BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――熱い勝負駆け

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 勝負駆け界隈は悲喜こもごも。予選突破と予選落ちでは天地の違いなのだから、当然である。準優行きを決めた選手たちは、基本的に柔らかい表情を見せる。
 いちばん派手に喜んだのは、もうおわかりですね、西山貴浩である。強烈な3コースまくり。内にいたのが桐生順平と峰竜太なのだから、喜び百倍であろう。

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 ボートリフトに乗っかると、まず嬌声をあげる。出迎えた仲谷颯仁とガッツポーズを交わし合う。そこにやってきた原田幸哉が「誰のおかげだ?」と問いかけると、「幸哉さんのおかげでございます!」と深々一礼。戦前、幸哉にアドバイスを仰いでいたようだ。エンジン吊りでは、笑顔を見せたかと思えば、充実感たっぷりの凛々しい表情となり、つづいて達成感を滲ませる鋭い目つきになって、さらにくしゃくしゃっと笑ったり。百面相だ。かと思えば、レンズを向けるカメラマンたちに笑顔を振りまき、足取り軽く勝利者インタビューに向かって、すれ違った仲谷とハイタッチ! 西山を追いかけるだけで飽きないんだな(思わず写真を何枚も載せてしまった……)。

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 12Rの結果を受けて、18位となったのは徳増秀樹。状況をどこまで把握していたのかまったくわからないのだが、出走待機室のモニターでレースを見ていた徳増は、レースが終わっても1ミリも表情を変えなかった。淡々とレースを観戦し、淡々とエンジン吊りに向かう。12R出走時点でも18位だった徳増は、結果によっては落選も充分ありえたのに(というか、西山がまくり切った瞬間、いったんは次点の可能性が高まっている)、それには関心のないような振る舞いを見せていたのだ。ただ、JLCの展望インタビューに呼ばれたとき、顔つきがふっと柔らかくなっていたのも確かだった。それまでは関心がないというより、状況がわからなかったと見るのが妥当か。インタビューに呼ばれたということは、準優行き確定。それが徳増の心を軽くしただろう。

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 10R1着で準優行きを決めた上野真之介は、とにかく明るかった。モーター格納を終えたあとには報道陣に囲まれていた上野。一般戦とかでも似たような状況はあったかもしれないが、報道陣の数が圧倒的に多いSGで囲まれるのはまた格別のはずだ。この経験がまた、トップレーサーとしての心構えを形成していくことになるだろう。

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 勝負駆けを成功させたといっても、ただ喜んでいるだけではない選手もいたりする。たとえば篠崎仁志。今日はなんとか逃げ切りで初1着をあげたが、まだまだパワーに満足はしていない。だからレース後、プロペラを必死で叩いた。表情にはどこか悲壮感も見えるような気がする。予選突破できてよかった、などという単純な心境にはどうしても思えなかった。

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 10Rで上野に差された岡崎恭裕も、レース後はプロペラ調整所に陣取った。いくつものプロペラゲージを当てては、ペラの形をチェック。イン戦をモノにできなかったことで、さらに不満点が見つかったか。

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 もっとも、本格的な調整は明日になりそうだ。11R終了後には帰宿バスの2便が出発(今日は3便制)。ところが、定員に1人欠けがあったようで、「2便でもう1人、帰宿してください」というアナウンスがかかっている。こうなると、まず気を使うのは本来は最後まで残って雑用をこなす新兵。関浩哉が急いで控室へと駆けだしている。地元の若手も気を使うもので、整備室にいた竹井奈美が駆け出して、帰る準備を始めた。それを制して、「いいよいいよ、俺が帰る」とバスに向かったのが岡崎。本当は12R後の最終便で帰る予定だったようだが、定員を埋める役割を買って出たのだ。うーん、男気。結局、定員に達しなくてもOKという判断がくだされて、岡崎も残れることになった。その後は特に作業をすることはなかったが、明朝からの調整の方向性は掴んだことだろう。

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 さてさて、予選トップ争いは最後まで目が離せなかった。といっても、吉川元浩vs峰竜太に絞られてはいたわけだが。11R、吉川が4着に敗れ、得点率を8.33とした。2着でもトップ確定だったが、これで峰の結果待ちに。レース後の吉川はやはり苦笑いで、また疲労感も滲んでいる。

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 峰は12R2着でトップ。3着で8.33だが、峰3勝に対して吉川4勝なので上位着順の差で吉川にトップを譲る。西山にまくられたあと、桐生順平との接戦となり、無念の3着。峰は戻ってきて報道陣に「2位?」と聞いていたので、おそらく2着条件ということをわかっていた。報道陣がうなずいたとき、峰は隠すことなく顔を歪めた。あのデッドヒートは、トップを獲ることを意識した激走だったということだ。

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 これでトップに立った吉川は、さすがに表情が明るくなっている。クラシックからの連続SG制覇が完全に現実味を帯びた! まずは明日、2019年ビッグレース全優出をかけて(マスターズも準Vでしたね)、12R1号艇を走る。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)