BOAT RACE ビッグレース現場レポート

BOAT RACE ビッグレースの現場から、精鋭ライター達が最新のレポートをお届けします。

THEピット――十八者十八様

 12時25分。静寂に包まれていた丸亀のピットに爆音が響き渡る。真っ先にエンジンに火を入れたのはベテランの服部幸男。一番乗りでボートを着水させると、本日の処女水面で竹井奈美と足合わせ。その後竹井と数分ほど会話して感触を確かめると、すぐにペラを外して、陸へと上がる。あとはペラ室のすぐ隣のオープンスペースの専用席?(連日、服部が陣取っている)で目を細めながら、ペラを確認しながら叩いていた。

 準優組、ベテランにしては早い始動。淡々としておりムダな動きは一切ない。上積みを目指すべく服部は調整を続ける。

 

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 12時30分。準優組で服部に続いて水面に降りたのは松田大志郎。それに井口佳典も続いた。松田は水面でエンジンのチェックを終えると、30分後にはもう艇を陸に上げていた。普段の表情をよく知らないので何ともいえない部分はあるが、やや固い面持ちに感じられたとお伝えしておこう。

 12時35分。選手棟から、片手にヘルメットを持った松井繁が颯爽と歩いてくる。挨拶をすると、

「おぃ~っす!」

 とすれ違いざまに片手をあげて返事をくれた。勝手知ったるSG準優勝戦。特別な気負いがあるわけはない。サッとリフトに乗り込むと、そのまま水面へと消えていった。

 

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 12時40分。小野生奈、遠藤エミ、丸岡正典、山口剛ら、準優組が続々とリフトに乗って水面へと降りていく。

 SG史上(おそらく)初となる、女子選手の複数予選突破を果たした小野と遠藤。ちなみに小野は落ち着いた表情で、原田幸哉らと談笑している姿もみられた。一方の遠藤は、緊張感がこちらへ伝わってくるような雰囲気。笑顔もどことなくぎこちない。

 とはいえ、リラックスしているから成功するわけではないし、緊張がプラスにつながることもあるのがレース。二人の女子レーサーが、どのような競走を見せてくれるのか。今から7時間後が待ち遠しい。

 

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 12時50分。エンジンを装着したまま、誰かと雑談していたのが茅原悠紀。誰と話をしているのかと思いきや、当スタッフの中尾カメラマンだった。

 茅原はこれまで丸亀での優勝なし。しかし苦手意識があるわけではない。

「優勝してドル箱水面にしますよ!」

 と力強く言い切ると、ボートをリフトへと動かしていった。

 茅原に限らずだが、オンとオフの切り替えがしっかりできるのが一流選手。艇を水面に降ろしてからは、締まった表情で、試運転、ペラ調整と、スピーディーにこなしていた。昨日は1着2本、コンマ00のタッチスタートで勝負駆けを成功させた茅原。丸亀水面に札束の雨を降らせることができるのか。

 

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 13時。準優出した18艇のうち、すでに16艇にはエンジンが装着されている。装着されていないのは、原田幸哉と濱野谷憲吾。そして広い整備室を独占してエンジンをバラしていたのが、濱野谷だ。真剣な表情で、ピストンを見つめていた。本番では何か部品交換が入るかもしれない。

 

 13時10分。淡々、緊張、日常、リラックス、真剣……、様々な印象を与える準優出場選手たち。重成一人から感じたのは「出陣」だった。口を真一文字に結び、まっすぐと前を見据えながら、ボートをリフトへ向かって押す姿は、戦に向かう男のたたずまいだ。

 9レース出場選手の中で、SG優勝経験がないのは重成だけ。しかし丸亀はデビューから走り続けてきた地元の城。何か一発ありそうな雰囲気が、そこはかとなく漂っている。

 

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 13時40分。すでに水面に出ていた山崎智也、前本泰和らが、陸へと引き上げてくる。そんななか、準優1号艇の三者は、いずれもまだ水面へ出ていない。

「おはよっす!」

 元気な挨拶を交わしてJLCのインタビュー収録に登場したのは篠崎仁志。

 予選トップ通過の篠崎は本日の主役である。どこにいても、カメラマンの人垣ができるし、一人でいるとすぐに記者が寄ってくる。まだ20代、SGタイトルを持っていないのに、不思議な貫禄が感じられるのは気のせいか? 初日から篠崎を見ているJLC解説者の佐藤正子さんによると、「昨日からキュッとスイッチが入った感じ」なのだとか。最終日まで、このまま主役を演じ続けることができるのか否か。

 篠崎のインタビューが終わると、あまり動きを見せていなかった坪井もインタビューに登場した。

 

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 もう一人の1号艇、峰竜太は飄々としていた。過去には「緊張している」と感じたこともあるし「リラックスしている」と感じたこともあるが、さすがにこれだけSGの予選突破を経験すれば、そう特別な感情は抱かないのかもしれない。また、予選2位通過という気楽さもありそうだ。

 

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 13時40分。装着検査からの一連の流れが終わり、ピットにふたたび静寂が訪れる。

 ただし、ヒマな時間にも意外と雑用があるのがボートレース。丸亀では、5日目になると、エンジンを運搬する台の底にあるトレイの清掃をするという風習がある。

 水面から上がってきた選手班長の重成一人が、率先垂範といわんばかりに、タオルでトレイを拭いて清掃を開始。若手の篠崎や竹井も当然のように手伝う。人知れず行なわれていた清掃だが、それに気づいた遠藤や茅原も参戦。さらに地元の森高一真も、大量のタオルを持ってやってきたのだが、本人は拭き掃除をせず、タオルを配るだけの現場監督役(?)に徹しているのが面白かった。

 

 14時30分。これまで一度も姿を見せていなかった辻栄蔵が、1レースを終えた山下和彦の艇の引き上げに登場した。

 18者18様の準優戦出場選手たち。数時間後には、ベスト6を目指すバトルの幕が開く!

 

(TEXT/姫園 PHOTO/中尾)