BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――いつも通りゆったりと

 1Rを走り終え、後半の準備に向かう岩崎芳美がいきなり立ち止まる。「一節間ありがとうございました」。岩崎のほうからそう丁寧に頭を下げられて恐縮! こちらも最敬礼で挨拶を返す。地元なのだから今日は最後まで居残ると想像され、だとするとこのあとも顔を合わせる機会はあるかもしれないのだが、それでも朝イチで顔を合わせると節間のお礼を言う。これは選手同士も同様だったりしていて、最終日の朝というのはあちこちで、特に後輩選手が先輩選手に頭を下げているのを見かけるのである。同支部の場合は一緒に帰ったりするので、支部が違う先輩に対してということがほとんどである。一日同じ場所で時間を過ごすとしても、さまざまな状況によって挨拶ができないまま、レース場を後にするということもある。だから朝のうちに節間のお礼。それがボートレーサーの流儀ということなのだろう。

 それにしても、今節最もピット内を全力で走っていたのは黒崎竜也ではないだろうか。前検の記事でも彼の奔走ぶりを書いているのだが、それは連日のように見られた光景で、そして今日もまた! 1Rを走った黒崎は、いったん着替えを終えると猛スピードでボートのもとに向かい、プロペラを外して猛ダッシュで調整室へ! 2走目って時間がないんだっけ、と確認するとこれが9R。むむむ? 時間はあるのに……そうか、1Rの黒崎は新プロペラで走ったのだった。それを調整するのに時間はいくらあっても足りないかも!? というか、あと1走で今節も終わるというのに、それも最後は6号艇だというのに、力を抜くことなく、しっかり自分の形に調整して全力で臨もうとしているわけである。今節の敢闘賞は黒崎に決まり!

 いやいや、このレベルの選手は黒崎に限らず、最後までしっかりと戦うのである。7R6号艇の辻栄蔵が何度も水面と調整所を往復していたし、9R1号艇の太田和美もレースまで時間があるけれども早くも調整に精を出していた。こういう積み重ねが、ベテランになっても一線で戦える原動力のひとつだろうと、思ったりするわけである。ただ、最終日ということもあってか、辻も太田も表情は昨日までより柔らかく見えた。激戦の日々も今日でいったん一区切りとなれば、穏やかな気持ちにもなってくるものかもしれない。

 というわけで、優勝戦メンバー以外のお話を書き連ねたわけだが、ようするにベスト6はいつも通りというか、それほど大きな動きを見せていないわけである。早くもペラ調整を始めていたのは菊地孝平。昨日も準優組では真っ先に水面に出ていったのだから、これだけ早くからの始動も納得である。今日は昨日とは天候が変わり、雨空である。それだけに気配の変化に関してはきっちりと確認しておきたいだろう。1号艇ならなおさらかもしれない。

 もうひとり、谷村一哉もペラ調整をしていた。といってもペラを叩くハンマーの強さはごくごく柔らかいもので、いわゆる微調整ということなのだろう。優勝戦選手インタビュー(6R発売中)の前になるのか後になるのか、水面に出て手応えを確認し、さらに調整を煮詰めていくことになるはずだ。

 あとの4人は序盤のうちは仮設整備棟で姿を見なかった。ただし、寺田祥と松井繁はボートからプロペラが外されており、すでにゲージを当ててのチェックを済ませたか、あるいは調整を始めるタイミングはわりと早めになるかもしれない。1Rと2Rでの寺田は、白井英治とともにエンジン吊りに向かっており、リラックスした表情で会話を交わしている。松井は1R2Rともに近畿地区選手の出走がなく、エンジン吊りにも姿を見せなかった。ただ、選手食堂にいたのが窓越しに見えました。食事でもしていたのかな。

 吉川元浩も1R2Rともに姿が見えず、序盤の時間帯は結局姿が見えず。赤岩善生はエンジン吊りに参加した後は控室へと戻っている。ふたりともプロペラも外されていなかったから、序盤はゆったりと時を過ごしていたということになるだろう。まあ、いずれも百戦錬磨のマスターたちである。今日という日の過ごし方は心得たものだろう。(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)