BOAT RACE ビッグレース現場レポート

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THEピット――飄々と予選トップ

 

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 終盤の時間帯になると、勝負駆けの趨勢はおおよそ見えてきていた。19位以下から自力でボーダーを突破しそうな選手が見当たらず、18位以上から落ちてくる選手がいるかどうか、が焦点となっていた。
 波乱は10Rで起きている。予選トップを狙える位置で4日目を迎えた白井英治が6着。まさかの6着2本で19位以下に滑り落ちたのだ。今日のノルマは5着2本、というもの。あの白井なら楽々クリアできると思われただけに、6着2本で予選落ちとはなかなか想像しにくいことだった。ボートレースには、常に魔が潜んでいる。
 敗戦後の白井といえば、顔を歪めてわかりやすく悔しさをあらわにするのが常だが、さすがに白井自身アンビリーバブルだったのだろう。キョトンとしているように見えるほど、表情はひたすらのっぺらぼうだった。顔が青白くも見えたけれども、悲壮感というよりは何が起こっているかを理解しがたいといった雰囲気である。白井のこんな表情は初めて見た。

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 さらに徳増秀樹も、圏内から陥落している。6号艇で3着条件というのは決して楽ではなく、だから前付けに動いたが、誰も譲らずオールスローの6コース。ここから3着浮上はなかなかに至難の業だ。4番手争いが精一杯で、それにも敗れている。淡々とピットに戻ってはきたが、悔しさというよりは疲労感が漂っていた。準優行きとは無縁の場所での競り合いは、精神的にも疲れさせるものだっただろう。

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 10R組からふたりが予選落ちとなって、得点率5・83の19位だった赤岩善生の18位以上が決まった。今節はとにかく気合が入っているというか、ピリピリしているところもあった赤岩だが、JLCの準優展望インタビューのカメラの前に立つと、柔らかい笑顔も見せていた。安堵感が大きかったのだろう。とはいえ、ここで満足しているわけがないのが男・赤岩。明日もまた、ピリピリしている赤岩に会うことになるだろう。

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 このレースでは別のドラマもあった。徳増同様に3着条件だった平本真之が、しっかり3着を死守したのだ。2番手も見える展開で、ほんの少しの忸怩もあっただろうが、なにしろ地元SGの予選突破である。ヘルメットを脱いだ平本は、まずは大きな笑顔を見せている。

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 もうひとつ、守田俊介が2着となったことで、予選トップを確定させた。まあ、この人が大喜びするとか、悔しさで顔を歪めるというシーンはまったくと言っていいほど見かけないので、予選トップといえども飄々としたものである。状況を知っていたのかどうかはわからないが、馬場貴也の笑顔のほうが目立ったほどであった。浜名湖ダービーから3年。ふたたび予選トップで賞典日を迎える。2度目の戴冠に燃える……かどうかはわからないが(笑)、明日もきっと飄々と一日を送ることだろう。

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 11Rは勝負駆けについては穏やかである。篠崎元志と峰竜太は大敗で予選落ちがあったが、なにしろ1号艇と2号艇。強力に伸びる艇が外にいるわけでもなし、1着と3着でしっかりと予選突破だ。とりあえずは二人とも笑顔。篠崎のほうは勝ったことで力強さがあり、逆に峰は破顔一笑にはとても見えなかったが、準優に駒を進めて気分を暗くする道理はない。

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 このレースでは、勝負駆け以外の部分で悲劇があった。岩瀬裕亮の欠場だ。エンジン吊りの喧騒が去り、展示が終わったところでにわかにピットがざわつき始めた。我々が立ち入ることができない本番ピットには人が集まり、何やら点検らしきことが行なわれている。やがて、岩瀬の欠場が発表される。レスキューで曳航されてきた岩瀬のボートの横っ腹には、穴が開いていた。どうやら接触があった模様。10R組のレース後に気を取られていて目撃はしていないが、選手責任外の欠場となっているので、それしか考えられない。戦う前に敗北(というか欠場だが)が決まった岩瀬は、着替えを終えてボートをチェックする間、遠目にも肩を落としているように見えた。戦って敗れるより、悔しさは大きいかもしれない。1着でも予選突破はなかった岩瀬だが、そんなことは関係ないだろう。残り2日は、この無念を晴らす戦いになる。

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 さてさて、10R発売中と11R発売中、突如として「瓜生スクール」が開講されていた。生徒は小野生奈。瓜生正義が監督で、西山貴浩がコーチ。小野はまだ試運転を続けていて、それが瓜生スクールに発展した模様。係留所につないだボートの操縦席で、小野がモンキーターンのフォームを作ると、それについて瓜生が指導をする。西山もそれを補佐し、フォームのコツを教え込んでいた。
f:id:boatrace-g-report:20181026212618j:plain「そこで左! そう! ほらほらほら、舳先が浮いてきた!」
 ウィリーモンキーを教えていたのだろう。瓜生も西山も、時に身振りを加えて説明する。11R発売中には、小野は何周も何周も水面を走り、それを瓜生と西山がチェック。ここでスクールは切り上げられて、小野は「スピードが滑らかになってる感じがしました!」と二人に報告していた。
 SGの舞台で瓜生から直接アドバイスを受ける小野生奈。そりゃあ強くなるわけだよね。というか、その数十分で明らかに強くなったと思う。グランプリシリーズあたりであっさり優出しちゃったりして。(PHOTO/中尾茂幸 黒須田 TEXT/黒須田)