珍事が起こった。
「豪華客船の沈没みたいやった~」 と西山貴浩が大騒ぎ。
なんとピットの目の前で船岡洋一郎が沈没(?)したのだ。
その瞬間を目撃できなかったので、いろいろな人の証言をまとめると、試運転から戻ってきてスローダウンし係留所につけようとした水摩敦に、試運転に出ようと係留所を離れた船岡が接触。
船岡はあわれ水中へ、ということらしい。
船岡はこの寒風の中びしょ濡れでレスキューに助け上げられ、
水摩もボートが少しだけ破損したため、修理のために陸に上がった。すぐに着替えた船岡はバツが悪そうに転覆整備に走っていたが、
何はともあれ、ケガがなかったのは何よりで、ならばこれはやっぱり珍事と言うべきであろう。
もちろん、水摩もボートは傷ついたが体のほうは大丈夫そうだ。
船岡はこれが初めての新鋭王座。
その初っ端でまさかのずぶ濡れとなったわけだが、これを厄落としと考えて、明日から全力で戦ってほしい。
ずぶ濡れはこれだけではなかったから、本当に珍しい前検だった。
上野真之介も転覆したのだ。こちらは試運転でのもので、
1マークで壮絶にひっくり返ったらしい(これも現場は目撃していない)。整備室にいる選手たちが一斉に窓際に駆け寄ったので、
水面を振り返ったら、はるか遠くに転覆艇が見えたのだ。
たまたま近くに寒暖計があったので見てみると、気温は6℃。
う~、寒い! びしょ濡れでピットに戻ってきた上野が、
体が元気そうだったからこそ、本当に気の毒になってしまったぞ。
上野ももちろん、その後は転覆整備に忙殺されている。
上野といえば、峰竜太の弟子。峰といえば記憶に新しいのが、
賞金王の初戦、スタート練習中に落水していることだ。
師弟揃って初めて体験する大舞台のレース前に(笑)。
でも峰は初戦を2着と健闘しているし、優出は逃したものの次点だった。
ゲンを担ぐとするなら、この転覆は決してネガティブなものではなく、
師匠のように活躍が期待でき、同時に師匠のリベンジのきっかけとなるかもしれないものだろう。明日は船岡も上野も1号艇で登場する。
ここを勝って、水神祭で2日連続のずぶ濡れなんてどうでしょうか。
今度は嬉しいずぶ濡れで。
2件の事故があったため、前検作業は長引いている。
普段なら3時45分頃には作業終了のアナウンスがかかったりするのに、今日はまだ6班以降のタイム測定とスタート練習が始まっていなかったりして。ということは、その分、前半組は作業の時間が長くとれたのであり、整備室はかなり長い間、選手たちの姿でにぎわっていた。
印象に残っているのは、モーターを見つめながらじっと考え込む
素振りを何度も見せていた濱本優一。
整備の方向性、手順などを脳裏に描いていたのだろうか。
また、丹下将が実に丁寧にモーターを扱っており、
なんとなく今垣光太郎を思い出したりしたのだった。
丹下は去年の新鋭王座でも見ているが、存在感がぐっと増したような気がする。
ペラ室も、時間を追うごとに選手の姿で満たされていき、
やがて満員御礼に近い状態となっていったが、
まだガランとしていた早い時期に見かけたのは桐生順平。
ドリーム戦出場の1班だから、真っ先に前検を終えており、
桐生は素早く作業に取り掛かったようだった。
会見では、モーターについては分の悪さを口にしていた。
桐生の引いた11号機を前節のライジングスター決定戦で使っていたのは同期の秦英悟で、パワーはかなりのものだった。
桐生も参戦していたので、それはよくわかっていた。
ところが、ペラが合わないのか、思いのほか手応えがないとのこと。
そのあたりを解消すべく、さっそく明日への準備に動いたわけだ。
なお、桐生によれば、「秦くんは前節より良さそうですよ」とのこと。
憶えておこう。
ドリーム会見では、ニッシーニャ・トークショーが繰り広げられた。
もちろん、質問には的確な答えを返していったが、
それがいちいち面白い。たとえば、締めの意気込みコメントも、
ようするに優勝を意識している力強い発言なのだが、
ニッシーニャにかかればこうなる。
「今までバカばかりやってきましたが、マジメな人に恥をかかせるようなレースをします。
特に、顔がいいヤツとかスタートが速いヤツとかには負けません!」 やっぱり西山貴浩は一流のエンターテイナーだ!
それだけに、優勝して感極まるニッシーニャというのも見てみたいものである。 西山が6号艇ということで、ドリーム戦自体も面白くなりそうだ。もちろん、西山は動く。西山もそう宣言している。
だが、「インは絶対主張するという気持ちです」(茅原悠紀)
「枠は主張します」(桐生)
ということで、西山も簡単にはコースを獲れそうにない。
「ドリーム戦の組み合わせが決まったあと、茅原くんから電話がありましたよ。『譲りません』だって。そしたら順平からも電話が来て『譲りません』って」
早くから番外戦が繰り広げられていたのだ。
それだけ、茅原も桐生もグリーン・ニッシーニャを警戒している。
そして、西山も引く気はない。
機力的にはかなりの手応えを得たという西山、
ただしこれが伸び型だったことから、少し悩みも生まれてきているようだが、それでも「(前付けに)行きますよ。
ピット離れ出ようが出まいが」が西山の決心だ。
で、茅原はこんなコメントも残している。
「100mを切ったら主張の意味はないので、そのときは考える」
一方の西山は「80mになっても、入れてくれるんなら行きますよ~」
明日の足にもよりますけど、と付け加えてもいる西山だが、
もしかしたら賞金王の重成の再現がニッシーニャによって!?
ドリーム戦はスタート展示から目が離せない一戦になぞ。
(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)