住之江グランプリでは毎回、ネームプレートにさまざまな装飾を施している。今年は、グランプリ組は顔写真付き! まあ、スタンドや中継ではそこまではっきり映らないかもしれませんが、しかし特別感ははっきりと伝わってくる演出ではある。
さらに、ゴールデンレーサーに選ばれた選手たちについては、その旨も記されている。グランプリに出場するような強豪には、やはりゴールデンレーサー組も多いわけで。そんなふうに見ていて、松井繁や池田浩二がまだその称号を手にしていないのが意外ですよね。もちろん、彼らも要件を満たすだけの実績は積んでいるのだが、この制度が始まってからはまだ届いていないというだけであって。活躍時期を考えれば4000番台にゴールデンレーサーが多いのは当然だし、今回出場していないが3000番台の白井英治や吉川元浩が選ばれているのも凄いこと。そして、松井や池田の残してきた実績というものにも思いを馳せたくなるわけである。
で、シリーズ組にもゴールデンレーサーはいて、井口佳典と篠崎元志が該当。彼らのネームプレートも、他の選手とは違ってゴールドが施されております。こうして輝かしい実績を、目に見えるかたちで表現しているというのは、なんだか嬉しくなりますね。レースになれば、どうしたってその展開や自身の舟券の行方に熱くなるわけでありますが、ふとしたときに目を凝らしていただければ、この大会が、また彼らが特別であることを実感できると思います。
さてさて、今日からわずか2戦の過酷バトルに臨むトライアル1st組はやはり、早くから懸命な調整に入っている。たとえば初日ドリーム戦に臨む6人の初日の序盤の時間帯での動きを思い出せば、その違いは明らかである。終盤の1回乗りという状況は同じであっても、1st組の多くはあたかも5Rや6Rに勝負があるかのように、調整のピッチが上がっているのである。だから、松井繁がピット内を走っている姿を見て、この戦いがいかに熾烈であるかを改めて思い知るわけである。
関浩哉もまた、エンジン吊りへ向かう際や、それを終えてペラ室へと戻るときなど、全力で駆けているわけだが、その童顔も相まって、まるで新兵のような動きに見えたりする。トライアルに出場する堂々たる銘柄級でありながら、どこか初々しささえ感じられたりするのは、この戦いの特殊性のあらわれということになるだろう。あるいは、関の闘志は早くもマックスに高まっているように思われ、それがまたトライアルの真理を象徴していると感じられるわけである。
西山貴浩は本体整備だ。昨日、中間整備組には足合わせや特訓で軒並みやられた、と語っていた西山。このままではまずいと、早々にモーターに喝を入れているわけだ。「来年頑張ります」的なネガティブコメントも出していたりするのだが、それは西山独特の自虐というものであって、前検で劣勢だからといって諦めるつもりなどさらさらないのだ。もともと素性は高く評価されているモーターであり(三島敬一郎のオススメにも入っている)、この本体整備が気配を上向かせる可能性はおおいにある。昨日のコメントだけで苦戦と断じるわけにはいかない。
瓜生正義も本体を割ったようだ。ただ、これは点検程度という可能性はおおいにある。瓜生が初日に本体を割るのは、かつてのSGでよく見られた光景。ドリーム戦に登場する際の序盤の時間帯におけるルーティンのようなものだったのだ。当時、瓜生に話を聞くと、時間に余裕があるからこそ本体を割るのだ、と言っていた。それが今後の調整のための引き出しにもなるのだし、万全を期すことにもつながるというのだ。瓜生の33号機はまさしく中間整備組。前検の感触は悪くなさそうだったし、だからこそ割ったと考えるほうが自然であろう。
そうしたなかで、上條暢嵩が妙に余裕のたたずまいなのである。1R発売中に入念に装着回りの作業をし、その後は控室に消えて行っている。モーターを見るとプロペラは着いたままで、調整を始める気配はなかった。1Rのエンジン吊りを終えた後も、そのまま控室へと戻っており、調整らしい調整を序盤のうちには始めていなかったのだ。それなりの手応えを朝、というかレース場入り後に乗って得ることができたというのか、あるいは住之江の調整を知り尽くした者の落ち着きなのか。6号艇ではあるが、かなり不気味と見えたのだがどうだろう。
2nd組は、今日はレースがないので、調整に専心できる一日である。毒島誠は本体を割っており、点検なのか、あるいは部品交換にも至ったのか。いずれにしても、時間はたっぷりあり、なおかつ整備がうまくいかなかったとしてもレースには影響しない(やり直せばいい)ので、思い切った調整も可能である。これもベスト6組のアドバンテージのひとつである。
茅原悠紀は1R発売中に試運転を行なっている。その手応えをもとにしての調整を行なうわけだが、2nd組の動きとしてはかえって異質なのであった。もちろん茅原なりの考えがあってのことだろう。
大注目の62号機を引いた池田浩二は整備室に姿があった。大きな整備をしている様子はなかったが、時間があるだけにやれることはすべてやり尽くす腹積もりであろう。エース機だけに、すべての手を尽くして本領を完全に引き出すべく調整は進む。
シリーズ組。幕開けは上野真之介の逃げ切り! 出迎えには峰竜太、宮地元輝、定松勇樹のトライアル組が総出となっており、特に今日戦いがある宮地と定松にはいい刺激になったことだろう。
2Rでは濱野谷憲吾が5コースから2着。逃げ切った宮之原輝紀と東京支部ワンツーとなった。宮之原のエンジン吊りは逃げ切りで水をもらっていないだけに早々に終わり、東京勢と関東勢は濱野谷のほうに集結している。そこには毒島、関、土屋智則、桐生順平、佐藤翼とトライアル組がずらり。5名を送り込んでいるわけだから、今年は関東地区にとって充実した1年である。しかーし! 東京支部は誰もいない! 来年こそここに東京支部も加わるべく、濱野谷、宮之原、さらに石渡鉄兵、長田頼宗、佐藤隆太郎には頑張ってもらいたい! そう改めて願った次第なのであった。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)