BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――難水面

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 終盤の時間帯、ピットは閑散としていた。帰宿バスの1便は出発したあとで、準優進出を決めた選手たちの多くはこれに乗り込んだようだ。11Rと12Rに出走する選手が、この時間帯に慌ただしく動いているわけはなく、ピットをぐるり眺め渡して下條雄太郎がペラを叩く姿のみが視界に入るだけ、というタイミングもあった。昨日水神祭を果たした下條だが、それで満足することなく、まだまだ奮闘を続けている。こうした努力の積み重ねが、彼をこの場に立たせたのだろうな、なんて思えて、実に頼もしい姿と見えた。

 

 

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 整備室奥のほうのペラ調整室を覗きこむと、中島孝平の姿が。中島は惜しくも準優進出を逃した。昨年来の安定感を思えば、ひとつの波乱には違いない。“寡黙なる闘神”というキャッチフレーズがつけられた中島は、実際にはわりと饒舌で、自分の思いを丁寧に言葉にできる人だが、たしかにSGのピットでは黙々と己の作業に没入しているように見える。それは、予選落ちが確定したとしても変わることはなく、1便バスはスルーして作業を続ける様子はいかにもストイックだ。一般戦回りとなる明日は、かなり怖い存在となるんじゃないかな。

 

 

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 ほかにも、重成一人が平山智加にアドバイスらしき言葉をかけていたり、魚谷香織が報道陣の取材を受けていたり、準優には進めない選手たちしか見当たらないという時間帯がかなり長かった。明日のメインはもちろん準優。しかし9個レースもある一般戦に進まねばならない選手も、そこで好結果を出さんと奮闘する! 明日も皆様、朝から舟券を満喫しましょう!

 

 

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 てなことはともかく、篠崎仁志だ。11Rのエンジン吊り後、こちらに視線を送ってきて、「やっと最後に(準優に)乗れました」と安堵の言葉をゆっくりと吐いた。そう、それはまさに安堵。ちょっと疲れた様子にも見えたかな。悩み、焦り、しかし気合を込めて、戦ってきた予選4日間。一時はかなりヤバい状況だったから、ホッと一息というのがもっとも素直な感情だろう。かえって、肩の力がいい具合に抜けたんじゃないかな、と思った。もちろん、明日は優出に向けて気合をさらに入れ直すわけだが、順調にここに辿り着いたのではない分、空回りしないですむのではないだろうか。

 

 

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 一方、ちょっと考えてしまったのは、予選ラストの大敗が影響を与えることはないのか、ということ。毒島誠だ。3日目を終えて予選トップ。ラスト走の6号艇はまさに試金石だったが、5着に終わってしまい、準優1号艇を手放さねばならなくなってしまった。準優の枠番に関しては後で知ることになるわけだが、ここまで順調に予選を戦ってきたものが、最後に納得のいかない敗戦を喫してしまったことに、毒島はかなり憮然としているようだった。好青年・毒島が見せる怒りを押し殺したかのような表情は、それはそれで迫力があり、この人の最近の強さを象徴しているようにも思えたりする。でも、リズム的にどうなんでしょう、こういうパターンは。もちろん、明日その結果が出るわけだが、毒島が今日のちょっとしたつまずきをあっさり振り払えているかどうかが、明日のポイントにもなってくるだろう。

 

 

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 ところで、今節はイン受難の難水面シリーズとなっているのだが、11Rを戦い終えた鎌田義から興味深い話を聞いた。スタート勘がまるで狂っていたというのだ。そんな話をしていたところに、勝利者インタビューを終えた茅原悠紀があらわれた。「茅原、スタートあんなに遅いと思ったか?」、カマギーにそう問いかけられた茅原は「いや、ビックリしました! スタート展示と同じ見え方だったので、“頑張れ~”ってそのまま行ったんですけど、まさかコンマ17とは……」。スタート展示で茅原はコンマ11のスタートだった。カマギーはコンマ12。それが、本番は茅原が17、カマギーは19。カマギーは早いと思って、一瞬だけ放ったそうだ。それほどまでに、この難水面は選手のコンピュータに狂いを生じさせているわけである。

 今節は前半が潮が高く、後半は潮が低くて水面が安定。これがうねりなど、水面自体を難しくしているが、同時にスタートも難しくしているのだ。イン受難につながる話だぞ。準優はもちろん終盤レース。明日の準優もスタートがカギになる!? いったい誰が好スタートを決めやすいのかといえば、やっぱり地元勢のような気がするのだが……果たして。(PHOTO/中尾茂幸 TEXT/黒須田)