必殺「架台３台運び！」
これが世にも名高い茅原悠紀の得意技、である。え、知らない？ 僕も今節初めて見たんだけど。新兵がボートリフトの脇に準備しておくモーター架台。エンジン吊りがスムーズに行なわれるよう、架台置き場から運ぶわけだ。これはたいがい、片手にひとつずつ、いっぺんに２台、というのが運ばれる台数だが、茅原は器用に３台も運んでしまう！ 最多架台運びとしてギネスに認定される……という話はまったく聞かないが、実にお見事な芸当であります。気づいたのは一昨日で、長嶺豊さんと「すごいね～」と感心。本日、撮影に成功したものでありました。
勝負駆け、である。ほのぼのネタから入ったが、ピットには気合が充満しているように感じられる。茅原も、架台運びが終わるとすぐに係留所に駆け下りていって、試運転へ。５着２本と比較的ゆるい条件ではあるが、油断があっという間に大敗に結びつくのがボートレース。茅原も気を緩めている様子はまるでない。
整備室を覗き込むと、毒島誠が本体を整備していた。割って部品交換という雰囲気ではなかったものの、初日は濱野谷に匹敵するパワーと目された毒島が本体に手をつけるとは、少々驚かされた。初日連勝、しかしその後は大敗。初日のリズムを取り戻すべく、思い切って本体に手をつけた、というところだろう。１Ｒ後には整備を終えて、モーターを装着。着水の準備を始めていたが、その顔つきがまた、気迫満点。いい意味でのテンションの高まりを感じずにはおれない。
整備室に張り出されている出走表を見入っている吉田拡郎も印象に残った。整備をしているというわけではなく、７Ｒのメンバーを見ながら戦略を練っているという雰囲気。６号艇・森高一真の前付けはあるだろうか。５号艇に今村豊ということは、全艇スローもあるのか。篠崎元志はどう出る？ では、２号艇の自分の戦略は……。まあ、頭の中を覗き込めるわけではないので、何が渦巻いていたのかは知る由はないが、思案する表情からはインテリジェンスを感じたのだった。
ペラ室を覗く。あ、濱野谷憲吾がいる！ 今日はゲージ擦りテーブルに姿がなく、１Ｒのエンジン吊りで今村豊と談笑している姿を見て余裕十分にも見えたのだが、その後はペラ室に向かっていたようだ。いくつものゲージを次々に当てて、形状をチェックしている濱野谷。ペラを叩くのではなく、ゲージでラインをチェックしているのか？ 今日は湿度が上がっており、それが気配を変え、叩く必要が生じたのか。しばし濱野谷を注視していたのだが、木槌を手にする気配はなく、ひたすらゲージを当て続けている。やはり叩かないつもりなのかな……そう思った瞬間、木槌を手に取った！ 叩いた！ ついに叩いた！
といっても、それはあまり力を込めての打擲ではなく、まさに微調整といった程度のもの。それも数回こんこんと叩いただけで、濱野谷はペラ室をでてボートをつないでいた係留所へと降りて行ったのだった。
さあ、この行動があの超絶伸びにどんな影響を与えるのか。執筆しているのは４Ｒ。このあとの６Ｒ展示で確かめてみよう。
さて、３日目を終えて予選２位は峰竜太。しかも、濱野谷憲吾とまったくの同率で、上位着順数の差で２位である。ともにここまで４走。濱野谷は残り１走、峰は残り２走だから、濱野谷が勝利ゲットしたとしても、峰が連勝すれば予選１位の座を手にすることになる。「緊張は勝利のための重要な要素」と峰は言う。緊張があるからこそ、いい結果が出せる、ということだ。ならば、とその状況を伝えても問題ないだろう。
「アハハハ！ 空回りするってこともあるんですから～」
そんなふうに笑い飛ばせるのだから、大丈夫だ。峰はその状況を把握はしていなかったが、予選２位で４日目を迎えたことで「明日よりも今日のほうが大切かもしれない」と決意していたようだ。ここがチャンスということを認識し、１号艇と４号艇という自力攻めが可能な枠であることもあわせて、しっかり戦い抜くことが大きな結果に近づくと考えているのだ。
いやはや、峰竜太は本当に逞しくなった、と思った。（ＰＨＯＴＯ／中尾茂幸 池上一摩＝峰 黒須田＝茅原、濱野谷＆今村 ＴＥＸＴ／黒須田）
１Ｒ６コースから１着！ 篠崎元志の表情が鋭かったぞ！
