BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――今日もやはり慌ただしく

 昨日まではかなり賑わっていた整備室は、今日は3日目らしく、やや閑散としていた。ただし、一人だけ、本体整備をしている選手が。馬場貴也! 初日の妨害失格で賞典除外。すでにグランプリ出場、しかもトライアル2ndからの登場が決まっている。しかし、まったく緩める気はない、ということだ。今日は1号艇もあるだけに、勝ち上がりには関係ない身の上であっても、期待に応えなければならないと万全の準備を施す。こういう姿勢がさまざまなところに繋がっていくのであろう。

 整備室がガランとしているからといって、選手たちの慌ただしさはあまり変わっていない3日目である。朝は試運転に飛び出す選手がそもそも多いものだが、係留所まわりや装着場には常に選手の姿があって、空気はかなりざわついている。前半を走る選手はもちろんだが、たとえば12R1回乗りの椎名豊が早くも動き始めており、多くの選手の動き出しが早い印象。

 レディースでも、11R1回乗りの海野ゆかりや清埜翔子、浜田亜理沙が神妙な表情で準備を進めており、いつでも試運転に飛び出しそうな雰囲気。清埜は装着場を走っている姿を、朝のわずかな時間に何度か目撃しており、リズムを変えようとする意欲がうかがえる。

 そんななかで、艇旗艇番が置かれている棚の裏にあるソファで、宮地元輝がまったりとしていた。いや、そう見えるだけで、頭の中はフル回転していたものと思われる。なぜなら、おもむろに立ち上がった宮地は、係留所からボートを引き上げて、速攻でギヤケースを外したからだ。つまり、8Rの戦略や、それをふまえての調整などを練っていた姿、ということになる。ギヤ調整は果たして、何の布石か。6号艇の宮地は前付けもあれば、チルトを跳ねることもある。ソファでの思索がどんな答えを導き出したのか、直前情報やスタート展示から注目するしかない。

 2R、西山貴浩が逃げ切り。しかし、スリットからの足は明らかに2コース瓜生正義より劣勢で、先頭に立ったあともその瓜生に猛追されている。だからなのか、ピットに上がった西山は思いっきりしかめツラ。息も荒く、勝った選手のレース後とはまったく思えない様子なのであった。

 エンジン吊りの後、瓜生に頭を下げに行って、笑顔の瓜生に声を掛けられる。西山にもやっと笑顔が戻ったという次第なのだが、福岡支部の先輩後輩の激闘ということで、かなり和やかな様子なのだった。そして、ここまで冴えない成績だった瓜生も、ある程度の手応えを得ることができただろうか。瓜生の柔らかい表情がかなり印象的なのだった。

 1Rは三浦永理が逃げ切り。西山同様というか、三浦もレース後は特に笑顔や柔和な表情は見えず、エンジン吊り後はボート周りで長く会話を交わしていた。メンバーは長嶋万記、大瀧明日香、そして菊地孝平。菊地がむしろ輪の中心となっていて、三浦の言葉に神妙に耳を傾けながら、熱っぽくアドバイスらしき言葉を投げかけていた。後輩の悩みに真剣に応える先輩、といった図そのもので、普通の女子戦なら不在のはずの菊地がそこにいるのは今節に限らず、今後のことを考えても大きいはずだ。

 菊地とよく話している女子は、長嶋ももちろんだが、大瀧もその一人。もともと静岡支部で、しかも1期違いの菊地と大瀧である。それを考えればごくごく自然な組み合わせでもあるわけだが、賞金ランク12位を守りたい大瀧としては、やはり菊地の存在は大きいはず。ゴールデンレーサーの薫陶を受けて、彼女たちがどんな結果を残すことになるのか。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)