BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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準々決勝ダイジェスト

選考1位と48位!

8R
①松井 繁(大阪)13
②石渡鉄兵(東京)21
③茅原悠紀(岡山)11
④桐生順平(埼玉)14
⑤平尾崇典(岡山)11
⑥椎名 豊(群馬)12

 昨日の1回戦に続いて、54歳の現役チャンプが鮮やかな1ラウンドKO勝ちを収めた。スリット隊形は2コース石渡が凹んで、やや不穏な展開に。ここで3コース茅原がシャカリキのまくり差しを狙えば大きな脅威だったが、茅原の選択は実にセイフティな握りマイ。

 そう、1回戦では何人かの3コース選手がリスキーなまくり差しを選択し、舳先が入りきれずに惨敗。敢闘精神としては賞賛すべき選択だったが、この大会のルール的には不利な戦術ではあった。
 その点、今日の茅原の攻めはこの大会に見合った“頭脳プレー”。引き波のないところをしっかり丁寧に回り、王者を外からつけ回して2番手キープ。そのまま後続を寄せつけずに2着=明日の3・4号艇を決定づけた。もちろん、茅原の本心は分からないが、私の目には「この大会の3コースは、この戦法がベストでしょ!」と嘯くような握りマイに見えた。だからして、見た目には余裕の2着。ただ、私の茅原29号機の評価は「中堅ど真ん中」あたりで変わってはいない。

 先に2着を書き込んだが、1着は圧倒的人気の王者・松井。ちょいと不穏なスリットから素晴らしい行き足で伸び返し、1マークのワンパンチでKO勝ちを決めた。ここは大村、しかも無風だから「逃げて当たり前」の水面ではあったが、パワー的にも余力たっぷりのイン逃げだった。行き足が強烈なイン戦向きの機力で、明日の3連続KOも9かなり濃厚な人機、とお伝えしていいだろう。

 3着争いは石渡×平尾×椎名の3艇がターンマークごとに入れ替わる激戦となったが、3周1マークで全速の握りマイをブッ放した椎名がギリギリ抜け出した。若きSGウイナーのスピードが生きたようにも、わずかな機力の優位さが生きたようにも見えた3着。おそらくその両方だと思うのだが、選考48位(最下位)の椎名はこの時点で明日の【6号艇】が確定。ただし、明日も3着に粘り込むことができれば、あとはスーパーあみだマシーンの出番。史上初の「選考48位の47人ゴボー抜き下剋上チャンプ」の誕生もありえるだろう。

大阪チャンプロード

9R
①石野貴之(大阪)   08
②深谷知博(静岡)   06
③井口佳典(三重)   08
④濱野谷憲吾(東京)03
⑤山田康二(佐賀)   04
⑥豊田健士郎(三重)09

 8Rとよくよく似通ったレース展開で、ここも大阪のインコース石野が鮮やかに逃げきった。王者・松井よろしく、コッチも昨日と同じ余裕たっぷりのワンパンチKO。だがしかし、盤石ムードの松井に比べて、石野になにかしら脆さみたいなものを感じるのは私だけだろうか。

 たとえば6R後の特訓でもスタート展示でも、スリット近辺から外の深谷、井口にスーーッと出て行かれる見え方。いつもの石野のイン戦ならこの前段階からオラオラのオーラを感じることが多いのだが、昨日も今日もそれがない。松井とともに明日も1号艇が確定(選考2位)しているだけに単なる杞憂なのかも知れないが、どうしても松井よりも不安な予想が多い気がしてならないのだが……。

 さて、2着も8Rの茅原よろしく、3コースの井口がしっかりの握りマイで抜け出した。こちらは2コース深谷がやや追っつけるようなブロック策を取ったため、選択の余地もなく握り倒した見え方ではあった。それはそれで、深谷にロスが生まれて安泰の2番手キープ。いよいよもって、「この大会のトーナメントの3コースは握りマイが正着」というセオリーが定着してきたか(笑)。この2着をもって「井口76号機のパワーが凄かった」とは思わないが、バック~道中で後続を突き離すレース足はやはり強めだったと思う。
 

   3着は深谷×濱野谷の一騎討ち。バックでは濱野谷が最低ノルマの3番手を取りきったかに見えたが、2マークで深谷の差しが炸裂。その後も必死に追いすがる濱野谷を振り切って、深谷が準決勝へ駒を進めた。相棒の67号機は三島敬一郎の第二席なのだが、今日もターンで少し振り込む光景もあり、まだまだ回転が合いきっていない印象だ。明日は外枠からどんな調整で臨むのか。バチッと合えば、一撃の下剋上パンチもありえるだろう。要注意!

絶対エースの終宴

10R
①片岡雅裕(香川)  08
②土屋智則(群馬)    06
③上條暢嵩(大阪)    11
④田中信一郎(大阪) 22
⑤今垣光太郎(福井) 27
⑥関 浩哉(群馬)    26

 いきなり「私的回顧」風になってしまうが、嗚呼、私の暢嵩19号機が準々決勝で敗れ去ってしまった。大村の絶対エースに引導を渡したのは、土屋&関の群馬コンビと言いきっていいだろう。

 土屋は昨日に続いて絶品のスタートからイン片岡を押圧。ついでに外の上條もしっかりブロックしながら俊敏な差しハンドル。まくり大敗を警戒してイン片岡がやや強めに握ったところ、その内フトコロにギリギリ舳先を突き刺した。土屋47号機は機歴も含めてかなり軽視していたのだが、今日の1Rの快勝も込み込みで見立て違いを認めるしかないだろう。昨日も今日も、19号機ばっか絶賛してごめんなさいっ!!(いろんな意味で号泣)

 さて、差された片岡もすんなり2番手を取りきったとして、私の視線はもちろん3着争いに釘付けだった。上條vs関が舳先を揃えての一騎討ち! 勝負の分かれ目は2周1マーク。内からマウントを取った上條が「関のツケマイさえ防ぎきり、ターンマークを先取りすれば勝てる!」とばかりに強引に握って関の外マイを封印。

 並の敵ならこれで勝負あったはずだが、関の応接が素晴らしい。上條とは逆にレバーを放って内側に潜り込み、上條が放った瞬間にレバーを握り込んだ。アニメのVモンキーとはちょっと異質だが、「超高等戦術のW交差旋回」みたいな攻防で3番手を取りきった。これはもう、機力云々を超えて関浩哉という選手の動体視力&運動神経を絶賛(私にとっては脱帽)するしかない。

 こうして、何カ月も前から楽しみにしていた私の心のイベント(大村19号機の連続KO優勝)は、2日目にして幕を閉じた。こうなったら、明日からは19号機に引導を渡した群馬勢を応援したろうか。選考48位のあの怪獣も含めて……。

常勝・峰の失脚

11R
①羽野直也(福岡)13
②馬場貴也(滋賀)17
③峰 竜太(佐賀)16
④寺田 祥(山口)14
⑤平本真之(愛知)16
⑥西山貴浩(福岡)19

 人機ともに上昇気流の羽野17号機が危なげなく逃げきった。スリットほぼ横一線からの圧勝は、今日イチ余裕のあるKO勝利だったのではなかろうか。
 でもって、スリットから目についたのが3コースの峰だ。先に書いたように8R③茅原、9R③井口ともに握りマイで2番手を取りきったが、峰の選択はゴリゴリのまくり差し! 2コース馬場に艇を擦りつけるようなツケマイを浴びせたが、ビシッと弾かれる形で真横に流れ飛んでいった。

 うむ。峰には峰の考えがあったか、それとも身体が勝手に動いたか。それは分からないが、今節の3コースの失敗例に、またひとり峰竜太の名が刻まれた。強気で1着だけを狙った超高速のまくり差し。あれが決まれば大絶賛に値したのだが……。

 峰の猛攻が空振りする間に鋭く2番手に突っ込んだのは、峰マークの寺田ではなく、その外の平本!! 峰と寺田に注目していた私は「どっから来たん??」と目を丸くしたが、リプレイを見て納得。5コースから自力でぶん回し、平本らしくほとんど握りっぱなしで峰と寺田の狭い間隙を切り裂いていた。5コースに特有の「見る前に飛ぶ全速まくり差し」。これはもう、平本真之というレーサーの才能と気持ちの強さを称えるしかないだろう。

 3着には2コースから差した馬場。峰らの追撃をしっかり交わして最低限のノルマを守りきったが、前半5Rの道中も込み込みで「中堅かそれに毛が生えた程度」と値踏みしている。(photos/シギ―中尾、text/畠山)