ベストレース！
「ベストを尽くします」
初日の６ＲはMr.ベストマン服部幸男が、豪快な３コースまくりで緒戦を飾った。内隣の守屋美穂のコンマ23に対してコンマ09。スタート勝ちの要素も多分にあったが、まずはそのスタート力を讃えたい。ちょうど１カ月前のマスターズチャンピオン準優でＦを切ったばかり。５月に入って【Ｆ１】の字面は消えたがＦ休みは未消化だし、ＧＩ賞典Ｆの重い足かせは半年先まで残されている。そんな中でのＳＧ初戦でのコンマ09は天晴れの一語。
そして、６年ぶりのＳＧでの初戦１着。これも素晴らしい。実は勝利者インタビューで「６年ぶり」と聞いてのけぞったのだが、調べてみたらば確かに2018年のグラチャン以来ほぼ６年ぶり！ 歳は取りたくないもので、私の脳内ではつい２、３年前まで服部がＳＧに出ていたことになっている（笑）。「光陰矢の如し」ともいえるわけだが、いつの間にやら53歳になった服部のＳＧまくりに、もうひとつ特大の天晴れを贈りたい。
それからそれから、昨日の『展望ＢＯＡＴＢｏｙ』配信で黒須田が「服部選手って、オールスターと相性が良いんですよぉぉ」なんて言ってたな。調べてみたらば、その通り！ 服部が42歳になった2013年から、４年連続でオールスター優出（３・６・４・４着）。特に2013年は４号艇で２コースに潜り込み、イン桐生順平にジカまくりを浴びせて大競りという死闘を演じた。１マークのはるか手前で新鋭のエースを叩き潰しに行った獰猛な光景は、今も私の脳裏に鮮明に刻まれている。それこそ、つい２年ほど前の出来事のように（笑）。
「スリットの行き足、良かったっすね。１マークを回った感じも。そのあとはちょっと……」
勝利者インタビューでは、相棒59号機の長所・短所をざっくり話してもいた。前回の乗り手・山田竜一もスリット近辺の行き足が強力だったから、そのあたりはしっかり継承できたと思っていいだろう。明日の服部は【４Ｒ４号艇】。連日のセンターまくりで無傷の２連勝、なんていうベスト過ぎる光景も想定しておきたい。
勝者・服部についてあれこれ書いたが、このレースは２着の守屋美穂にも天晴れを授けたい。スタートこそ後手を踏み、服部まくりを間接的に“アシスト”したのでここは【喝】。だがしかし、まくられてから瞬時に態勢を立て直して握り返し、服部にキッチリ連動して２番手を取りきった。いわゆる「換わり全速」。この高等技術をオール女子戦で見るのも稀なのに、いわんやＳＧで見事に成功させるとは！
おそらく守屋本人は「スタートで大失敗」と反省しきりだろうが、あの展開から２着＝８点を取りきったアドバンテージはでかいと思うぞ。１Ｒのイン逃げから１着２着ときて、明日の守屋は【３Ｒ４号艇】。服部のひとつ手前で青いカポックが「モリ・モリ・モリヤーー！」と快哉を叫ぶシーンもありえるだろう。６号艇には守屋にとって実に厄介な「必殺・カド受け仕事人」赤岩善生がいるけれど……。
服部つながりで言うと、王者・松井繁も同期のライバルに触発されるように気を吐いた。４Ｒは道中３番手から、平本真之の猛追を的確にブロックして３着キープ。11Ｒは２コースから東都のエース濱野谷憲吾をズッボリ差し抜いて１着ＧＥＴ！
「同期で（１着を獲れて）良かった、と思います」
レース後の表情は実に柔和で、自分だけでなく６年ぶりにＳＧで勝った同期を心の底から喜んでいるように見えたのは、私だけだろうか。
もうひとつ、ゴキゲンそうな服部の行き足つながりで言うと、やはり定松勇樹32号機の行き足も素晴らしい。今日の９Ｒは２コースから伸びなりジカまくりでイン篠崎元志を粉砕。同時に３コース平山智加のマーク差しを浴びたが、しっかりストレート足を伸ばして２マークの豪快な強ツケマイ一撃で１着をもぎ取った。
「行き足、いいです。特訓から感じてたけど、かなりいいです」
レース後の紅潮した顔が、相棒32号機の手ごたえをまんま言い表していた。明日の定松は【４Ｒ５号艇・12Ｒ３号艇】の２回乗り。ある意味、正念場と言えるし、舟券として実に楽しみな枠番とも言えるだろう。４Ｒは④服部の外からどんな鬼足＆スピードを魅せてくれるのか。23歳の若武者＆32号機のポテンシャルを余すところなく発揮してもらいたい。
それからそれから、服部とは関係ないけれど、開会式で自家製パンツを配りまくり、水面では３号艇１着＆６号艇２着と大暴れした森高一真に今日のＭＶＰを授けたい。
でもって１＆３号艇の“内枠デー”ながらファンの期待に応えるべくチルト３度に跳ね上げ、もうひと伸び足りずに６着６着と玉砕した菅章哉には陰のＭＶＰをプレゼントしたい。ちなみに明日の森高は【９Ｒ１号艇】、菅は【９Ｒ５号艇】だ。うむ。（photos/シギ―中尾、text/畠山）
