BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――長い通路

 ボートリフトからあがって、以前の装着場があった場所は左右に分かれる通路となっている。右に数10m行って、左に曲がってさらに数10m行けば仮設の整備棟(装着場)。左に数10m行って左折し、すぐ右に曲がって数10m行けば控室。つまりその通路自体、100mとは言わないが、けっこうな長さがあるわけである。

 そこにボートを置くスペースもあって、数艇が置かれているのはずっと目にしてきたが、今日になってひとつ判明したことが。2回乗りの1走目を走った選手がここにボートを置くことが多い、ということだ。だから5選手が2回乗りだった1Rは、仮設の整備棟のほうには唯一の1回乗りだった寺田千恵のボートしか戻ってこなかったのである(寺田自身は、ボートの運搬は仲間に任せて控室へと向かっている)。なるほど、2走目のためにボートをすぐに下ろせるよう、リフトの近くにボートを留め置けるというわけだ。よく見ると、それ以外でも出番が間近に迫っている選手のボートがここに置かれているようであった。

 白井英治の出番は4R。白井はギヤケース調整を行なっていたのだが、それが終わると検査員さんとともにすたすたと仮設の整備棟を出ていった。よく見ればそこの装着場に白井のボートはなく、こっそり後をついていったら通路の真ん中あたりにボートが置かれていたのであった。白井はギヤケースを装着し、それを検査員さんが検査。さらに白井は取りつけなど点検し始め、すぐに下ろせるよう準備に取り掛かった。そして検査員さんはひとり、仮設整備棟へと戻る。なるほど、この長い通路を行き来しなければならないのは、選手だけでなく検査員さんも大変なんだな、と知る。

 1R3着だった赤岩善生もやはり通路にボートを置いて、いったん控室へと戻っている。着替えを終えた赤岩は、仮設整備棟までやって来て、検査員さんに声を掛ける。何らかの作業を行なう腹積もりのようだ。検査員さんが準備をしている間に、装着場に置かれているスリット写真のモニターを赤岩はチェック。検査員さんはそれを見て、先に赤岩のボートへと向かおうとしたが、「あ、ごめん! ちょっと待ってて。すぐ行く」と赤岩。そして二人で小走りで通路へと向かう。検査員さんももちろん大変だが、控室からボートが置かれている場所を通過して仮設整備棟までやって来て、またボートへと戻る赤岩も大変。今節の選手たち(や検査員さんたち)の移動距離はけっこう長いのである。

 なかでも移動距離が長いと思われるのは、選手班長の林美憲。競技本部は控室と同じ建物(競技棟)にあり、また仮設整備棟にいる間は検査員室にいることもある。もちろん自身の調整もあるわけで、選手仲間や、競技本部や検査員さんとのやり取りを行なうのに、かなり長い距離の往復をしなければならないという次第である。それでも、林班長は元気いっぱい! 装着場の隅っこにいるこちらを見つけるや大声で「おはようございますっ!」と挨拶してくれるし、選手や検査員さんとも朗らかに話している。本当にお疲れ様です!

 さてさて、2Rで寺田祥が4カドまくり一撃。スリットからじんわり内を絞めていき、ギリギリでインの平尾崇典と田頭実の前をカットし切った感じだったが、レース後に寺田と平尾が話しているのが聞こえてきて、平尾はやや放った様子。スタートが早いことに途中で気づいた、というような言葉が聞こえてきたのだ。それもあって寺田が出切れたという部分もあったのだろう。一方、まくり切った寺田は「差されても仕方ないと思って行った」とのこと。スリットから出ていった瞬間、差されるのを覚悟のうえでまくりと決め打ちしていたわけだ。その腹の据え方が見事! そしてその覚悟があるからこそ、寺田は強豪でいられるのだろう。もちろんスタートや足色やらがあってのカドまくりではあるのだが、しかしなんだかんだ言ってボートレースは気持ち、と改めて思った次第なのである。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)