鳴門のピットは新設工事中。ということで今節は、仮設の整備棟(&装着場)が使用されている。1月にレディースvsルーキーズバトルで来たとき、ピットの裏のほうに建屋を建設しているのには気づいていたのだが、そこが仮設整備棟になるとは。というのも、ボートリフトや係留所からはけっこう距離があるんです。まあ、もともとのピットを工事してるので、仮設棟をやや離れたところに建設するのは道理というもの。ただ、実際に仮設棟に向かってみると、これがまあまあ遠い!
写真は山本寛久がボートをリフトへと移動させているところ。ご覧の通り、この道の向こうは突き当りになっていますね。これを右折すると……。
また通路! 山本は前検の班が後半なので、ひとまずこの通路の指定の場所にボートを置いたという次第なのだが、とにかくリフトや係留所まではけっこうな距離を移動することになる。で、この通路の先も突き当りになっているわけだが、そこを左折し、さらにまた右折してしばらく歩くと、新設の競技棟がある。ここに選手控室やカポック脱ぎ場があって、今日であれば前検航走を終えた選手は仮設棟に向かわずに、まずそちらへと向かうことになる。それから仮設棟に向かうのがまた遠い!
実際にレースが始まればどんな感じになるかは明日確認するしかないが、今日はとにかく選手が大変そうだった。というのも、前検航走は班ごとに次々と消化されるので、エンジン吊りのためにこの距離を走り回らなければならなかったのだ。2班だった松井繁は、まずカポックを脱いでから仮設棟までやって来たのだが、工具を係留所周りに置いたままだったらしい。「あ、取りに行かなきゃ」と呟きつつ、しばし逡巡。この長い距離を往復するのが面倒だしタイムロスになるし……ということで、「あとで(エンジン吊りに)行ったときでいいや」と諦めた(笑)。ペラを外す工具を借りて先に外し、調整の準備だけして、次のエンジン吊りへと走っていったのだった。王者でさえ遠さにうんざりしてしまうという次第なのです。
“若手”ともなれば、エンジン吊りに不参加は絶対に許されないから、とにかく走る走る。黒崎竜也は陸上選手ばりに全力で走り回っており、元気いっぱいな姿に感心しつつ、大変そうだとつい同情もしたくなってくる。7班で自身の前検航走を終えると、全力でカポック脱ぎ場に走り、着替えると全力で仮設棟へ。その途上、赤岩善生に「次の班、三重2人」と告げられて、「あ、そうだった!」と急旋回で踵を返し、リフトまでまた全力疾走! 息も切らさないのがさすがであるが、いやはや、ご苦労様です!
中谷朋子もまた、何度も何度も長い距離を走って往復。ほとんどの班に近畿勢がいますからね。8班で走った古結宏のボートとモーターを仮設棟まで運び、またボートリフトへと駆け出す。ちょうどすれ違って会釈をすると、苦笑いしながら「遠い……」とボソリ。こちらも苦笑を返すのみ、であります。
そんな様子に、地元の林美憲が「これはセグウェイが必要やね」だって(笑)。なるほど、あったら便利だよなあ。「でもエンジン吊りとボート運搬には使えないか……」。たしかに。しばらくは鳴門で走る選手はこのご苦労を強いられるのだと思います。早く新棟が完成しますように!
で、それだけ距離が離れたところにあるので、仮設棟にいると水面のモーター音も聞こえてこない。こんなピットは初めてだなあ。選手たちがリフトや係留所に集結していると、ピットは実に静謐な空気に。そんななか、まだネームプレートを装着していないボートがあった。いったい誰のボートかと思ったら、田村隆信がその主に声をかける。
「プレートはあっち……あ、プレートはいらないか」
「あぁっ!?」
「顔が利くからそれで充分か」
「ヘルメットかぶったらわからんやろ!?」
すると艇運搬の係の方が
「カウルに似顔絵でも書きますか?」
「あぁっ!?」
はい、ボートの主はこの方でした。クスリともせずにそんなやり取りを交わす銀河系コンビ。で、森高がプレートを付け終わったとき、通路の向こうから複数の選手が取り囲むような格好でボートが仮設棟に向かってきた。そう、1班の前検航走がとっくに始まっており、そして終わっていたのだ。モーター音が聞こえてこないから、それを田村も森高も気づかなかった!
というわけで、大慌てでリフトに駆けていった二人でありました。田村も森高も新兵なんだから、バックレは許されませんよ!
というわけで今日はワタシも新しくなったピットに右往左往して、選手たちが大変そうだということしかわかりませんでした! あ、あと赤岩善生がいつも通り本体をバラバラに割っていたことをお伝えしておきます。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)