1Rから安定板の使用が決まったほどの強風で(朝から埼京線ではダイヤの乱れも出てました)、日差しのある春らしい天気でありながらもピットは寒かった。アンダーシャツ1枚でいた今井貴士も「……寒いっす」と言っていたくらいだ。
だからというわけではないだろうが、1R前にはピットに出ている選手は少なかった。
整備室で瓜生正義が件のマフラー洗浄をしていたほか、湯川浩司と篠崎元志が整備室で作業。ペラ小屋で作業していたのは白井英治と鎌田義の2人だけで、装着場には選手の姿が見当たらない状態だった。
朝のスタート特訓→1Rの展示航走が済んでひと段落つくと、こうした状況になるのは珍しくないが、記者の多さばかりが目立つ時間帯になっていたのだ。
そんな中、しばらく時間が経つと、せっせと働きだしたのが吉田拡郎と西山貴浩だ。
2人とも個人的に取材したことがある選手なので挨拶をしたかったが、声をかけるタイミングに迷われるほどよく動き回っていた。モーター架台の移動など、新兵の仕事を精力的にこなしていたのだ。両者ともに準優出を果たしているわけだが、それによって固くなっている様子は見られなかった。
カクローに対してモーターの状態を聞いてみると、「アシはいいですね。昨日(の敗戦)はスタート(遅れ)だけです。01スタートもあったので、それとチャラですね(笑)」とのこと。爆弾といえるヒザの状態について尋ねてみても「アシがいいので、あまり試運転の必要もないし、(負担がかからず)大丈夫です!」とのことだった。
一方の西山には、「SG準優出はどうですか?」と聞いてみたが、「な~んもわかりません」「な~んもないです」とトボケ顔。
「新鋭王座で失敗してからはもう、な~んもないです」と、ニヒル(?)な笑みを見せられた。
そこで、「いい意味でリラックスできてるということじゃないですか?」と言ってみたのだが、西山はやはり、「そうですね。……な~んもないです」と復唱。
心の奥ではプレッシャーと闘っていることはあるかもしれないが、少なくともそうしてニッシーニャ節を貫くだけの余裕はあるようだった。
予選1位12R1号艇の今垣光太郎は1R後のエンジン吊りで見かけたくらいだったが、ネックウォーマーで口まで隠して寒そうにしていた以外は、当然、いつも通り。隣りにいた平尾崇典と普通に話をしたりしていた。
今垣に限らず、朝早い段階では、特別変わった動きをしていたり、気になるムードを醸し出している選手はいなかった。
……いや、そういう意味でいえば、重野哲之はちょっとだけ気になった。
1R後、ペラとハンマーを持ってペラ小屋に入っていったのだが、ヘッドフォンもしてないにもかかわらず、フンフンと鼻歌を唄っているような感じで、ハンマーでリズムを取っていたのだ。
ドラマーですか!?
といった感じだったが、その雰囲気は悪くなかった。
昨夏の東日本復興支援競走では「準優がいちばん緊張した」とも話していたが、あのときとはまるで違い、リラックスできているようだったのだ。
(PHOTO/中尾茂幸=今垣&吉田、池上一摩=その他 TEXT/内池)