BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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優勝戦 私的回顧

32年ぶりのビッグバン

12R優勝戦
①定松勇樹(佐賀)12
②宮地元輝(佐賀)11
③馬場貴也(滋賀)15
④森高一真(香川)14
⑤瓜生正義(福岡)13
⑥毒島 誠(群馬)12

 定松勇樹が2度、3度と左手を振り上げた瞬間、掛け値なしのニュースターが誕生した。デビューから4年半、23歳と24日でのSG優勝。もっと言うと、21世紀生まれで初、5000番台で初、GI・GⅡも含めて記念レース初優出にしてSGという大舞台で初優勝。初物づくしの頂点でもあった。おめでとう!

 レースとして、書くべきことは少ない。穏やかな枠なり3対3でスリットは↑御覧のとおりの美しい横一線。この段階でポールポジション定松のV確率は格段にアップした。そして、昨日同様にプレッシャーを1ミリも感じさせない完璧すぎる高速インモンキー。多摩川スタンドの31番柱(1マーク近辺)あたりで観戦した私は、凄まじいスピードで旋回する姿を見て勝利を、いや、圧勝を確信した。

「10年にひとりの逸材です」
 定松がデビューするしないの時期から師匠・峰はこう言い放ったらしいが、その見立てに寸分も狂いもなかった。SG優勝戦の1マークを旋回する姿を見て、心の底からそう思った。
 あとはもう一人旅。艇界が誇るスピードスターも、先のクラシックを制した群馬の絶対エースも、このレースでは定松の装飾品に甘んじた。昨日の準優では松井・瓜生の艇界レジェンドを引き連れ、つい9日前のびわこGⅢ優勝戦でも松井・池田・濱野谷という大地区のレジェンドたちを5コースまくりで蹴散らした。あのド派手な優勝が、そのまま今節の布石だった、という見方もできるだろう。

 それにしてもの23歳、登録番号5121番でのSG優勝って。昨夜、武蔵境の酒場で黒須田と定松が優勝する想定で話をしたものだ。
私「宮之原の118期より7期も若い後輩が、しかも5000番どころか5100番台の新人がSGを勝つなんて、多摩川に来るまで想像もしてなかったわ」
黒「ほんっと、(服部)幸男さんが最年少でSGを獲った時代とは、ボートレースそのものが別物ですもんね」
私「そうそう、モーターの格差は半端なかったし、モンキーの黎明期だからターンスピードもぜんっぜん違った」
黒「SGでもベテラン勢は正座したままの地蔵ターンだった。それでも幸男さんの21歳は凄すぎたけど、定松の23歳もちょっと信じられないくらい早いと思います」
私「うむ」

 レースが終わったいま、その“早さ”を改めて実感している。服部が21歳でダービーを制してから32年。今日の定松の優勝に同じだけの価値があるとするなら、10年どころか「30年にひとりの逸材」という見方もできるだろう。で、次なる興味はアレか。服部はGPを獲るのにダービー制覇から5年を要したが、果たして定松はどれほどのスピードで黄金メットを被るのか……このあたりも7カ月後の楽しみとして、頭の引き出しに突っ込んでおくとしよう。

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 そうそう、今節はボート界の未来を明るく照らした半面、悲しい出来事も起きた。守屋美穂の準優Fで向こう1年のSG斡旋停止。4月のGI準優Fも込み込みで、今年の守屋はすべてのビッグレースの権利を剥奪された。
 もちろん、過ちを犯したのは守屋本人だから、明らかな選手責任の“量刑”だ。我々としては守屋の一般シリーズでの大活躍を見守りつつ、記念戦線への早期復帰をひたすら祈るしかない。
「それはそれで仕方がないこと」と思いつつ、私の心中には「本当にそれでいいのか」というモヤモヤもつきまとう。守屋美穂というもっとも売れ筋の商品が、向こう1年間、全国の百貨店や大手スーパーや巨大量販店の棚から消え失せる。私の勝手な推測では、その1年間の艇界経済効果はマイナス200億円(笑)。

 旬の売れ筋商品を大棚から撤去するのではなく、もっとより良いF防止対策はないだろうか。
 F休みにつきまとうジレンマ。私は20年以上も「フライング返還廃止論者」(Fを転覆などと同じ失格扱い=返還なしにすれば、F休みもなくなる)なのだが、もちろん一長一短の論理と承知している。他にも「再スタート制度の採用」「F警報装置の再開発」など様々なアイデアが浮沈しているが、決定的な解決策がないまま売上上昇に比例して罰則が厳しくなっているのが現状だ。
「それはそれで仕方がない」と「本当にそれでいいのか」と。
 守屋美穂というスーパースターの向こう1年の境遇をイメージしつつ、これを機にF休み問題をより深く掘り下げるべきではなかろうか。(photos/シギ―中尾、text/畠山)