
笠原亮がさらに本体整備を行なっていた。5Rはピストン2、ピストンリング4の交換で出走。初日にもリングを4本換えていて、そもそも中間整備でセット交換が行なわれていた44号機である。つまり、そもそも劣勢機であり、整備を繰り返しても上向いてくれない。結果、5着1本に6着3本という地を這う成績。今節の笠原はとにかく精気がなく、こんな笠原亮は初めて見た。それでも藁をもすがる思いでさらに整備を重ね、どうやらクランクシャフト交換に着手したようである。
成績もそうだが、相棒の不調は選手の精神状況に露骨に影響を与える。以前、あの山崎智也が語っていたことがある。まったく動いてくれないモーターが相棒のとき、毎朝憂鬱になるのだそうだ。「今日もあのモーターに乗らなきゃいけないのか……」と。乗るだけで気分が滅入るわけで、それでレースを戦って大敗すればさらに気分に影が差す。元気のない笠原の姿は、まさにそういうことなのだろう。

同じくまったく相棒が動いてくれないのが丸野一樹だ。初戦の1号艇を3着に敗れたときにも感触のあまりの悪さに首を傾げていたものだが、その後もまったく上昇気配を見せずに5着1本、6着2本。丸野もまた、まるで冴えない表情で、これまたこんな丸野一樹は初めて見た、というくらい力ない様子である。8Rを6着に敗れたあとも足取りに力がなく、着替えを終えたあとは整備室に入ったのだが、やや呆然としているような姿も見えていた。
もちろん、笠原も丸野も諦めない。なんとか光明を探そうと、丸野も整備に取り掛かっている。二人とも予選突破は絶望的な状況だが、残り3日、どこかで一矢報いたい。そんな思いで、陸の上でも苦悶しながら奮闘を続ける。そんな様子を見ていると、なんとかきっかけを掴めないかと願ってしまうわけだ。

戦前の評価は高かったはずの68号機を手にした前田将太も苦戦が続く。1号艇で勝利をあげたものの、それ以外では大敗の連続。今日は2走ともに6着である。10R後、まるで泣き顔に見えるほど落胆していた前田を、平田忠則、渡辺浩司、塩田北斗が包み込むように取り囲んでいた。そのまま前田を中心にして横並びで控室へと戻っていく。なんだか福岡勢が前田をなんとか癒そうとしている図に見えたのだった。前田は地元福岡のチャレンジカップ勝負駆けでもあって、しかしこの成績ではもはや厳しいと言わざるをえない。モチベーションが心配にもなってくるわけだが、彼にもまたなんとか光明を見つけてほしいと願うものである。

今日同じく6着2本だった秋元哲も、厳しい表情だ。2Rはまくっていったものの新田雄史の抵抗を受け、9Rは必死に前を追うなかで捌かれ大敗。そのレース後の表情は、憤怒にも近い、険しいものとなっていた。今節はSGデビュー戦、相棒の30号機はもともとエース格のモーターである。その片鱗は見えているはずなのだが、成績にはつながってこない。気分が上向こうはずがないというものだ。秋元は選考順位下位のため予選では1号艇が回ってこない。明日は3号艇で、しかし前付けがありそうなメンバー構成。その間隙を突いて、見せ場を作ってほしいところなのだが。

さて、なんだかつらい話ばかり書いてしまったのだが、明るい話題を振りまいていた選手といえば、今日は柴田光に尽きる。10R発売中に水神祭が行なわれており、レスキューに乗り込む前に待機しているときにも、柴田の周りには選手、またメディアの輪ができており、その中心で柴田はニコニコと笑顔を振りまいていた。あと、土屋智則が実に嬉しそうだったなあ。サンダルを履いていたから、自分も飛び込む気マンマン。「ポーズだけ、ポーズだけだから」と言っていたが、そんなわけないよね(笑)。

で、水神祭記事で峰竜太が飛び込んだ話を書いているが、巻き込んだのが土屋だ。9Rを終えて、モーター格納に向かっていた峰を呼び止め、なんだかんだで参加させて、さらに飛び込ませてしまったのだから、水神祭の裏MVPですな! 柴田先輩の水神祭におおいに刺激を受けたはずの土屋。明日は1号艇、F2の身だが、柴田先輩の前で恥ずかしいレースはできない!(PHOTO/中尾茂幸 池上一摩 TEXT/黒須田)
