを浮かべるのみであったのだが、モーター格納を終えて装着場に出た瞬間に長嶋を見つけると、歩み寄って中指ピーン! 長嶋は恐縮しつつも大笑いだ。たまたま近くに僕がいたので、菊地もパフォーマンスしてみせたんでしょうね。今節、長嶋は菊地にアドバイスをもらったようで、その通りにやったら差していたのが当の菊地だったという。それも込みでの中指(笑)。ようするに、自分を倒した長嶋をライバルの一人と認め、称賛しているのである。やっぱりこれは大殊勲の1勝だぞ、マキちゃん!

 その9Rでとにかく悔しそうだったのが平本真之。4カドから出ていって攻めようとした瞬間、瓜生正義がやや強引に先攻めに出た。平本は弾かれる格好で後退。瓜生も上を叩かれたくないし、平本は攻め込みたいしで、なかなか難しい展開だったが、大敗を喫した平本としては消化不良の一戦だっただろう。もちろん謝ってきた瓜生には頭を下げ返しており、禍根は残ってはいないわけだが、しかしアタマまで見えていたはずの隊形だったから、悔しくてたまらないのも当然。そして、こういうときにそれを隠そうとしないのがまた平本らしさである。準優行きは厳しくなってしまったが、明日は意地を見せてほしい!

 さてさて、前半1Rは5コースから快勝したものの、8R2号艇では4着に敗れた片岡雅裕が、やっぱり淡々とした振る舞いながらも、すぐに本体を割って整備を始めていた。静かなたたずまいのなかでも心中はやっぱり悔しく、また足色への不満も抱いていたわけで、だからこそ思い切って本体整備に着手したということだろう。もっとも、整備する姿もどこか淡々としていた。実際はひょうきんなところもある人なんですけどね。

 また、原田幸哉も本体を割った。今日は2R1回乗りで、一日おおいにもがいたわけだが、10R発売中に本体整備に着手。いろいろやって来て、行きついた結論が本体を割ることだったのだろう。相棒にカツを入れたことで変化が生まれるかどうか。明日は1号艇、逃げても予選突破は厳しい状況だが、意地を見せるためにもパワーアップを果たしたいところだ。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)